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小規模・男性でピーク609万円――国税庁 民間給与実態統計調査(令和3年細部集計)

国税庁の民間給与実態(令和3年分)によると、従業員30~99人の小規模事業所に勤務する男性の年間平均給与のピークは55~59歳608.5万円だった。
小規模と比べて、中堅規模の500~999人は1.22倍の740.3万円、大規模の5000人では1.47倍の895.1万円などとなっている。
賃金カーブについても規模間格差は顕著にみられ、20~24歳を100とした場合のピーク時の指数は、小規模が216、中規模が240、大規模が365だった。
正社員における年収800万円超の割合は、男性の15.4%に対して女性は3.2%に留まっている。

一貫処遇で65歳定年制へ――住友化学

住友化学㈱(東京都中央区、岩田圭一代表取締役社長 社長執行役員)は、来年4月から段階的に65歳定年制へ移行するため、労使で最終的な協議中であることを明らかにした。
処遇面については、60歳到達後も既存の職務・役割に基づく人事制度を一貫して適用する意向だ。
組合員層の場合、現在は定年後に再雇用されると年収が定年前の40~50%程度に低減しているが、労組には60歳以降90~95%程度になる移行後のモデルを示し、協議を進めている。

育休中の社保料免除 14日以上取得で要件統一を――全国社労士会

全国社会保険労務士会連合会(大野実会長)は、会員社労士から働き方改革を阻害している法制度や法規制に対する意見を吸い上げ、改善点を6分野17項目に集約した政策提言を発表した。
育児・介護と仕事の両立支援分野では、育児休業中の社会保険料の免除要件を「14日以上取得した場合」に統一すべきとしたほか、介護休業にも免除規定を適用するよう求めている。
多様な働き方を推進する側面からは、割増賃金算定時に副業・兼業の労働時間を通算する仕組みの撤廃を提言した。

現金給与総額 2.0%増加し32.6万円――厚労省 毎月勤労統計(4年平均確報)

厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、令和4年平均(確報)の月間現金給与総額は32.6万円だった。
前年結果から2.0%増加し、2年連続で前年を上回っている。
一方で物価変動を加味した実質賃金指数は1.0%落ち込んだ。
一般労働者の所定内給与は1.3%増の31.9万円、所定外給与は5.1%増の2.6万円などとなっている。
パートタイム労働者の時間給は1242円で、19円増加した。

ベア要求 中小6割超が9千円以上――JAM

中小規模の機械・金属産業の労組が8割を占めるJAМ(安河内賢弘会長)は、2月27日現在で賃金改善分の要求額が8729円になったと明らかにした。
300人未満の中小に限っても8759円と同水準にあり、うち6割超が要求方針の9000円以上を要求している。
賃金構造維持分を含む平均賃上げ額は、1万2762円だった。
JAMでは消費増税後の2015年にもベア9000円の方針を掲げているが、いずれの数字も当時の同時期を大幅に上回り、過去最高の水準となっている。

福利厚生策 3手当含めて合計20種以上――X Mile

人材ビジネス系ベンチャーの㈱X Mile(=クロスマイル、野呂寛之代表取締役)は、将来的な上場を見据えて人事制度の見直しを進めており、福利厚生施策としては20種類以上の制度を設けている。
手当面では、子供1人当たり月額1万円を支給するほか、オフィスから3キロメートル以内に住む人材に2万円の住宅手当を支払う。
来年度には賞与制度を採り入れる予定で、年俸の一部を切り出して原資に充てる。
そのために来年1年間でベースアップを図り、年収額の大幅な引上げをめざしている。
業績評価に関しては、昨年から達成度70%を標準評価とする仕組みを採用し、一人ひとりに高い目標の設定を求め、挑戦を促す。

リーダー登用で月給3割増も――古河電工

古河電気工業㈱(東京都千代田区、小林敬一代表取締役社長)は一昨年12月に組合員層の人事制度を改定し、交替勤務の製造現場などでチームを率いるリーダー向けの区分「監督職」を新たに設けた。
基本給を一本化するのに併せて水準を大きく引き上げるとともに、役職手当の支給額を最大3万円に高めた。
低位の資格等級から初任クラスのリーダーに任用された場合、月例給は2~3割アップする。
次代の候補者も不足するなか、処遇向上により若年層のチャレンジを促す。

就業継続支援策 仕事免除より早期復帰を――物流連

物流事業者81社と14の業界団体で組織する日本物流団体連合会(物流連、池田潤一郎会長)は、女性活躍推進に関する調査検討報告書をまとめた。
30歳前後で離職率が高まる傾向を踏まえ、就業継続の支援策としては育児休業や時短勤務などの仕事を免除する制度ではなく、働く時間・場所を柔軟にして早期復職、早期フルタイム化を図るべきと指摘した。
併せて海外研修に3年前倒しで参加させるなどの取組みを紹介し、育児などのライフイベント前に多くの経験を積む機会を付与すれば、成長意欲の高い人材を増やすことにもつながるとしている。

専門家無料派遣でサポート――神奈川産保センター

神奈川産業保健総合支援センター(渡辺哲所長)は、令和5年度から、運転者の健康起因事故防止をめざす企業に、保健師や管理栄養士などの専門家を無料で派遣するサービスを開始する。
労働者の定期健康診断での異常所見を放置することが、脳梗塞や心筋梗塞の発症につながり、重大な交通事故や労働災害の発生要因になるとみて、企業における健康教育を支援する。
労働者に再検査を促す方法や、コンビニ食が多くなりがちなドライバーの食事の選び方、健診の結果を取り扱う際の規定作成支援などを行う。
神奈川県警と連携し、広報活動も強めていく。

大卒・事務技術 非管理職35歳で32.6万円――関経連ほか 2022年度関西地域の標準者賃金

関経連など関西地域の9つの経済団体が共同で実施した「標準勤続者賃金」調査によると、大卒・事務技術のモデル賃金は、非管理職の22歳が21.5万円、35歳が32.6万円、45歳が38.4万円、55歳が41.2万円だった。
管理職では35歳40.4万円、45歳48.7万円、55歳56.1万円などとなっている。
前年結果からは多くの年齢ポイントで伸びており、増加率は1%前後のケースが多い。
ピークを迎えるのは非管理職・管理職ともに55歳だった。

トラック運転者 残業代支払いめぐり弁論――最高裁

トラック運転者の残業代支払いの適法性が争点となった裁判で、最高裁判所第二小法廷(草野耕一裁判長)は弁論を開いた。
会社は運送先などに応じて賃金総額を決め、月ごとの時間外労働に応じた「時間外手当」を支給していたが、時間外手当の額が増えると、同額分の「調整手当」が減る制度を採用。
結果的に、時間外労働が増えても賃金総額が変わらない仕組みとしていた。
原審の福岡高等裁判所は、時間外手当を適法な残業代と認定する一方、調整手当は残業代と認めなかった。
判決は3月10日に言い渡される。

中退共・財政検証 付加退職金に上限設定へ――労働政策審議会部会取りまとめ

労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会(山本眞弓部会長)は、一般の中小企業退職金共済制度(一般中退)の財政検証を行い、今後の退職金水準のあり方に関する意見を取りまとめた。
財政の安定化を図り、長期的に安定した制度として維持していくため、利益が生じた際に支給している付加退職金に上限を設ける。
各年度において同退職金に充てる額の上限として、累積剰余金の1%を設定する。
運用結果にかかわらず支給している基本退職金の予定運用利回りは、現行の「1%」を維持する。

情報サービス産業 大卒35歳モデル32.6万円に――情報労連 ITエンジニア実態調査

情報労連の「ITエンジニアの労働実態調査」によると、大卒のモデル賃金は22歳21.6万円、35歳32.6万円、45歳40.5万円などとなり、ピークの55歳は43.9万円だった。
35歳時点で初任時の1.51倍、45歳時で1.87倍、55歳時で2.03倍となる賃金カーブを描く。
回答企業における最低額および最高額から集計した職種別賃金レンジは、システムエンジニアが26.4万~43.3万円、プロジェクトリーダー等が36.0万~50.6万円となっている。
学歴別の初任給は、高卒が17.8万円、短大・高専・専門卒が19.6万円、大卒が21.3万円だった。

8要素で行動面を絶対評価――TIS

IT大手のTIS㈱(東京都新宿区、岡本安史代表取締役社長)は、4月から全社共通のコンピテンシーを採り入れた新人事制度を導入する。
現行の相対評価を改めて自律的な行動を促すのが狙いで、全8要素を3段階で絶対評価し、昇給や昇格の基準に用いる。
併せて等級体系も整理し、役割の違いが不明確だった等級は統合した。
部署を率いるマネージャー層には職務記述書を設け、外部からの人材獲得も見据える。
改定によって基本給を平均6%、最大で17%引き上げ、管理職層に導入してきた5段階洗替え方式は廃止する。

すべての階層で能力開発を――厚労省・労政基本部会報告書(素案)

厚生労働省は、加速する経済・社会の変化のなかにおける労働政策の課題について、労働政策審議会労働政策基本部会の報告書(素案)を作成した。
企業の成長には労働者による新たな技術の習得が不可欠とみて、現場労働者から経営者までの各層でリスキリングなど能力開発に主体的に取り組むことが企業に求められるとした。
政策面では、スキルの見える化ツールの開発や専門家の助言・相談といった支援を講じるべきとしている。

育成担当へ3つの役割手当――ユニ・チャーム

ユニ・チャーム㈱(東京都港区、高原豪久代表取締役 社長執行役員)は、社員の成長を支援する人材向けに3種類の役割手当を創設した。
課長級のマネージャーに対して毎月2万円を支給するほか、入社3年目までの新人の指導役に1万5000円、就職を希望する学生を入社まで導く役割には1万円を支給する。
グループの国内勤務者の3分の1が、いずれかの手当の対象となった。
同社ではこれまで物価高に対応する手当などは支給しておらず、一律のベースアップではなく特定の役割への重点配分を決めている。

5等級30職種別に職務定義書――KDDI

㈱KDDI(東京都千代田区、髙橋誠代表取締役社長)では、5階層のグレードと30種類の職種=専門領域から社員を格付ける独自の“ジョブ型人事制度”を運用している。
ジョブディスクリプションは、グレードおよび専門領域別に作成し、職務遂行上必要な専門スキルのほか、「課題形成」や「チームビルディング」などの「業務遂行をするうえで求められる普遍的な人間力」などを掲載している。
昇給や昇格に反映する能力評価の一部には、行動特性を多面評価する仕組みを採り入れた。
評価者は普段から仕事を一緒にする同僚5人で、「やり切る力」や「傾聴力」の有無などについて5段階でチェックする。

OKR活用し“挑戦”促す――名古屋銀行

㈱名古屋銀行(藤原一朗取締役頭取)は4月、評価制度のなかにチャレンジングな目標の設定を求める「OKR」の手法を採り入れる。
困難な課題に挑戦するなかで行員の積極性を引き出すのが狙いで、掲げる目標は必ずしも収益に直結しなくても良いとしている。
1~2月に掛けては集中的に考課者研修を開き、良い目標例などを共有した。
一方では、経営環境が激変するなかにおいても顧客の課題解決を進めて持続的な成長へと導けるようにすべく、営業力の強化にも努めている。
昨秋には賃金体系を見直して営業職の水準アップを図るとともに、難関資格の取得をめざすプログラムなどの各種研修制度を充実させた。

事務課長所定内 52~56歳未満で60.7万円――人事院 民間給与の実態(令和4年確報)

事務系・技術系ごとに職階別賃金を調べている人事院の「職種別民間給与の実態調査」によると、課長級の所定内給与のピークは、事務課長が52~56歳未満で60.7万円、技術課長が同61.2万円だった。
大卒初任者を含む係員20~24歳未満の水準と比べると、それぞれ2.66倍、2.78倍となっている。
部長級は、事務系が72.6万円、技術系が75.8万円だった。
定年後再雇用者は、係員が26.5万円、課長が41.9万円、部長が55.4万円などとなり、定年前の同職階の水準と比べると、係員と課長で30%、部長で25%低かった。

専任教員の無期転換認める――大阪高裁

羽衣国際大学の専任教員を務めていた労働者が、無期転換申込後の雇止めを不服として訴えた裁判で、大阪高等裁判所(冨田一彦裁判長)は雇止めを有効とした一審判決を変更し、労働者の無期転換を認めた。
労働者は3年の有期労働契約を2回締結し、無期転換申込権を行使したが、同大学は大学教員任期法が定める先進的な教育研究をする教育研究職に該当し、10年特例が適用されるとして、期間満了後に雇止めとしていた。
同高裁は労働者の担当授業の大半は介護福祉士の国家試験対策だったと指摘。
研究の側面は乏しく、特例の対象にならないとした。

在宅勤務の影響 2割弱で欠勤・休職者増加――情報労連・ITエンジニア実態調査

情報産業労働組合連合会(安藤京一中央執行委員長)が実施した「ITエンジニアの労働実態調査」によると、在宅勤務の影響でメンタル面が原因の欠勤・休職者が「増加している」と回答した企業の割合は18・5%だった。
社内のコミュニケーションが悪化したとする企業も36・6%に上っている。
一方で実施割合や頻度は高く、在宅勤務を行うエンジニアが「6~8割」とする企業は約3割を占め、「ほぼすべて」も17・9%と少なくない。
最も該当者が多い実施頻度を尋ねた設問では、「週3日程度」が32・1%で最も多く、全体の約7割が「週3日程度」以上としている。

ベア分9000円要求へ――JAM

機械・金属の産業別労働組合JAM(安河内賢弘会長)は、賃金構造維持分4500円を確保したうえで、9000円を基準に「人への投資」を要求するとした2023春闘方針を決定した。
引き続き個別賃金要求に取り組むとし、高卒直入者の所定内賃金として30歳27万3000円、35歳31万3000円を全加盟単組が到達すべき水準に設定している。
組合員約25万人の賃金実態を集計する独自の全数調査を踏まえて決めたもので、それぞれ前年から3000円引き上げている。

無期転換ルール・省令案 労働条件の明示強化――厚労省

厚生労働省は、有期契約労働者の無期転換ルールに関連し、申込機会の確保に向けた労働基準法施行規則などの改正省令案を明らかにした。
無期転換申込権が発生する労働契約更新時に行う労働条件明示事項として、申込機会があることと、転換後の労働条件を追加する。
さらに、雇止めを巡る紛争を防止するため、契約締結・更新時の明示事項に、通算契約期間と更新上限回数を加えるとした。
施行予定日は令和6年4月1日。

役割レベルと評価でメリハリ――凸版印刷

凸版印刷㈱(東京都文京区、麿秀晴代表取締役社長)は、監督職・専門職を格付ける一般社員層の最上位等級に対し、洗替え方式の「業績期待給」を支給している。
個々人が担う役割や職務のレベルを期初にあらかじめ3段階で格付けしたうえ、5段階評価とのマトリクスで支給額に差を付けているもの。
裁量労働制の適用者には労働市場の水準を踏まえた専用の給与テーブルを用意して、さらにメリハリを利かせている。
一方でDX分野の専門人材に限っては、6段階でレベル付けしており、上位レベルでは評価次第で管理職と同水準の報酬も可能としている。

流通で14,500円以上基準に――UAゼンセン

多様な産業・業種の労働組合が加盟するUAゼンセン(松浦昭彦会長)は、2023労働条件闘争方針を決定する中央委員会の開催に先駆けて会見を開き、業種別3部門の要求方針案を明らかにした。スーパーマーケットなどの組合が中心の流通部門が総額1万4500円以上の基準を掲げたほか、製造産業部門、総合サービス部門は5%相当の1万2000円以上の要求を行うとしている。短時間組合員については、流通、総合サービスの2部門とも60円以上の時給引上げをめざす。

労災認定 外部研修で退職強要――大阪労働局・労災保険審査官

大阪労働局の労働者災害補償保険審査官が、学校法人追手門学院の職員2人がうつ病を発症したのは、外部コンサル会社による研修などを用いた退職強要が原因であるとして、労災認定を肯定していたことが分かった。同研修の受講者18人中3人がうつ病を発症しており、1人は労基署から労災認定を受けた。他の2人は発症時期が研修前であるとして、休業補償給付を不支給処分とされていた。審査官は「機能障害など症状が顕在化した時期(研修後)に発症した」と見直し、労基署の処分を取り消した。

裁量労働制見直し 専門型も本人同意必要に――労政審労働条件分科会・報告

労働政策審議会労働条件分科会は、裁量労働制見直しの方向性に関する報告書をまとめた。労働者に専門業務型を適用する際、企画業務型と同様に対象者本人の同意を必須とするよう見直すのが適当とした。適用後に同意を撤回するための手続きの整備も企業に義務付ける。健康・福祉確保措置のメニューに、勤務間インターバルの確保や深夜業の回数制限などを追加することや、専門型の対象業務として、銀行・証券会社での合併・買収(M&A)の考案・助言業務を加えることも提言している。厚労省は報告書を受け、省令改正などの手続きを進めていく。

物価上昇への対応 4割が「主にベアで」――生産性本部

日本生産性本部のイノベーション会議(座長・大田弘子政策研究大学院大学長)が賛助会員に実施した調査によると、消費者物価の上昇を正社員の給料に反映するとした企業は、約6割を占めた。4割弱が「主に月例賃金に反映(ベースアップ)」するとし、2割弱が「主に一時的な現金支給(賞与や手当等)」としている。従業員300人以上に限ればベアでの対応を示唆した割合は47・9%に高まるが、300人未満では26・2%に留まり、55・7%が「対応する予定がない」と答えた。一方で重要度の高い投資分野を尋ねた設問では、9割超が「従業員への投資」を挙げている。

労災認定 持帰り残業を労働と認めず――行田労基署

埼玉・行田労働基準監督署(武田昌代署長)が、大手半導体関連メーカーで研究開発プロジェクトに従事していた労働者がうつ病を発症したのは、業務上によるものではないとして、休業補償給付を不支給処分としていたことが分かった。審査・再審査請求も棄却済み。再審査では「プロジェクトを遅延させないために必要に応じて持帰り残業をすることを含めた、包括的な業務指示があった」とした。しかし各業務の期限指定まではなかったとして、持帰り残業を労働時間と認めなかった。

被扶養者 非該当通知は処分に当たる――最高裁

健康保険組合の被保険者が、配偶者が被扶養者に該当しないとする通知の取消しを求めた裁判で、最高裁判所第三小法廷(長嶺安政裁判長)は、非該当通知は被保険者資格に関する処分に当たると判断した。社会保険審査官・会による審査・再審査の対象になるとしている。健康保険法第189条1項は、被保険者資格に関する処分に不服がある場合、審査・再審査請求ができると定めている。被扶養者に該当しない旨の通知が処分に当たるかどうかは、これまで明らかでなかった。

定昇分含め6%程度要求へ――UAゼンセン闘争方針案

繊維・流通・サービスなどの産業で働く185万人が加盟するUAゼンセン(松浦昭彦会長)は、賃金体系維持分に加えて4%程度、合計で6%程度の賃金引上げを求めるとする労働条件闘争方針案をまとめた。連合が掲げた賃上げ分3%程度との方針を踏まえ、格差是正に向けてさらに1%程度の上積みをめざす。全体の6割を占める短時間組合員にも同様の基準を示し、総額では時間当たり50円増を目安として上積みを求めるとした。今年10月から社会保険適用拡大にかかる企業規模要件が100人超に引き下げられていることを受け、キャリアアップ助成金の活用などを促し、適用拡大に取り組むともしている。

社労士版「人権方針」を策定――全国社労士会

全国社会保険労務士会連合会(大野実会長)は、社労士の事業活動全般を対象とし、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた「人権方針」を策定した。重点的な取組み事項として、労働関連法令の遵守など10項目を掲げている。まずは会員社労士に国際的な基準や考え方を浸透させ、中小企業にも助言できる専門性を養う。すでにeラーニングを用いた研修に取り組んでおり、来年1~2月には集合研修型のケーススタディーも行う。社労士が人権を侵害した場合を想定し、通報できる窓口も設置している。

保険販売員の懲戒解雇無効――札幌地裁

日本郵便㈱でかんぽ生命の保険販売員として働いていた労働者が、不適切販売問題に関連して懲戒解雇処分になったのを不服とした裁判で、札幌地方裁判所(中野琢郎裁判長)は処分を無効と判断した。労働者は1人の顧客の17件・月額89万円の既契約を解約させ、新たに19件・月額120万円の契約を締結させる、いわゆる「乗換契約」で処分を受けた。同地裁は、労働者が顧客に不利益を十分説明していたと指摘。契約は意向に沿ったもので、処分事由は存在しないとした。同社はかんぽ生命の不適切販売をめぐって、これまで計28人を懲戒解雇にしている。

時間外違反率15%に低下――東京労働局・3年監督結果

東京労働局(辻田博局長)管内の18労働基準監督署が令和3年1年間に実施した定期監督結果によると、監督した1万130事業場のうち、違法な時間外労働が認められた割合は15%(1521事業場)で、20%を超える例年の傾向を下回った。同労働局は、新型コロナウイルスで仕事が減少した影響があるとみている。令和2~3年は監督実施数が1万件程度に留まっていたが、今年はウィズコロナ体制としてコロナ禍前の水準まで引き上げ、来年度以降も取締りを強化していくとしている。

労災支給取消し訴訟 特定事業主の原告適格認める――東京高裁

一般財団法人あんしん財団が職員に対する労災支給処分の取消しを求めた裁判で、東京高等裁判所(鹿子木康裁判長)は同法人の原告適格を認め、審理を東京地方裁判所に差し戻した。メリット制の適用がある特定事業主は、労災支給処分によって当然にメリット収支率が上がり、次々年度以降の保険料が増額される可能性があると指摘。直接具体的な不利益を被るおそれがあり、処分取消しを求める適格性があると判断した。一方、労働保険料の認定処分については、保険料額認定に至るまで訴訟で争えないのは合理的ではないとして、原告適格を認めなかった。

解雇無効時の金銭救済制度 導入是非で労使対立――労働政策審議会分科会

解雇無効時の金銭救済制度の導入の是非を巡り、労働政策審議会労働条件分科会で労使の主張が対立している。使用者側が「紛争解決に向けて労働者の選択肢を増やす制度」、「解決金額の予見可能性が高まる」として導入を訴えているのに対し、労働者側は、企業による訴訟外での示談強要が頻発する可能性を指摘しつつ、「労働審判など現行制度で十分。新たな制度で救済される労働者は全くいない」と反発。見解に隔たりが大きく、公益側からは、救済が想定される労働者の実態把握を厚生労働省に求める声が上がった。

定昇込み5%で正式決定――連合

連合は12月1日、千葉県内で中央委員会を開き、2023春闘方針を正式に決定した。賃金要求指標に関しては10月に示していた基本構想どおりとなり、ベア3%程度、定期昇給分込みで5%程度を求める。議案提起に先立って挨拶した芳野友子会長は、リスキリングによって賃金の高い企業への労働移動を促す政策に対し、「企業として賃上げの必要がなくなる可能性がある」と懸念を示した。持続的な成長と分配の好循環を達成するためには、「短期・中長期にわたる賃上げが不可欠」と改めて訴えている。

ウーバーイーツ 配達員の労働者性認める――都労委

東京都労働委員会(金井康雄会長)は、UberEatsJapan合同会社とサービスの利用契約を結ぶ配達パートナーの労働者性を認め、配達パートナー30人で構成するウーバーイーツユニオンからの団体交渉に応じなかったとして、同社の不当労働行為を認定した。一定の禁止行為を規定したり、違反した場合にはアカウントを停止するなど配達員を強く統制し、事業に不可欠な労働力として組織に組み入れていたと判断している。同社が登録手続きなどの業務を委託していたUberJapan㈱についても、同様に団交に応じるよう命令した。

定年後の再雇用拒否は有効――東京高裁

NHKのコールセンターで働いていた労働者が、定年後に再雇用されなかったことなどを不服とした裁判で、東京高等裁判所(岩井伸晃裁判長)は再雇用拒否を有効と認めた一審判決を維持した。労働者には就業規則所定の解雇事由があり、人事評価も極めて低かったと指摘。改善指導にも従う姿勢がなく、再雇用しない客観的・合理的な理由があったとした。同センターでは、ハラスメント電話があった際、上司に転送するルールとなっていたが、労働者はルールを守らず、視聴者との間で口論となるトラブルを複数回起こしていた。

100人以上の改定額 840円増の5530円――賃金引上げ等の実態調査

令和4年の賃金改定額はコロナ禍前と同水準の5534円に回復――。厚生労働省の「賃金引上げ等実態調査」によると、規模100人以上の1人平均賃金改定額は前年を840円上回り、率では0.3ポイント増の1.9%だった。規模別では5000人以上の6478円(1276円増)に対し、100~299人は4738円(626円増)に留まっている。定昇制度を持つ企業におけるベア実施率は、一般職29.9%(12.2ポイント増)、管理職24.6%(9.5ポイント増)だった。

事業場外みなし 製薬会社MRに適用認めず――東京高裁

外資系製薬会社で外勤の医療情報担当者(MR)として働いていた労働者が、残業代などの支払いを求めた裁判で、東京高等裁判所(村上正敏裁判長)は事業場外みなし労働時間制の適用を認めない判決を下した。勤怠管理システムの導入後は直行直帰が基本のMRについても、始業・終業時刻の把握が可能になったと指摘。労働時間を算定し難いときに当たるとはいえないとした。一審の東京地方裁判所は、具体的な訪問先やスケジュールは労働者の裁量に委ねられており、上司の指示・決定もなかったとして、事業場外みなし制の適用を認めていた。

同一賃金 労基署が事実関係確認へ――厚労省

厚生労働省は、非正規雇用労働者の待遇改善に向け、パート・有期雇用労働法に基づく報告徴収を行う都道府県労働局の雇用環境・均等部門と、労働基準監督署の連携を強化する。新たに、労基署が定期監督などを利用して非正規雇用労働者の基本給や諸手当などの処遇について事実確認を実施し、労働局における報告徴収の対象企業の選定に活かしていく。同法に基づく是正指導の実効性の強化を狙う。同一労働同一賃金の遵守に向けた取組みを徹底するため、労働基準監督官を全国計で52人増員する方針だ。

男性育休2人以上で奨励金――東京都・5年度予算要求

東京都は、来年度の予算要求に「適正な労働環境を確保する事業」として前年比26億円増となる116億円を盛り込んだ。育児休業の取得を進める企業への奨励金制度について、従来の3コースから4コースに拡充する。複数人の男性社員に育休を取得させた企業を対象とする新コースを加え、男性育休をより促進する狙い。新事業としてはほかにも、働く女性の健康問題についての啓発や、若手人材の定着を目的とし、社員満足度の向上に取り組む企業に対する経費の補助を予定している。

セクハラ・パワハラ 行為者と会社に賠償命じる――東京地裁

㈱データサービス(東京都新宿区、坂本哲也代表取締役社長)で働く労働者が2人の上司によるセクハラ・パワハラは違法と訴えた裁判で、東京地方裁判所(西澤健太郎裁判官)は同社と上司らに対し、慰謝料など計103万円の支払いを命じた。自身の誤りが原因のミスにもかかわらず、労働者の責任として不必要に叱責して謝罪を求め、ミスにより生じた費用を負担させた行為や、飲み会で労働者に3度抱きついた行為などを不法行為と指摘(表)。セクハラに関する相談に対し、同社が対応しなかったのも債務不履行に当たるとした。

産業雇用安定助成金 能力向上支援など3コース――厚労省

厚生労働省は、在籍型出向により雇用維持を促進する産業雇用安定助成金(産雇金)制度を見直し、2つの新コースを加えて3コース体制とする方針だ。新たなスキル習得のために在籍型出向を行い、復帰後に賃金を引き上げた事業主を対象とする「スキルアップ支援コース」(仮称)と、業態転換などのために必要な人材を雇い入れた事業主向けの「事業再構築支援コース」(仮称)を創設する。スキルアップ支援コースの新設は今年度第2次補正予算案に盛り込まれており、年度内の開始を見込む。今後、雇用調整助成金の受給企業を対象に個別に周知し、産雇金の活用を促していく。

総合職モデル 大卒35歳で32.4万円――22年度版 愛知のモデル賃金

愛知県経営者協会が実施した「愛知のモデル賃金調査」によると、総合職・大卒のモデル賃金は22歳20.9万円、35歳32.4万円、50歳46.1万円などとなり、ピークは60歳47.5万円だった。前年結果に比べて全体的に微減傾向を示している。管理職の実在者賃金は、部長級が56.2万円、課長級が45.0万円で、それぞれ1.1%増、0.2%増とわずかに伸びた。60歳・会社都合のモデル退職金は平均支給額が1328万円、支給月数が28カ月となっている。

運送業者 安全委員会開かず送検――上田労基署

長野・上田労働基準監督署(森孝行署長)は、安全管理者に作業場の巡視などを行わせず、安全委員会も月1回以上開催していなかったとして、一般貨物自動車運送業のアート梱包運輸㈱(長野県東御市、従業員310人)を労働安全衛生法第11条(安全管理者)および第17条(安全委員会)違反などの疑いで、長野地検上田支部に書類送検した。令和4年7月、同社の倉庫内で労働者がコンテナを積み重ねて運搬していた際、コンテナが倒壊して下敷きとなり、腰椎椎体骨折の重傷を負う労働災害が発生している。同労基署によると、作業方法や設備に違反はみられなかったという。

前期高齢者納付金 「総報酬割」導入へ――厚労省

厚生労働省は医療保険者が拠出する前期高齢者納付金について、保険者ごとの報酬水準に応じて負担額を決める「総報酬割」を導入する方向での検討に入った。社会保障審議会の部会で見直し案を提示した。収入の高い大企業の従業員が多く加入する健康保険組合(健保組合)の負担は増加する一方、中小企業が中心の全国健康保険協会(協会けんぽ)の負担は減少するとみられる。厚労省は年内に医療保険制度改革の具体策をまとめ、改正法案を来年の通常国会に提出する予定だ。

基本給の決定要素 「仕事の内容」活用が8割――厚労省 就労条件総合調査

厚生労働省の「令和4年就労条件総合調査」によると、基本給の決定要素として最も用いられているのは「仕事の内容」で、管理職では79.3%、管理職以外では76.4%の企業が活用していた。次いで多かった「職務遂行能力」はともに66%台となり、10ポイント以上の差が付いている。賞与制度を持つ企業は87.9%で、このうち令和3年に賞与を支給した割合は92.8%だった。賞与制度がない企業は11.8%で、前回調査した5年前から2ポイント増加している。

課長代理からの降格有効――東京地裁

日産自動車㈱で働く労働者が、課長代理からの降格は違法として、課長代理の地位確認と差額賃金支払いなどを求めた裁判で、東京地方裁判所(小川理津子裁判長)は降格と賃金減額をともに有効と判断した。マネジメントを期待していると何度も指導されていたにもかかわらず、労働者は役割の重要性を理解できなかったと指摘。降格は役割等級制度に沿った運用で、人事権濫用はなかったと評価している。同社は賃金規程などで、役割定義(表)に照らして不相応な場合は降格とし、降格先の等級の賃金を適用すると定めていた。

厚生労働省 人材活性化で賃上げ促進

厚生労働省は、賃上げ支援や人材活性化を通じた賃上げ促進などを柱とする雇用・労働総合政策パッケージを策定した。コロナ禍での雇用維持支援や休業支援を中心とする緊急的・短期的政策から、賃金上昇と多様な働き方の実現を目的とする政策への転換を図る。施策メニューとして、賃金の底上げを図る業務改善助成金の拡充や、労働者のリスキリングを支援する企業が対象となる人材開発支援助成金の助成率引上げなどを挙げている。各施策は今年度補正予算などに盛り込む。

増員が不当労働行為に――大阪府労委

大阪府労働委員会(小林正啓会長)は、労働組合と協議せず、短期間に正規従業員・出向社員の計12人を補充したことは、組合の弱体化を企図したものであるとして、大阪市食肉市場㈱(大阪府大阪市)の不当労働行為を認定した。同社と組合が、経営状況に関して共通認識を持ったうえで人員補充について協議を行うことを定めた確認書の内容を踏まえて判断している。業務量や経営状況からみても「著しく不自然な増員」とした。同社の従業員に占める組合員数の割合は、人員補充後に過半数を割っている。

准看護学校教員の解雇有効――東京高裁

准看護学校で教員を務めていた労働者が、解雇を不服として労働契約上の地位確認などを求めた裁判で、東京高等裁判所(相澤哲裁判長)は解雇を有効とした一審判決を維持した。労働者は新人育成経験を買われ即戦力として採用されたが、入職当初から教育姿勢に関して生徒から苦情が寄せられ、年度末には多数の生徒から解雇を求める嘆願書が出された。上司はクレームが出るたびに改善指導をしたが、労働者は応じる姿勢がなく解雇には合理性があったとしている。労働者は適切な指導を受けていないと主張したが、同高裁は「およそ採用の限りでない」と退けた。

労災認定 事業主の「不服」表明可能に――厚労省

厚生労働省は、自社の労働災害の発生状況に応じて労災保険率が増減する労災保険のメリット制について、事業主が労働保険料の引上げ決定後に「労災認定は違法」として保険料決定に関する不服を申し立てられるよう、行政解釈の変更を行う考えだ。不服が認められ、労災給付の支給要件に該当しないと改めて判断された場合、保険料の増額は行わない。一方で、労働者に対する労災給付の支給決定自体は取り消さない扱いとする。近年、保険料決定処分の取消し訴訟において、保険給付支給の違法性の主張が認められるケースが現れていた。

賃上げ分3%程度要求へ――連合

連合は10月20日、来年の春季労使交渉の賃上げ要求に関し、ベースアップに相当する賃上げ分として3%程度、定期昇給相当分を含めて5%程度とする「基本構想」を確認した。過去7年間にわたり定昇込みで4%程度の方針としてきたが、物価上昇などを踏まえて28年ぶりに5%という数字を掲げる。賃金実態が把握できない中小組合などに対しては、賃上げ分として9000円、総額では1万3500円を目安に求めるとしている。

産業医勧告 不利益取扱い禁止は努力義務――東京高裁

産業医事務所が、労働安全衛生法に基づく勧告権行使を理由に顧客企業から契約を解除されたと訴えた裁判で、東京高等裁判所(石井浩裁判長)は同事務所の請求を棄却した。勧告権行使を理由とする不利益取扱いを禁止した安衛則の規定は「努力義務」と判示。委嘱契約は準委任に当たり、原則双方がいつでも契約解除できるが、安衛法が労働者の健康確保のために産業医に職務権限を与えていることを考慮し、契約解除が法の趣旨を実質的に失わせている場合は権利濫用に該当するとした。本事案では勧告後、産業医側が労働基準監督署の行政指導を示唆するなど、自ら対決姿勢を深めていったと指摘。信頼関係の破壊を認め、契約解除は有効と判断している。

産業保健活動 業務外疾病への対応課題に――厚労省

厚生労働省は、企業を取り巻く環境変化や中小企業での産業保健活動の低調さなどを踏まえ、効果的に活動を推進するための方策について検討を開始した。テレワークの拡大や女性の就業率上昇、高年齢労働者の増加に伴う健康問題への対応など、抱える課題の多様化を背景に、有識者検討会において産業保健のあり方について議論を重ねる。治療と仕事の両立支援など、業務と直接関係のない問題への対応をどのように位置付けるべきかなどが論点になる。産業医や衛生管理者が担うべき役割、選任義務のある事業場の範囲、中小企業への支援方策についても検討を進める。

10団体が最低年収目安策定――建専連

専門工事業者の団体らで構成する建設産業専門団体連合会(=建専連、岩田正吾会長)は、会員10団体が策定した「技能レベルごとの最低年収目安」を公表した。国土交通省が普及を進める建設キャリアアップシステム(CCUS)に則り、東京都内で勤務する場合の水準を示している。たとえば基礎ぐい工事技能者のケースでは、初任給相当で356万円以上、一人前レベルで403万円以上、職長レベルで576万円以上などとしている。人材確保に向けてキャリアパスを明示するとともに、仕事の繁閑で上下しがちな請負価格の適正化を図る材料にするのが狙い。

月253時間残業させ送検――岡山労基署

岡山労働基準監督署(小松原邦正署長)は、36協定の締結・届出なく労働者6人に違法な時間外労働をさせたとして、食料品製造業の㈱山陽フードサービス(岡山県倉敷市)と同社代表取締役を労働基準法第32条(労働時間)違反の疑いで岡山地検に書類送検した。同社は今年4月に、最も長い者で月253時間の時間外労働をさせた疑い。5月に同労基署が臨検した際、労働時間数を過少に記載した虚偽の勤務報告書を提出した疑いも持たれている。

家政婦 死亡を労災認定せず――東京地裁

家政婦紹介業を営む会社に家政婦兼訪問介護ヘルパーとして登録して働いていた労働者の遺族が、7日間の住み込み勤務後に死亡したのは会社の業務が原因と訴えた裁判で、東京地方裁判所(片野正樹裁判長)は労災と認めない判決を下した。勤務のうち、家事業務については雇用主が個人宅であり、労働基準法第116条2項で同法の適用が除外される「家事使用人」に当たると指摘。会社の指揮命令下で従事した介護業務は、週31時間30分に留まり、業務起因性を認めるのは困難とした。

平均年間給与 正社員・男性570万円に――国税庁 令和3年民間給与実態

国税庁の令和3年民間給与実態統計によると、昨年1年間を通じて勤務した正社員の平均年間給与は、男性が569.9万円、女性が388.9万円だった。前年結果と比べて、それぞれ3.6%増、1.4%増と伸びている。役員も含めた全体の平均給与は、男女計が443.3万円(2.4%増)で、男性は2.5%増の545.3万円、女性は3.2%増の302.0万円だった。業種別では情報通信業が624万円、製造業が516万円となり、425万円の運輸業,郵便業を除く全業種で前年結果を上回った。

偽装一人親方把握へ実態調査――国交省

国土交通省は、技能者を一人親方として装う「偽装一人親方」対策として、建設業者を対象に実態把握に乗り出す。毎年11月に社会保険の加入状況や賃金実態などを調査するのに当たり、契約する一人親方の働き方が適正かどうかを確認する「働き方自己診断チェックリスト」の活用状況を調べる。来年度はさらに一人親方の実態把握に向けた調査も実施する予定で、ガイドラインで示す「適正な一人親方の目安」である必要な実務経験年数10年以上などの基準について、改定の必要性を検討する。

精神不調 認識可能性認め降格無効に――東京高裁

上司への誹謗中傷などを理由とする降格処分の有効性が争点となった裁判で、東京高等裁判所(髙橋譲裁判長)は処分を無効とする判決を下した。裁判は物流アウトソーシングなどを営む会社で働く労働者が起こしたもので、同高裁は、会社は労働者の精神疾患発症を認識するのは難しかったとしても、心身の異常やその原因は処分時に認識可能だったと指摘。降格は懲戒権濫用に当たると判断した。労働者は上司との関係悪化や業務過多を再三訴えていたが、会社は改善措置を講じなかった。処分後、労働者は精神疾患で5カ月休職。この疾患は「上司とのトラブル」などが理由として裁判中に労災認定を受けた。労災認定における疾患発症日は処分前で、処分事由となった労働者の行為はいずれも発症日以降のものだった。

労災認定 暑熱を負荷要因と評価――京都下労基署

京都下労働基準監督署(田中淳史署長)が、急性心不全で死亡した自動車整備士に関し、労働時間以外に「暑熱環境」を負荷要因と認め、労災認定していたことが分かった。整備士の発症前2~6カ月の月平均時間外労働は最大77時間21分で、過労死ラインには達していない。同労基署は平成28年11月に整備士の遺族に対し、労災補償の遺族補償給付と葬祭料を不支給処分としており、これを不服とした遺族が行政訴訟を起こしていた。昨年の改正で労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価することを明確化した脳・心臓疾患の労災認定基準を踏まえて処分を取り消し、認定した。

パワハラ 職場環境は理由ならず――最高裁

パワーハラスメントを理由とする分限免職の有効性が争点となった裁判で、最高裁判所第三小法廷(林道晴裁判長)は処分を違法とした二審判決を取り消し、免職を有効と判断した。裁判は山口県長門市で消防士として働いていた労働者が処分を不服としたもので、二審の広島高等裁判所は消防組織という独特な職場環境や、パワハラ研修を受けさせていない点を考慮し、免職は重過ぎるとしていた。最高裁は、パワハラは5年を超えて繰り返され、職員全体の半数近くが被害に遭うなど、職場環境の悪化は公務の能率の観点からも見過ごせないと指摘。分限免職を適法と判示した。

デジタル払い 口座残高上限100万円に――厚労省

厚生労働省は、賃金のデジタル払い(資金移動業者の口座への賃金支払い)を可能とする労働基準法施行規則の改正省令案を明らかにした。使用者が労働者の同意を得た場合、一定の要件を満たして厚労大臣の指定を受けた移動業者の口座への資金移動によって賃金を支払えるようになる。指定要件には、口座残高上限額を100万円以下とすることや、ATMを利用して1円単位で通貨を受け取れることなどを盛り込む。企業には、賃金支払い方法の選択肢として、銀行口座や証券総合口座への振込みなども労働者に示すよう義務付ける。公布は今年11月、施行は来年4月1日の予定。

介護職員は月給22.3万円――介護労働安定センター 介護労働実態調査

介護労働安定センターの「令和3年度介護労働実態調査」によると、月給制で働く労働者の職種別所定内賃金は、介護職員が22.3万円、訪問介護員が22.4万円、介護支援専門員が26.5万円だった。前年結果からは横ばいで、それぞれ0.5%(1201円)増、0.5%(1198円)増、0.1%(151円)減となっている。時間給については介護職員が1031円(1.2%、12円増)、訪問介護員が1319円(1.6%、21円増)などと改善し、看護職員は2.5%(37円)増の1490円とめだって伸びた。月給労働者の賞与支給額は59.1万円となっている。

賃上げ取組む企業に奨励金――東京都

東京都は、物価高騰への緊急対策として、中小企業に対する支援事業を新設・拡大する。新規事業として、エンゲージメントの向上によって賃上げに取り組む企業に対する奨励金制度を設け、9月の補正予算案に7億円を計上した。賃上げにつながる取組みとして複数の項目を設定し、満たした項目数に応じて支給する。既存の事業も拡充し、自社内で実施するOff―JTの訓練への助成対象件数を従来の2倍の200社とする。業務のデジタル化に必要な機器・システムの導入に対する助成金制度では、賃上げ計画書を策定した場合に補助率を引き上げる措置を追加した。

飲食店店長 管理監督者性を否定――東京地裁

飲食店の店長を務めていた労働者が残業代の不払いなどを不服として訴えた裁判で、東京地方裁判所(布施雄士裁判官)は労働者の管理監督者性を否定し、運営会社に計980万円の支払いを命じた。労働者の月給は30万円で、勤務時間は不規則かつ長時間に及んだ。同地裁は労働者の月給は一般的な飲食店従業員の賃金である月給25万円と比べて必ずしも高額ではないと指摘。管理監督者に相応しい待遇とは到底いえないとして、残業代に加え、付加金の請求も認めている。

賃金台帳 労働時間数を過少に記入――伊万里労基署

佐賀・伊万里労働基準監督署(福田貴裕署長)は、賃金台帳に実際より過少な労働時間数などを記入していたとして、貨物自動車運送業のロジコン㈱(同県伊万里市)と当時の同社統括運行管理者を労働基準法第108条(賃金台帳)違反の疑いで伊万里区検に書類送検した。昨年7月、同社の労働者がトラック運転中に交通事故を起こし、6人が死傷している。同社に対しては昨年11月、労働者の過労運転を容認したとして、兵庫県警が道路交通法第66条の2違反の疑いで神戸地検尼崎支部に書類送検した。

付加金支払い命令を取消し――東京高裁

農林畜産物の生産・販売や飲食店経営を営む㈱hototo(山梨県山梨市、水上篤代表取締役)で働く労働者が残業代の支払いを求めた裁判で、東京高等裁判所(木納敏和裁判長)は、付加金支払いを命じた一審判決を取り消した。一審は未払い残業代に加え、80万円の付加金支払いを命令していた。同社は一審判決後に未払い分の残業代をすべて弁済。同高裁は最高裁判決(平成26年3月6日)を踏まえ、口頭弁論終結までに義務違反の状況が消滅したときは、付加金支払い命令ができなくなるとしている。

トラック運転者 休息期間の下限は9時間――労政審・作業部会報告

労働政策審議会の作業部会は、トラック運転者の労働時間等改善基準告示の見直しに関する報告を取りまとめた。現行基準で継続8時間以上としている1日の休息期間について、継続11時間以上を基本としつつ、9時間を下限に設定するのが適当とした。ただし、泊まりを伴う長距離運行に例外措置を設ける。運行途中の休息の下限を8時間とし、運行後に継続12時間以上の確保を求める。1カ月の拘束時間は「原則284時間まで、最大310時間まで」に見直す。現行よりも順に9時間、10時間の短縮となる。

中途採用の応募1・6倍に――ヤフー

ヤフー㈱(東京都千代田区、小澤隆生代表取締役社長)は、今春から拡充した「どこでもオフィス制度」の効果により、中途採用の応募者数が1・6倍に増えたと明らかにした。リモートワークの活用を前提に国内ならどこでも居住可能としたもので、1都3県以外からの応募が全体の35%にまで高まっている。既存社員が転居するケースも増え、契約社員を含めた対象者約8000人のうち、8月末現在で130人以上が飛行機・新幹線での通勤圏へ移り住んでいる。

貨物自動車運送業 拘束時間が上限超過し送検――奈良労基署

奈良労働基準監督署(尾形賢一署長)は、運転者2人に36協定の限度時間を超える時間外労働をさせたとして、貨物自動車運送業の㈱カズショウ(奈良県奈良市)と同社代表取締役を労働基準法第32条(労働時間)違反の疑いで、奈良地検に書類送検した。同社は協定に「改善基準告示の拘束時間の上限を時間外労働の限度とする」と付記していた。このため同労基署は時間外労働について、協定で定めた時間内に収まっていたか否かにかかわらず、休憩を含めた拘束時間が告示の上限を超えた時点から、すべて違法と判断した。

公立教員の残業代請求棄却――東京高裁

公立学校の教員に対する残業代の支払い義務が争点となった裁判で、東京高等裁判所(矢尾渉裁判長)は支払い義務がないと判断した一審判決を維持した。埼玉県内の公立学校の教員が、同県に240万円の支払いを求めたもので、給特法は残業の対価として月額給与の4%を教職調整額として支給すると定めており、労働基準法37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)の適用は排除されているとした。国家賠償法上の責任についても、自由意思を極めて強く拘束するような時間外勤務命令はなかったと指摘。責任を否定している。

第273話「20代女性、孤独感じる65%」

野村総研が20~60代以上の男女2,200人に調査したところ、「孤独を感じる」と答えた人の割合は全年代で上昇。
中でも20代女性は昨年から8ポイント増えて65%となり、最も割合が高かった。

職業別では専業主婦・主夫の6割が「新型コロナウイルス流行前と比較して孤独を感じることが増えた」と答えた。
コロナによる失業などの経済的困窮が影響している可能性があり、1度切れた人間関係を元に戻すのが難しいといった側面もありそうだ。

孤独が深刻になるほど家族以外の人を相談相手に選ぶ、という結果も出た。
孤独が「全く深刻ではない」人は51.3%が相談相手に配偶者を選んだが、「かなり深刻」と答えた人では15.2%に低下した。
一方、孤独が全く深刻でない人で「友人・知人を選ぶ」と答えたのは26.7%だったが、かなり深刻な人では53.1%に上昇。
専門家を選ぶ人も、同様に6.6%から23.5%に上昇した。

孤独の原因は家庭にある可能性もあり、多様な居場所づくりや相談支援体制の整備が求められる。

以上

年休5日の義務果たさず――久留米労基署

福岡・久留米労働基準監督署(古賀薫署長)は、労働基準監督官に対し虚偽の陳述を行ったとして、昭和建設㈱(同県久留米市)と同社の担当課長を労働基準法101条(報告等)違反の疑いで福岡地検久留米支部に書類送検した。同社は年間5日間の年次有給休暇を取得できていない労働者が複数人いるにもかかわらず、「全員取得できている」と虚偽の内容を記載した有給休暇管理簿を提出し、記載内容に基づいて虚偽の陳述を行った疑い。

無断で動画公開 団交拒否理由にならず――都労委

東京都労働委員会(金井康雄会長)は、労働組合が団体交渉の様子を撮影し、動画サイト上で公開したことを理由として以降の団交申入れに応じなかったテイケイ㈱(東京都新宿区)について、不当労働行為と認定した。動画はモザイク処理などで一定のプライバシーの保護を図っており、会社側の担当者が特定できるものであるとまではいえず、動画の公開により具体的に業務が妨害された事実もないとし、団交を拒否する正当な理由にはならないと判断している。

人への投資 出向通じた能力向上促進――厚労省・令和5年度

厚生労働省は令和5年度、在籍型出向を活用した労働者の能力向上を促進するため、産業雇用安定助成金に新コースとして「スキルアップ支援コース」(仮称)を追加する方針だ。政府が重点課題に掲げる「人への投資」の施策の一環で、労働者のスキルアップのために在籍型出向を行う出向元に対し、出向労働者の賃金の一部を助成する。出向元が新型コロナウイルス感染症による影響を受けているかは問わない。助成率は最大3分の2で、労働者1人1日当たり8355円を限度に支給する。

年休5日の義務果たさず――久留米労基署

福岡・久留米労働基準監督署(古賀薫署長)は、労働基準監督官に対し虚偽の陳述を行ったとして、昭和建設㈱(同県久留米市)と同社の担当課長を労働基準法101条(報告等)違反の疑いで福岡地検久留米支部に書類送検した。同社は年間5日間の年次有給休暇を取得できていない労働者が複数人いるにもかかわらず、「全員取得できている」と虚偽の内容を記載した有給休暇管理簿を提出し、記載内容に基づいて虚偽の陳述を行った疑い。

無断で動画公開 団交拒否理由にならず――都労委

東京都労働委員会(金井康雄会長)は、労働組合が団体交渉の様子を撮影し、動画サイト上で公開したことを理由として以降の団交申入れに応じなかったテイケイ㈱(東京都新宿区)について、不当労働行為と認定した。動画はモザイク処理などで一定のプライバシーの保護を図っており、会社側の担当者が特定できるものであるとまではいえず、動画の公開により具体的に業務が妨害された事実もないとし、団交を拒否する正当な理由にはならないと判断している。

人への投資 出向通じた能力向上促進――厚労省・令和5年度

厚生労働省は令和5年度、在籍型出向を活用した労働者の能力向上を促進するため、産業雇用安定助成金に新コースとして「スキルアップ支援コース」(仮称)を追加する方針だ。政府が重点課題に掲げる「人への投資」の施策の一環で、労働者のスキルアップのために在籍型出向を行う出向元に対し、出向労働者の賃金の一部を助成する。出向元が新型コロナウイルス感染症による影響を受けているかは問わない。助成率は最大3分の2で、労働者1人1日当たり8355円を限度に支給する。

減給制裁上限超え送検――川崎南労基署

神奈川・川崎南労働基準監督署(松本進吾署長)は、労働者1人に対し1回の額が平均賃金の1日分の半額を超える減給制裁をしたとして、金属製品製造業の京浜スチール工業㈱(同県川崎市)と同社代表取締役を労働基準法第91条(減給の制裁)違反の疑いで横浜地検川崎支部に書類送検した。同社は1事案に対する制裁として、昨年6~7月分の定期賃金から、各月の基本給の10%に当たる約5万円(計約10万円)を控除していた。

従業員へ900万円の賠償命令――東京地裁

東京ガスファシリティサービス㈱(東京都港区、西村優代表取締役社長)が元従業員に対し、客先の駐車場の不正利用などで被った損害の賠償などを求めた裁判で、東京地方裁判所(岡田毅裁判官)は元従業員に900万円の支払いを命じた。元従業員は同社が管理を受託する駐車場で働いていた。平成22年4月から自家用車で通勤するようになり、同駐車場を利用していたが、機械を不正に動かすなどの方法で料金を支払わなかった。同地裁は「悪質な故意による不法行為」と指摘。過失相殺を認めず、損害の全額の請求を認めた。

出生時育休 管理監督者も就業可能――厚労省

厚生労働省は、今年4月から順次施行している改正育児介護休業法のQ&A集を改定し、出生時育休期間中の就業に関する留意点を拡充した。労働基準法上の管理監督者に対しても、出生時育休中に部分就業を行わせることができるとしている。所定労働時間の合計の半分までとされている就業可能時間数の上限は、就業規則などで定めた所定労働時間から算出する。合意した時間数よりも働いた時間が少なかったことを理由に賃金減額を行うと、管理監督者性を否定する要素になるとして注意を促している。

減給制裁上限超え送検――川崎南労基署

神奈川・川崎南労働基準監督署(松本進吾署長)は、労働者1人に対し1回の額が平均賃金の1日分の半額を超える減給制裁をしたとして、金属製品製造業の京浜スチール工業㈱(同県川崎市)と同社代表取締役を労働基準法第91条(減給の制裁)違反の疑いで横浜地検川崎支部に書類送検した。同社は1事案に対する制裁として、昨年6~7月分の定期賃金から、各月の基本給の10%に当たる約5万円(計約10万円)を控除していた。

従業員へ900万円の賠償命令――東京地裁

東京ガスファシリティサービス㈱(東京都港区、西村優代表取締役社長)が元従業員に対し、客先の駐車場の不正利用などで被った損害の賠償などを求めた裁判で、東京地方裁判所(岡田毅裁判官)は元従業員に900万円の支払いを命じた。元従業員は同社が管理を受託する駐車場で働いていた。平成22年4月から自家用車で通勤するようになり、同駐車場を利用していたが、機械を不正に動かすなどの方法で料金を支払わなかった。同地裁は「悪質な故意による不法行為」と指摘。過失相殺を認めず、損害の全額の請求を認めた。

出生時育休 管理監督者も就業可能――厚労省

厚生労働省は、今年4月から順次施行している改正育児介護休業法のQ&A集を改定し、出生時育休期間中の就業に関する留意点を拡充した。労働基準法上の管理監督者に対しても、出生時育休中に部分就業を行わせることができるとしている。所定労働時間の合計の半分までとされている就業可能時間数の上限は、就業規則などで定めた所定労働時間から算出する。合意した時間数よりも働いた時間が少なかったことを理由に賃金減額を行うと、管理監督者性を否定する要素になるとして注意を促している。

第272話「18歳成人、大人の自覚?」

シチズン時計が改正民法施行により大人の仲間入りをした18、19歳の男女400人を対象に、“新成人として大切にしたい時間は”についてインタ-ネットで尋ねた。
最も多かったのは「勉強」と「仕事・アルバイト」が同率で39.5%だった。
3位は「睡眠」で29.3%、4位は「趣味」で26.5%だった。

“成人として持ちたい心構えは”では「行動に責任を持つ」が58.3%で最多。
「夢や目標に向け努力する」28.5%、「自分の時間を大切にする」が25.8%と続いた。

“最も関心のあること”では、親の同意なく契約できるようになったことを踏まえ、「クレジットカ-ドを作る」が32.5%と3分の1を占めた。

一方、“1日が25時間だったら、増えた1時間を何に使いたいか”との質問には、「睡眠」が32.0%で1位で、“大切にしたい時間”とは対照的な結果に。次いで「趣味」が15.0%だった。

以上

重層構造適正化へ実態調査――国交省検討会

国土交通省は、建設業を将来にわたって持続可能なものとするために必要な施策を考える有識者検討会を設立した。このほど開いた第1回会合では、論点として重層下請構造、建設技能者の処遇改善などについて議論した。下請にまで賃金改善が行き渡っていない原因の1つに重層下請構造があるとして、今年9月に実態調査に乗り出す予定を決めている。受注者側の建設業界だけではなく、発注者側の不動産業界にもヒアリングを実施し、処遇、賃金などの実態を確認する。今年度末には報告書を取りまとめる方針。

特定求人メディア 12月31日まで届出必要――厚労省

厚生労働省は10月1日から適用する「募集情報等提供事業の業務運営要領」を公表した。求職者の情報を収集する事業者を新たに「特定募集情報等提供事業」と定義し、届出制を導入したことを受け、該当する事業者には12月31日までにe―Govの電子申請を通じて届け出るよう求めている。届出制の対象になるのは求職者個人を識別できる情報だけでなく、経歴やメールアドレス、位置情報などを収集する事業者。届出を怠った場合は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される。

23年高卒求人初任給 技術・技能19.9万円に――労働新聞社集計

本紙調査による2023年3月卒の高卒求人初任給は、技術・技能系19・9万円、販売・営業系20・0万円、事務職18・9万円などとなった。販売・接客職や技術・技能系のうちの建設業で20万円台半ばに達したほか、人手不足が深刻さを増すドライバー職では21万円を超えている。募集賃金が高騰するなか、集計したサンプルの16・8%が固定残業代を含めた初任給を提示していた。

重層構造適正化へ実態調査――国交省検討会

国土交通省は、建設業を将来にわたって持続可能なものとするために必要な施策を考える有識者検討会を設立した。このほど開いた第1回会合では、論点として重層下請構造、建設技能者の処遇改善などについて議論した。下請にまで賃金改善が行き渡っていない原因の1つに重層下請構造があるとして、今年9月に実態調査に乗り出す予定を決めている。受注者側の建設業界だけではなく、発注者側の不動産業界にもヒアリングを実施し、処遇、賃金などの実態を確認する。今年度末には報告書を取りまとめる方針。

特定求人メディア 12月31日まで届出必要――厚労省

厚生労働省は10月1日から適用する「募集情報等提供事業の業務運営要領」を公表した。求職者の情報を収集する事業者を新たに「特定募集情報等提供事業」と定義し、届出制を導入したことを受け、該当する事業者には12月31日までにe―Govの電子申請を通じて届け出るよう求めている。届出制の対象になるのは求職者個人を識別できる情報だけでなく、経歴やメールアドレス、位置情報などを収集する事業者。届出を怠った場合は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される。

23年高卒求人初任給 技術・技能19.9万円に――労働新聞社集計

本紙調査による2023年3月卒の高卒求人初任給は、技術・技能系19・9万円、販売・営業系20・0万円、事務職18・9万円などとなった。販売・接客職や技術・技能系のうちの建設業で20万円台半ばに達したほか、人手不足が深刻さを増すドライバー職では21万円を超えている。募集賃金が高騰するなか、集計したサンプルの16・8%が固定残業代を含めた初任給を提示していた。

正社員男性 ピーク時42.9万円に――厚労省 雇用形態別賃金

令和3年賃金構造基本統計調査の雇用形態別集計によると、男性フルタイム労働者の所定内給与のピークは正社員が55~59歳の42.9万円、非正社員では再雇用世代の60~64歳27.5万円だった。男女別の平均所定内給与は、男性34.9万円、女性27.1万円で、男性の水準を100とした場合の女性の指数は77.6となっている。短時間労働者の非正社員・女性では、勤続0年が時間給で1193円、1~2年1246円、5年以上1309円などとなり、前年比で2.6%減、2.3%減、3.8%減と落ち込んでいる。

健康経営 中小もPDCA追加に――経産省

経済産業省は、健康経営を推進している企業を認定する「健康経営優良法人認定制度」の評価要件を見直す。中小企業を対象に特に優良な上位500社を認定している「ブライト500」の選出基準について、取組みに関する発信状況などを問う現行の3項目に加え、新たに「PDCAに関する取組み状況」と「経営者・役員の関与度合い」の2項目を追加する。認定後も持続的に取り組める体制があるかを測るとともに、経営者による健康経営の推進を促す狙い。

精神障害認定基準 評価事項にカスハラ追加――厚労省

厚生労働省は、精神障害に関する労災認定請求の大幅増加を受けて、認定基準の見直しに向けた検討を進めている。認定基準全般を検証し、より迅速・的確に心理的負荷を評価できるようにするのが狙い。このほど、有識者による専門検討会に対し、心理的負荷につながる「対人関係」に関する具体的出来事として、カスタマーハラスメントを追加する案を提示した。その内容として、「顧客や取引先、施設利用者等から(著しい)迷惑行為を受けた」を盛り込む。

正社員男性 ピーク時42.9万円に――厚労省 雇用形態別賃金

令和3年賃金構造基本統計調査の雇用形態別集計によると、男性フルタイム労働者の所定内給与のピークは正社員が55~59歳の42.9万円、非正社員では再雇用世代の60~64歳27.5万円だった。男女別の平均所定内給与は、男性34.9万円、女性27.1万円で、男性の水準を100とした場合の女性の指数は77.6となっている。短時間労働者の非正社員・女性では、勤続0年が時間給で1193円、1~2年1246円、5年以上1309円などとなり、前年比で2.6%減、2.3%減、3.8%減と落ち込んでいる。

第271話「大卒内定率 7月1日時点85%」

就職情報大手のディスコは2023年3月卒業予定の学生の内定率が7月1日時点で84.9%だったと発表。
前年同月を4.8ポイント上回った。回答全体のうち74.6%が就職活動を終了していた。
回答者数は1,207人で、「内定を得た」と回答した人は84.9%で、6月から8ポイント上昇した。
就職活動を終了した学生は74.6%で、前年同期より7.2ポイント上回った。
内定を得た学生の平均内定社数は2.5社と前年の2.3社に比べ微増だった。

就職活動を継続している学生は全体の25.5%を占める。
今後の方針・戦略を調べると、「新たな企業を探しながら、幅広く持ち駒を広げていく」と回答した人は30.3%と最も多く、6月から4.9ポイント上昇した。
内定を得たが、自分により合う企業が他にないか視野を広げている学生がいることがうかがえる。

以上

幹部候補に「自社株報酬」を――経産省・改訂版「企業統治システム指針」

経済産業省は、企業価値を高めるコーポレートガバナンス(企業統治)改革の実践に求められる取組みを示す「コーポレートガバナンスシステムに関する実務指針」を改訂した。新たに次世代の社長・CEOを支える幹部候補人材を育成し、エンゲージメントの向上を図る必要性を強調している。具体策として、中堅層から候補者を確保して早期育成を進めつつ、自社の株式を付与する「自社株報酬」の採用を提言した。企業価値や株価に対する意識を早い段階から高められ、優秀な人材の引留めにもつながるとしている。

新規採用以降は会社の「責」――東京高裁

都内を中心に飲食店を展開する㈲リバーサイドで働くアルバイト労働者が合意退職は無効と訴えた裁判で、東京高等裁判所(三角比呂裁判長)は労働契約上の地位確認のみ認めた一審判決を変更し、一部期間のバックペイ支払いを命じた。労働者が復職意思を明確にし、同社がアルバイトを新規に雇い入れた令和2年3月以降は同社の責めに帰すべき事由により就労できなかったと判断している。労働者は平成31年3月12日の勤務終了後、上司に「3月末か4月半ばには辞める」と告げ、以降のシフト希望を提出せず出勤もしなかった。同高裁は退職の時期があいまいなため、確定的な退職の意思表示といえないと指摘。合意退職成立を認めなかった。

裁量労働制見直し 本人同意を前提に適用――厚労省・検討会報告書

厚生労働省は、裁量労働制見直しの方向性などを示した「これからの労働時間制度に関する検討会報告書」を取りまとめた。労働者が自らの意思で自律的・主体的に働くことを選択できるよう、裁量労働制の適用に当たり、本人の同意を得るようにするのが適当と提言した。運用中に同意が撤回された場合には、制度の適用から外れることを明確化する。健康確保の徹底に向け、使用者に求める健康・福祉確保措置の強化も提起した。措置のメニューの追加や、複数措置の実施などの案を盛り込んでいる。

トップ人材育成へ独自研修――情報サービス産業協会

情報サービス産業協会(=JISA、原孝会長)は、数年後に社会のデジタル化をリードし得る「トップITアスリート」を育成するため、独自の研修プログラムを創設した。会員企業が送り出す入社10年目程度の15人を対象とし、7月から第1期の研修を開始した。約半年間、180時間以上にわたるプログラムでは、群馬県の協力のもと、実際に地方創生をテーマに課題探索から解決策立案に挑戦する体験型研修も行う。将来的には会員外からの参加も可能とし、500~1000人のトップITアスリート輩出をめざす。

新型コロナ 宿泊・自宅療養証明は不要――厚労省

厚生労働省は新型コロナウイルスの感染者に対する傷病手当金の支給に関するQ&Aを改訂した。支給申請に当たり、「宿泊・自宅療養証明書」の提出は必須ではなく、保険者が一律に添付を求めるのは適切ではないとしている。第7波に突入したなかで、医療機関や保健所の業務ひっ迫に配慮した形だ。何らかの証明書を求める場合には、HER―SYSの電子証明の活用が考えられるとした。やむを得ない理由により医療機関を受診していない場合は、事業主証明で労務不能かどうかを確認するとしている。

男女賃金差の公表義務化 正規、非正規など3区分で――厚労省・改正女性活躍関連省令施行

厚生労働省は7月8日、労働者301人以上の企業に対して男女の賃金の差異の公表を義務付ける女性活躍推進法の改正省令を施行した。情報の公表は、正規雇用労働者、非正規雇用労働者、全労働者の3区分で実施する。301人以上企業は毎年、雇用区分別に男女それぞれの平均年間賃金を算出したうえで、男性賃金に対する女性賃金の割合(%)を算出、公表しなければならない。事業年度の終了後、おおむね3カ月以内の公表が求められる。

第270話「テレワ-ク導入5割超す」

総務省の2021年「通信利用動向調査」によると、テレワ-クを導入済みと回答した企業の割合は前年比4.4ポイント増の51.9%となった。
5割を超えたのは、調査を始めた1999年以来初めて。コロナ禍前の2019年の調査からは2.5倍となった。
調査は、期間を定めずに雇用する従業員を100人以上抱える民間企業に対し、2021年8月末時点の導入状況を尋ね、2396社から回答を得た。

産業別のテレワ-ク導入割合は「情報通信業」が97.7%で最も高く、「金融・保険業」が82.4%で続いた。
テレワ-ク導入企業の割合は、2019年調査では20.2%だったが、コロナ禍が始まった2020年調査では47.5%と大幅に上昇していた。

以上

カスハラ対策 業界統一の定義・基準を――交運労協

交通運輸、観光サービス関係の産業別労働組合で構成する全日本交通運輸産業労働組合連合会(=交運労協、住野敏彦議長)は、カスタマーハラスメント防止ガイドラインをまとめた。厚生労働省の対策マニュアルに基づいて各種防止対策を示した一方、対策推進には業界として統一的なカスハラ定義、判断基準を共有しておくことが必須と訴えた。7月下旬以降、構成組織とともにトラック協会、ハイヤー・タクシー連合会などの各事業者団体との間で意見交換の場を持ち、業界別の基準作成につなげていきたいとしている。

デジタル人材育成を支援――愛知県

愛知県は7月から、業務のデジタル化などを推進する「デジタル人材」の育成を支援するため、中小企業約80社に対してITコンサルティングなどの経験が豊富な専門家を無料で派遣する事業を開始する。社員の意識改革やスキルマップ作成など各社の課題を抽出し、解決策の提案や情報提供を行う。さらに約15社に対し、個別の研修カリキュラムを作成し、実施を支援する。同県が昨年度行った調査によると、多くの企業が「自社の業務にも精通する人材」を求めていることから、社内での育成を後押しする。

固定残業代 一方的な減額認めず――東京高裁

医薬品開発業務の請負などを営む㈱インテリムで働いていた労働者が賃金減額などを違法として訴えた裁判で、東京高等裁判所(志田原信三裁判長)は固定残業代の減額を有効とした一審判決を変更し、一方的な減額は認められないと判断した。一審の東京地方裁判所は労働基準法所定の方法で算定した金額を下回らない限り、どのような方法で支払っても自由であると指摘。固定残業代を廃止し、実労働時間に応じた割増賃金を支払う扱いに変更するのに、労働者の同意は必要ないとしていた。

都内事業所 平均時給額1331円に――東京都 パートタイマー実態調査

東京都の「パートタイマーに関する実態調査」によると、都内事業所におけるパートの平均時給額は1331円だった。産業別では卸売業,小売業1202円、宿泊業,飲食サービス業1129円となり、4年前の前回調査と比べて46円増、15円減となっている。複数回答で賃金額の決定基準を尋ねると、「職務の内容」(66.3%)を選択した事業所の割合が最も高く、5割台で「能力・経験」(58.4%)と「最低賃金」(50.8%)が続いた。賞与を支給している事業所の平均年間支給額は、「1万円以上5万円未満」が32.6%、「5万円以上10万円未満」が24.6%を占め、6割弱が10万円未満としている。

派遣労働者 雇止めを不法行為と認めず――東京地裁

介護・看護の人材派遣を営む㈱グッドパートナーズで働く派遣労働者が、施設内の虐待の自治体への通報をきっかけに雇止めに遭ったのを不服とした裁判で、東京地方裁判所(林﨑由莉子裁判官)は雇止めを不法行為に当たらないと判断した。同社に事前に報告せず通報したことが理由と認定する一方、事前の報告を求める行為が違法性の高いものとはいえないと指摘。労働者の慰謝料請求を退けた。高齢者虐待防止法では、介護士は虐待が疑われる高齢者を発見した場合、速やかに自治体に通報しなければならないと定めている。通報を理由とした不利益取扱いは禁止されている。

副業容認など情報公開促進――厚労省

厚生労働省は、副業・兼業を行う際の労働時間管理のあり方などを示した副業・兼業の促進に関するガイドラインを改正する。ガイドラインにおける「企業の対応」事項として、副業などに関する情報公表の取組みを追加し、企業の方針に関する情報公開を推奨していく。労働者の職業選択の幅を広げ、多様なキャリア形成を促進するのが狙い。自社のホームページなどで、副業・兼業を許容しているか否かと、許容する際の条件を公開するよう促す。今年7月上旬に改定予定。

第269話「副業、転職時に重要視4割」

働く女性のうち、4割強が「転職先を決める際に、副業できるかどうかが重要な条件」と考えていることが、キャリアデザインセンタ-の調べでわかった。
2022年1~2月に、同社の女性向け転職サイトで、女性746人を対象に実施。
副業をしたことがあると答えたのは全体の34%あった。
副業経験がある人に月収を聞くと、「1~4万円」が53.8%と最も多かった。
平均すると6.2万円で、10万円以下の人が8割以上占めるものの、中には20万円以上の副業収入を得る人もいた。

一方、副業経験のない人の中で、今後副業を「機会があればやりたい」「ぜひやりたい」と考えている人は9割以上にのぼった。

また、副業OKかどうかが転職先を決める際に重要な条件になるか、という問いに対しては「非常に重要」「やや重要」の重要派が46.8%にのぼり、新型コロナウイルス下で働き方が変わる中、副業への期待は大きいと言える。

以上

常用者男性 専門・技術職30.6万円に――厚労省 中途採用時賃金(3年度下半期)

厚生労働省が集計した令和3年度下半期の「中途採用者採用時賃金情報」によると、常用者・男性の職業別平均賃金は、専門的・技術的職業30.6万円、生産工程・労務の職業22.6万円などとなった。前年下半期と比べて順に、0.3%、3.2%増加している。建設・採掘や運搬・清掃などの職業を含め、現業系では軒並み3%台の伸びを示した。都道府県別では、東京が34.0万円と突出して高く、神奈川が29.5万円、大阪が26.3万円、愛知が26.2万円、福岡が25.1万円などと続く。

育成活性化へ労使に補助金――中企庁・今後の政策方向性

人材育成の活性化へ労使双方にインセンティブを設ける――中小企業庁は、今後の中小企業政策の方向性を取りまとめた。企業の成長を妨げている要因として、経営者の高齢化による現状維持志向や人材の教育・経験不足を挙げている。経営層に対して人材育成の必要性の理解を促し、社員に研修プログラムなどを受講させる際には労使双方へ補助金を支給するなど、人的資本の投資を促す。経営スキルの強化を図るには大企業のOB人材の活用が有効として、マッチング機能を全国展開するとした。

休業手当支払いを命じる――東京高裁

東京都内にホテルを複数店舗展開するホテルステーショングループで働いていた労働者が、新型コロナウイルスの感染拡大により同意なく所定労働時間を減らされたと訴えた裁判で、東京高等裁判所(木納敏和裁判長)は減少した時間分の休業手当支払いなどを命じた一審を維持した。労働者は令和2年3~7月にかけ、1日の所定労働時間を2時間~3時間15分減らされた。同グループは赤字経営のなかで「従業員の生活に悪影響を及ぼさないように配慮した」と主張したが、同高裁は「所定労働時間を一方的に変更できる法律上の根拠にならない」と退けている。

大手モデル退職金 定年2564万円に――中労委 令和3年退職金・定年制調査

1000人以上の大手企業を対象とする中央労働委員会の「退職金、年金および定年制事情調査」によると、定年モデル退職金は大卒・総合職で2564万円、高卒・生産労働者は1840万円だった。2年前の前回調査と比べるとそれぞれ2.1%増、13.0%減となり、高卒・生産労働者で大きく落ち込んでいる。確定拠出年金(企業型)を採用する企業のうち、マッチング拠出を導入しているのは50.9%で、集計開始後初めて5割に達した。再雇用者の基本給設定については、「定年前の50%以上80%未満」が62.5%を占めている。

停職6カ月 裁量権の範囲逸脱せず――最高裁

富山県氷見市が元消防職員に対して下した2回の停職処分のうち、2度目の処分の違法性が争点となった裁判で、最高裁判所第三小法廷(長嶺安政裁判長)は「重きに失する」とした二審判決を破棄し、高裁に差し戻した。同職員は複数人への暴行などを理由に停職2カ月の懲戒処分を受けたが、処分を不服として同市公平委員会に審査請求をした。審査請求手続きで自身に有利な証言をさせようと同僚らに働き掛けたところ「反社会的な違法行為」であるとしてさらに停職6カ月となった。最高裁は同僚らへの働き掛けは報復を示唆した威迫行為で、明確な非行に当たると指摘。処分の種類・長さともに裁量権の範囲の逸脱はないと判断した。

改善基準見直し議論 労基署が荷主に配慮要請へ――労政審トラック作業部会

労働政策審議会の作業部会で進めているトラックドライバーに関する労働時間等改善基準告示の見直しに向けた検討において、労使間の意見集約が難航している。荷主都合による荷待ち時間が発生していることを理由に、使用者側が拘束時間の上限引下げや休息時間の拡大などに難色を示しており、労使見解に大きな隔たりが生じている状況だ。使用者側が荷主対策の強化を求めたため、厚生労働省が新たな荷主対策案を部会に提示した。把握した情報に基づき、全国の労働基準監督署が荷主に対し、改善基準への対応などについて個別に配慮要請を行っていくとしている。

ジョブ型採入れは自社流で――愛知経協

愛知県経営者協会(大島卓会長)は、メンバーシップ型の雇用システムの行き詰まりに対し、解決手段としてジョブ型の要素を加味した人事制度の検討は現実的などとする報告書をまとめた。共通理解がないままジョブ型という言葉が使われる現状への懸念から、改めて関連用語・概念の定義を試み、完全なジョブ型への移行は社会基盤の違いから困難と指摘した。多くの企業が直面するパフォーマンスと処遇の不一致などの課題を掘り下げ、その企業にふさわしい人事制度はその企業にしか考えられないなどと訴えている。

“中核人材”を副業で確保――関東経産局

関東経済産業局(濱野幸一局長)は、関東地域のサービス系企業の労働生産性向上を図るため、支援の方向性を示す報告書を取りまとめた。経営課題などを解決する“中核人材”の確保が重要と強調し、東京圏の専門人材が関東地域の企業を直接訪れる形態での副業・兼業の活用が有効と提言している。関東地域ぐるみで自治体、地元金融機関、商工会議所らによるネットワークを構築し、ニーズの掘り起こしや中核人材とのマッチングにつなげるとしている。

雇保制度のあり方検討――厚労省

厚生労働省は、学識経験者をメンバーとする「雇用保険制度研究会」(座長・山川隆一東大大学院教授)を設置し、雇用保険制度の中長期的な設計・運用の方向性について検討を開始した。財政安定化に向けた機動的な国庫負担の導入などを盛り込んだ雇用保険法改正法案の国会審議などにおいて、同制度をめぐる多くの課題が指摘されたため、制度の理念も含めて幅広く議論する。具体的には、基本手当や教育訓練給付・求職支援制度の効果検証を通じて適切な制度設計をめざす。支給総額の増加が見込まれる育児休業給付の財源や、非正規労働者に対する支援策も論点とする。

第268話「中小66%が影響懸念」

日本商工会議所と東京商工会議所は中小企業6,000社に実施した最低賃金引上げの影響に関する調査結果を取りまとめた。
今年の引き上げが30円となった場合、「経営に影響がある」と回答した企業が65.7%となった。
仮に、30円引き上げられた際の対策としては、「設備投資の抑制など人件費以外のコスト削減」が45.9%で最も多かった。
一方、「正社員の残業時間の削減」は37.7%、「一時金・福利厚生費の削減」は31.4%、「非正規社員の残業時間・シフトの削減」は30.3%と、労務面での対応を挙げた企業も少なくなかった。

政府は2016年に、「最賃の全国の加重平均額を1,000円になることを目指す」方針を示している。
引上げが1円だった20年を除き、16年から毎年3%台(25~28円)の大幅な引き上げが行われていることに対して、「現在の最賃額が負担になっている」と回答した企業は65.4%にのぼった。

以上

通勤手当 割増基礎に含めず送検――刈谷労基署

愛知・刈谷労働基準監督署(橋本圭一署長)は、割増賃金の基礎となる賃金に「通勤手当」と称した手当を含めなかったとして、タクシー業の安城交通㈱(愛知県安城市)と同社取締役総務部長を労働基準法第37条違反の疑いで名古屋地検岡崎支部に書類送検した。同社が通勤手当の名目で支給していた金額は、実際の通勤距離や費用と相関性がなく、基礎に算入する必要があったと判断している。同社は昨年1月、手当を基礎に含めないことで、労働者1人に対し、時間外・深夜労働に対する割増賃金の一部を支払わなかった疑い。

委託作業者の労働者性認定――中労委

中央労働委員会第1部会(荒木尚志部会長)は、電気メーターの取替え工事業者が個人請負契約を締結した作業者ら5人が所属する組合から求められた団体交渉に応じなかった事案について、団交拒否を不当労働行為と認定し、同社の再審査申立てを棄却した。作業者の労働者性を認めている。同社は作業者ごとに年間の工事計画件数を割り当てていたが、施工件数が月間計画の92%を下回った場合にリカバリープランを提出させるなど、毎月の進捗を管理していた。最終的に年間92%を下回ると、翌年度の割当てを減らしている。

停職の違法性めぐり弁論――最高裁

富山県氷見市の消防職員だった労働者が2度の停職処分を違法と訴えた裁判で、最高裁判所は2度目の停職処分の軽重を争点に弁論を開いた。二審の名古屋高裁金沢支部は複数人への暴言・暴行を理由に停職2カ月とした1度目の処分を適法と認める一方、被害者に不利な証言をしないよう圧力をかけたことを理由とした停職6カ月の処分は「重きに失する」として違法と判断していた。弁論で労働者は「不当な圧力を掛ける意図はなかった」、同市は「被害者に謝罪をするどころかさらなる圧力を与えており反省がみられない」とそれぞれ主張した。判決言渡しは6月14日。

第267話「7割が10年以内に退職」

日本経済新聞社が実施した女子学生への調査では多様なキャリア意識が浮かんだ。
新卒入社の会社で定年まで働き続けるとの回答は11.5%。10年以内の退職見込み
は68.9%に上った。

退職理由は転職や学び直し、起業など自身の意志に基づくキャリアシフトが48.7%。
結婚が20.3%、出産・育児が22.7%と一定数あった。
理想の働き方が多様化しているとみられ、女性の人材確保や就労意欲を高めるには、
企業が採用時から画一的なロ-ルモデルでなく柔軟なキャリアパスを示す必要があ
る、としている。

以上

大手の大卒実在者賃金 55歳57万円がピーク――中労委 令和3年賃金事情調査

大手企業の賃金実態を調べている中央労働委員会の「賃金事情調査」によると、大学卒の事務・技術(男性)の実在者平均所定内賃金は、22歳で22.2万円、35歳で39.0万円、45歳で49.9万円などとなり、ピークの55歳では56.6万円だった。全体的に前年比プラスの傾向を示したものの、35歳では0.2%減、40歳では1.2%減と落ち込んでいる。役付手当の平均支給額は、定額制の場合で部長級が7.7万円、課長級が4.7万円、係長級が2.4万円となり、5年前の前回調査と比べて1~3割アップしている。

リスキル推進に報酬提示を――経産省

経済産業省は、人的資本経営の実現に向けた検討会の報告書を取りまとめ、経営環境の急速な変化に対応するための人材戦略の1つとして、リスキル・学び直しの推進を掲げた。現在の職務にかかわらず機会を提供するため、労働時間の一定割合をリスキルに活用できる制度を導入するなどとしたほか、挑戦を促すうえではリスキル後に期待される報酬水準や処遇、ポジションを示すことが重要と提言している。

都の時短命令は違法――東京地裁

飲食業を営む㈱グローバルダイニング(東京都港区、長谷川耕造代表取締役社長)が、東京都による令和3年3月18日付けの時短営業命令を不服として訴えた裁判で、東京地方裁判所(松田典浩裁判長)は命令を違法と判断した。命令は緊急事態宣言解除までを対象としており、効力が生じる期間は4日間しかなかったことが確定していたと指摘。それにもかかわらず、あえて発出する必要性を合理的に説明できていないと強調している。一方、同社が求めた104円の損害賠償については、都知事に過失があるとまではいえないとして、請求を棄却した。

繁忙期に月180時間残業――小諸労基署

長野・小諸労働基準監督署(末永信二署長)は、労働者2人に対し、時間外労働の上限規制を超えて働かせたとして、フランス料理店を営む㈲Ryobi(長野県軽井沢町)と同社代表者を労働基準法第36条(時間外および休日労働の上限規制)違反の疑いで長野地検佐久支部に書類送検した。同社は繁忙期の1カ月間に最長で180時間の時間外・休日労働をさせることで、月100時間の上限を超過した疑い。1日の時間外労働についても、36協定で定めた上限7時間を超えていた疑いが持たれている。

同一労働同一賃金 4割強で待遇差是正推進へ――東京都調査

東京都が都内3000社に実施したパートタイマーに関する実態調査によると、正社員との不合理な待遇差をなくすための取組みを実施済み、もしくは実施を予定している企業の割合が4割強に上った。そのうち、職務評価などを通じて根拠の明確化のみで対応するとした割合は18%に留まり、77%がパートの待遇に対して何らかの改善に取り組んでいる。改善内容別の取組み割合は、休暇制度の見直し45%、基本給の引上げ・変更36%、賞与の支給対象拡大30%などとなっている。

留学費用 賃金と相殺は有効――東京地裁

大成建設㈱で働いていた労働者が留学費用と相殺された賃金の支払いを求めた裁判で、東京地方裁判所(和田山弘剛裁判官)は相殺を有効と認め、相殺後の残金730万円の返還を労働者に命じた。労働者は同社の社外研修制度で海外の大学に留学したが、復職後1カ月も経たないうちに自己都合退職した。両者は復職後5年以内に自己都合退職した場合は留学費用を返還し、賃金との相殺についても異議を申し立てないとする誓約書を交わしていた。同地裁は、労働者は自由意思で相殺に合意したと指摘。労働基準法が定める全額払い違反はなく、相殺は有効と判断した。

人事評価整備で企業成長へ――中小企業白書

中小企業庁は、2022年度版の中小企業白書を取りまとめ、人事評価制度を導入する重要性を強調した。企業規模21~50人の企業では現状、導入率が6割弱に留まる点などを指摘。従業員の能力開発につながるほか、制度のある企業の方が、ない企業より売上高増加率が4ポイント高いとのデータを示した。環境変化に合わせた制度の見直しも求められるとし、頻繁に見直しを行う企業ほど売上高増加率が高い傾向にあるとしている。

ポスト消滅による解雇有効――東京地裁

クレディ・スイス証券㈱(東京都港区、桑原良代表取締役社長兼CEO)で働いていた労働者が部署・ポスト消滅による解雇を不服として訴えた裁判で、東京地方裁判所(佐藤卓裁判官)は解雇を有効と判断した。同社は部署廃止後に計5つの社内公募を提示しており、解雇回避努力を尽くしたと評価している。労働者は社内公募ではなく任用の保証があるポジションを提示すべきと主張したが、同地裁は「社内公募という人事制度を採用している同社に対し、特別な措置を求めるに等しい」と認めなかった。判断枠組みはいわゆる整理解雇の4要素を用いている。

ホワイトカラー 能力診断ツールを開発――厚労省

厚生労働省は、40~60歳代のミドルシニア層のホワイトカラー職種向けに職業能力を診断できる「ポータブルスキル見える化ツール」を開発し、職業情報提供サイト「jobtag」内で公開した。「現状の把握」や「計画の立案」といった自身のスキルを15分程度で入力すると、本人の持ち味を生かせる職務や職位が示される仕組みで、労働者のキャリアの形成・転換に生かすことができる。キャリアコンサルタントなどの支援者が、企業内の労働者のキャリア自律と自己啓発を促すための相談や、求職者の職業相談の場面で活用することなどを想定している。

第266話「最低賃金引上げの影響」

日本商工会議所と東京商工会議所が中小企業6000社に実施した最低賃金引き上げの
影響に関する調査結果によると、今年の引き上げ額が30円となった場合、「経営に影
響がある」と回答した企業が65.7%にのぼった。
仮に30円引き上げられた際にとる対応策としては、「設備投資の抑制など人件費以外
のコスト削減」が45.9%で最も多かった。

一方、「正社員の残業代の削減」は37.7%、「一時金、福利厚生費の削減は」31.4%、
「非正規社員の残業時間、シフトの削減」は30.3%と、労務面での対応を挙げた企業
も少なくなかった。

政府は2016年に、「最低賃金の全国加重平均額を1000円になることをめざす」方針
を示している。引上げが1円だった20年を除き、16年から毎年3%台(25~28円)の
大幅な引き上げが行われていることに対し、「現在の最低賃金額が負担になっている」
と回答した企業は65.4%あった。

 以上

改善基準 拘束時間超過で違法残業――新潟労基署

新潟労働基準監督署(佐藤一成署長)は、運転者1人に対し36協定の延長時間を超える時間外労働を行わせたとして、貨物自動車運送業の富士興業㈱(新潟県新潟市)と同社の新潟営業所長および運行管理者を労働基準法第32条(労働時間)違反の疑いで、新潟地検に書類送検した。「改善基準告示における拘束時間の上限を時間外労働の限度とする」としていた36協定の記載に基づき、拘束時間の上限を超えた労働を違法な時間外労働とした。

10月以降開始した育休に適用――厚労省

厚生労働省は10月1日に施行となる育児休業中の社会保険料免除の要件改正に関するQ&Aをまとめ、地方厚生局などに通知した。改正後の要件は10月1日以降に開始した育休に適用し、施行日をまたぐ育休には改正前の要件を適用するとしている。たとえば9月15日~10月10日に1度目の育休、10月11日~10月31日に2度目の育休を取得したケースでは、1度目の育休には改正前、2度目の育休には改正後の要件を適用する。9月に賞与を支給した場合は免除の対象になるが、10月に支給した場合は対象にならないとした。

解雇無効時の金銭救済制度 権利行使は労働者に限定――厚労省

厚生労働省の有識者会議「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」(座長=山川隆一東京大学大学院教授)は、解雇が無効の際に企業からの金銭支払いによって雇用が終了する救済制度について、「権利行使は労働者に限定する」、「個別の法律で禁止されている解雇も対象とする」といった内容の報告書を取りまとめた。企業が支払う金銭額を算定する際の考慮要素として、退職前の給与額や年齢、勤続年数などを挙げている。同制度を導入するか否かは、今後労働政策審議会で議論する。

最低賃金法違反 高齢者の時給650円に引下げ――津島労基署

愛知・津島労働基準監督署(鈴木基義署長)は、労働者3人を最低賃金額未満の時給で働かせたとして、織物修正加工業の㈱アイ・アール・ジェイのほか、同社取締役会長や顧問社会保険労務士事務所の社労士など計5人を最低賃金法第4条(最低賃金の効力)違反の疑いで津島区検に書類送検した。同労基署によると、同会長は高齢を理由に時給を引き下げており、変更額は人によって異なる。最も低い者で時給650円。同社は3年前に技能実習生に関する同法違反で送検されている。

大学教授 講義に就労請求権認める――東京地裁

東京福祉大学で教授の地位にあった労働者が、平成28年の秋以降、同大学が講義を一切担当させなかったのを不服とした裁判で、東京地方裁判所(布施雄士裁判長)は労働者の就労請求権を認め、債務不履行による慰謝料など計106万円の支払いを命じた。雇用契約書に「最低でも週4コマ」という時間数の明記があり、同大学には講義を担当させる義務があったと判断している。一般に、労働は義務であり権利ではないとの考えから、就労請求権は認められない傾向にある。さらに使用者の就労を受領する具体的義務に踏み込み、債務不履行責任を認めた判決は初めてとみられる。

改正育介法対応 権利侵害行為を是正指導――厚労省・令和4年度行政運営方針

厚生労働省は令和4年度地方労働行政運営方針を作成した。多様な人材の活躍を促進するため、4月から段階的に施行されている改正育児介護休業法の周知と履行確保に重点的に取り組むとした。男性の育休取得促進を目的とした出生時育休(産後パパ育休)を労働者に取得させないなどの権利侵害行為や、育休取得を理由とした不利益取扱いが疑われる事案を把握した場合、事業主に対して報告徴収と是正指導を積極的に実施する。改正法に沿った企業の取組み事例集の活用も事業主に呼び掛けていく。

私立高校 教員8人に残業代払わず――大阪南労基署・送検

大阪南労働基準監督署(千葉卓克署長)は、私立高校の教員8人が行った部活指導などの時間外労働に対し、割増賃金の一部を支払わなかったとして、学校法人浪速学院と同法人役員を労働基準法第37条(割増賃金)違反の疑いで大阪地検に書類送検した。同法人は是正勧告を受けたことを契機に、それまでシステムで管理していた勤怠確認に自己申告制を導入し、部活の指導を「業務外」と扱うなどして、教員からの残業申請を却下していた。

コロナ理由の団交拒否認めず――中労委

中央労働委員会第3部会(畠山稔部会長)は、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言を理由に団体交渉を拒み、書面による回答を続けた㈱小西生コン(愛知県名古屋市)の対応について、初審命令に続き不当労働行為に当たると認定した。義務的団交事項にかかる団交は労使が同席、相対峙して協議、交渉を行うことが原則とし、組合側が感染対策に配慮した開催時期・方法を提案していたことも踏まえ、直接話し合う方式を採ることが困難な特段の事情はなかったと判断している。

意思表示の錯誤無効認める――東京地裁

警備業大手のテイケイ㈱で働いていた労働者が退職強要を受けたと訴えた裁判で、東京地方裁判所(戸室壮太郎裁判官)は退職の意思表示の錯誤無効を認め、労働契約上の地位確認とバックペイ支払いを命じた。判決によると、同社は令和元年5月9日の終業後に労働者をホテルに連れて行き、遅刻を申告せずその分の賃金を受け取っていたのは詐欺罪に当たるとの虚偽説明をし、「去る者追わずっていうのはある」などと告げた。同地裁は、労働者は退職届を書かなければ警察に連れて行かれると誤信していたと指摘。意思表示は錯誤に基づくものとして、無効と判断した。

23年度から720時間以内に――日建連

大手ゼネコンらで構成する日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、2024年4月から建設業にも適用される時間外労働の上限規制に向け、「時間外労働削減ガイドライン」を策定し、17年に掲げていた自主規制目標の計画を前倒しした。全会員企業に対して、23年度から年720時間以内などの法令に適応するよう求める。実態調査では労働時間の削減状況が伸び悩んでおり、20年度調査では従業員の約11%、1万3363人が年720時間を超えていた。現場で監督業務に当たっている者がめだち、会社へ戻ってから行う事務作業が労働時間増加の原因とみている。

企業規模要件 1年のうち6カ月で判断――厚労省・社保適用拡大の取扱い

厚生労働省は、今年10月に施行される短時間労働者への健康保険・厚生年金保険の適用拡大について、日本年金機構に事務の取扱い上の留意点を通知するとともに、取扱いに関するQ&Aを明らかにした。今回の適用拡大では、短時間労働者の社会保険加入の企業規模要件を「常時100人超」に引き下げる。同通知などでは「常時100人超」について、同一法人事業所における厚生年金保険被保険者の総数が、1年間のうち6カ月以上100人を超えることが見込まれる場合を指すとした。

産保センターと連携推進――協会けんぽ

主に中小企業が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)は令和4年度の事業計画を決定した。メンタルヘルス予防対策を強化するため、都道府県支部が産業保健総合支援センターと連携して、企業の健康経営を後押しする取組みを新たに始める。背景には精神疾患による傷病手当金の支給増加がある。2年度に支給した傷病手当金は約3分の1が精神疾患を理由としていた。都道府県ごとの特性を踏まえた保健事業も実施する。埼玉では企業の福利厚生の担当者を対象としたセミナーを開く。

第265話「20から30代、夫のキャリア優先」

「自分のキャリアより夫のキャリアを優先する」2000年以降に成人したミレニアム世代において、子供をもつ女性の過半数がそう考えていることが、21世紀職業財団の調査で分かった。

調査は、本人・配偶者とも26歳から40歳の正社員で子供がいる男性1912人、女性2194人の回答を分析。 

夫婦の目指すキャリアタイプを聞いたところ、女性は「配偶者のキャリアを優先する」が55.2%と最も多く、「夫婦でお互いキャリアアップを目指す」が28.1%と続いた。
一方、男性は「お互い」が41.4%と最多で、「自分のキャリアを優先する」は28.3%で2番目だった。

女性では、自分の状況が「マミ-トラック」(仕事の難易度や責任の度合いが低くキャリアの展望もない)に該当する、とした人も46.6%に及んだ。
この点から、夫婦共にキャリアアップするためには、マミ-トラックに陥らせない仕組みや、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)に関する研修などが有効としている。

以上

事務課長ピークは61万円――人事院 民間給与の実態(令和3年確報)

人事院の令和3年職種別民間給与実態調査によると、課長クラスの所定内給与のピークは、事務系で52~56歳61.2万円、技術系では同59.7万円だった。大卒新卒者を含む係員20~24歳の水準と比較すると、それぞれ2.75倍、2.71倍となっている。定年後再雇用者の所定内給与は、係員で26.1万円だった。役職者については課長43.7万円、部長54.1万円などとなっており、定年前人材のピークの水準とは25%程度の差が付いている。昨年のベースアップの実施率は、係員で23.5%、課長で19.2%だった。

時間外労働 8人が月120時間超に――金沢労基署

石川・金沢労働基準監督署(野田宏署長)は、労働者8人に対して特別条項付きの36協定の限度時間を超える時間外労働を行わせたとして、道路貨物運送業の㈱アペックス(同県金沢市)と同社代表取締役ら3人を労働基準法第32条(労働時間)違反の疑いで金沢地検に書類送検した。確認した時間外労働は1カ月で1人120~185時間。同労基署によると、同社では長時間労働が常態化しており、1年以上指導を続けたが是正されなかった。

休息時間 11時間以上を努力義務に――労政審バス・ハイタク作業部会報告

厚生労働省・労働政策審議会のバスおよびハイヤー・タクシー作業部会はそれぞれ、自動車運転者の労働時間等改善基準の見直しに関する報告をまとめた。バス運転者とタクシー運転者(日勤)ともに、現行基準において継続8時間以上と定めている1日の休息時間について、9時間を下限に設定するとともに、11時間以上を努力義務にするのが適当とした。原則13時間以内・最大16時間としていた1日の拘束時間は、原則13時間以内・最大15時間に見直すとした。

社会福祉施設 2割が休憩時間確保せず――彦根労基署

滋賀・彦根労働基準監督署(枡谷佳幸署長)が管内の社会福祉施設全387事業場に求めた自主点検の結果によると、休憩時間を確保していない事業場が約2割に上ることが分かった。理由として「施設利用者の状況に左右されるため」と答えた事業場が約8割を占めている。安全衛生面を尋ねた項目からは、利用者サービスに関するヒヤリハット活動のみ実施している事業場が、全体の3割を占める実態も浮かび上がった。同労基署は、利用者に重点が置かれ、労働者への対策が不十分なことを問題視し、広く注意を呼び掛けている。

就業規則の周知を否定――東京高裁

派遣会社でトラック運転者として働いていた労働者2人が未払い残業代の支払いなどを求めた裁判で、東京高等裁判所(石井浩裁判長)は「運行時間外手当」などを固定残業代と認めた一審判決を変更し、同社に計380万円の支払いを命じた。手当は就業規則で残業への対価と明示されていたが、周知が図られておらず、労働契約の内容にならないと指摘。通常の労働時間の賃金に当たるため、残業代が支払われていないと判断した。同社は就業規則を額縁に入れ掲示していたと主張したが、同高裁は「かなりの厚さ(45枚)のあるものを額縁で掲げるのは不自然」と退けている。

雇調金不正受給 261件32億円超える――厚労省

厚生労働省の集計によると、新型コロナウイルス感染症の拡大によって特例的に手厚い措置で雇用を支えてきた雇用調整助成金などの不正受給が、令和3年末までに261件、32億円超に達していることが分かった。雇用関係がない者を雇用関係があるように装ったり、休業していないのに休業を行ったように見せ掛けたケースなどが典型的。最近の特徴として、不正受給を扱う一般報道を見た従業員などからの通報が増加していることや不正事案の複雑化・巧妙化による調査の長期化などが指摘されている。

小規模・男性でピーク587万円――国税庁 民間給与実態(令和2年細部集計)

国税庁の民間給与実態(令和2年分)によると、従業員30~99人の小規模事業所に勤務する男性の平均年間給与は、586.7万円がピークだった。中規模の500~999人においては1.21倍の711.8万円、大規模の5000人以上では1.49倍の874.2万円となっている。20~24歳の水準に対するピーク時の指数は、小規模が209、中規模が230、大規模が356で、賃金カーブにも規模間格差がみられた。資本金2000万円未満の株式会社における平均年間給与は、男性・正規が424.9万円、女性・非正規が137.1万円だった。

無効な36協定で違法残業――岩国労基署・送検

山口・岩国労働基準監督署(赤尾裕一郎署長)は、ベトナム人技能実習生2人に違法な時間外・休日労働を行わせたとして、縫製業のY・M㈱(山口県岩国市)と同社の労務管理責任者を、労働基準法第32条(労働時間)と第35条(休日)違反の疑いで山口地検岩国支部に書類送検した。時間外・休日労働は最長の実習生で月135時間に上り、そのうち15時間が2日間の休日労働による。同社から36協定の届出はあったが、内容を理解していない実習生を一方的に過半数代表に選んでおり、無効と判断した。

無期雇用転換権利 使用者に明示義務化――厚労省改正案

厚生労働省は、多様化する労働契約のルールに関する検討会(座長・山川隆一東京大学大学院教授)の報告書(たたき台)を明らかにした。労働契約法第18条規定の無期転換ルール見直し案を示している。要件を満たす労働者に対して、無期転換申込機会の通知を使用者に義務付けるべきであるとした。無期転換申込権発生前の雇止めを抑制する方策として、労働契約の更新上限を新たに設ける場合、その理由の説明を使用者に義務付けるなどとしている。

JAM ベア要求4700円に

各産業別労働組合が統一要求日を迎え、昨年を上回る賃上げ要求の状況が明らかになってきた。機械・金属の中小労組が8割を占めるJAMでは、平均要求額が8635円(3・39%)となり、同一組合による比較で前年を840円上回っている。ベア等の改善分は規模計で4647円、100人未満に限れば4969円で、中小が大手を上回る傾向が続いている。流通、サービス関係の労組が加盟するUAゼンセンでは、平均要求額が8855円(3・25%)となり、前年比では731円上回った。短時間労働者の要求は、時給ベースで37・0円(3・69%)となっている。

運送業 拘束時間短く偽り送検――魚津労基署

富山・魚津労働基準監督署(岡利光署長)は、運転者の拘束時間などの記録を求めた際、虚偽の運転日報を提出した運送業者を富山地検に書類送検した。運転者35人の2カ月分の日報で荷積作業時間などを偽り、実際の拘束時間より合計2047時間38分短く記載していた。改善基準告示違反により地方運輸局から営業停止などの処分が下されるのを恐れ、告示が定める1日13時間、月293時間の限度を超えないよう、事務員ら他の労働者が乗務したとみせかけるなどしていた。

カスハラ 行為態様別に対処策――厚労省

厚生労働省は、カスタマーハラスメント対策企業マニュアルを作成した。顧客などからの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求といった著しい迷惑行為に、事業主がどう対応すべきかを提示している。事業主の基本方針・基本姿勢の明確化と従業員への周知・啓発、従業員(被害者)のための相談体制整備、実際にカスハラが発生した場合の対処方法などをあらかじめ定めておく必要があるとした。時間拘束型、リピート型、暴言型などカスハラの態様別対処方法も明記している。

高卒就活の併願可能に――大阪府・大阪労働局など

大阪府は令和5年3月新規高卒者の就職活動について、今年9月5日の応募開始日から1人2社まで併願できるようにする。大阪労働局などと検討会議を開いて申し合わせた。高卒採用の1次募集は、全国的に「1人1社制」が慣例で、複数社に応募できるのは10月以降のいわゆる2次募集からのみ。応募開始日から併願可能なのは秋田・沖縄・和歌山の3県に留まっていた。こうした慣例は、高卒者の早期離職率が大卒者に比べて高い要因として指摘されていることなどから、同府は見直しを検討していた。

年休時季指定 始期・終期は明確性必要――東京地裁

建材などを扱う商社で働いていた労働者が、年次有給休暇の取得を不当に拒否された結果、休職期間が短くなり自然退職になったと訴えた裁判で、東京地方裁判所(小野瀬昭裁判官)は労働者の請求を全面棄却し、休職期間満了による退職を有効と判断した。労働者は休職前に年休消化を申し出ており、取得が認められていれば休職期間が伸びていたと主張したが、同地裁は年休の時季指定は「始期・終期が明確であることが必要」と指摘。労働者の申し出は「3日からは年休をいただき、その後は病欠でお願いします」というもので、終期の明確性を欠くと評価した。

デジタル人材 年間1万人を確保・育成――東京都・能力開発計画案

東京都は、令和3~7年度を対象とする第11次職業能力開発計画案をまとめた。デジタル社会を担う人材の計画的な確保・育成を重点施策に掲げ、年間1万人のデジタル人材の確保・育成を図るとした。若者・女性などを対象とした職業訓練を強化するほか、中小企業が行う従業員のリスキリング(再開発)に対する支援などを展開していく。中小企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の課題把握から、リスキリング方針の策定、講習の実施などについて一体的な伴走型支援を新たに開始する。

第264話「23年卒の採用見通し」

リクル-トが発表した2023年新卒者の採用に関する調査で、大学生・大学院生の採用が22年卒に比べて「増える」と答えた企業が10.3%で、「減る」の3.9%を上回った。
22年卒の調査では「減る」が11.6%と「増える」7.7%を上回っていた。

23年卒の採用を業種別で見ると、飲食店・宿泊業は「増える」の回答が「減る」を14ポイント上回った。
22年卒の調査では「減る」が「増える」を15.7ポイント上回っており、コロナ禍で採用を抑制していた反動が大きいと言える。

他にも情報通信業で10.9ポイント、機械器具製造業で10.6ポイントそれぞれ「増える」が「減る」を上回った。

従業員規模別では500人以上の企業で「増える」が21.4%、100人未満で8.5%となり、いずれも「減る」を上回った。
特に大企業での採用意欲が回復している傾向が見られた。

また、採用戦略として初任給の引き上げ実施、もしくは予定しているかでは「既に取り組んでいる」が21.8%、「今後取り組む予定である」が22.7%だった。
業種別では、建設業と小売業で「既に取り組んでいる」「今後取り組む予定だ」と回答した割合が、それぞれ52.4%、52.9%と多かった。

人手不足に対して初任給などの待遇の改善で対応する動きが高まっていることがうかがえた。

以上

割増不払いで社長逮捕――十和田労基署

青森・十和田労働基準監督署(山脇雅史署長)は、労働者9人の時間外労働に対する割増賃金の一部約500万円を期日に支払わなかったとして、同県東北町の東北みやげ煎餅㈱と㈲エハタの代表取締役社長を兼任する男を労働基準法第37条(割増賃金)違反の疑いで逮捕し、青森地検八戸支部に身柄送検した。青森労働局によると、管内での逮捕事案は約30年ぶり。同労基署の調査に対して虚偽の賃金台帳を提出するなど、証拠隠滅の恐れがあったため逮捕に踏み切った。法人としての両社は書類送検した。

格差は1.5%に広がる――協会けんぽ

全国健康保険協会(協会けんぽ)は令和4年度の都道府県別の保険料率を決めた(表)。料率が最も高い佐賀と最も低い新潟の差は1・49%と、今年度の1・18%から拡大した。都道府県ごとの料率は2年度前の1人当たり医療費の実績などをもとに算定している。令和2年度は4~5月にかけた新型コロナウイルスの1度目の緊急事態宣言により、都市部を中心に医療機関の「受診控え」が続出し、医療給付に大きな影響を与えた。その結果、1都3県などで料率がマイナスになったとみられる。

奨学金返還費用を助成――東京都

東京都は、中小企業の人材確保を支援するため、奨学金の貸与を受けている学生を技術者として採用した際に、企業と東京都が協力して奨学金返還費用の一部を助成する新事業を開始する。建設、IT、ものづくり分野の中小企業が対象で、都に登録済みの学生を採用した場合、企業の負担額と同額を東京都が負担する。企業が負担するのは3年間で、負担額は年間5万円、12万円、25万円の3つから選択する。

専任講師の雇止め無効――東京地裁

東京福祉大学と有期労働契約を締結し、専任講師として働いていた労働者が雇止めを不服とした裁判で、東京地方裁判所(三木素子裁判長)は雇止めを無効と判断し、バックペイ支払いなどを命じた。同大学は譴責処分などが理由と主張したが、同地裁は処分後に1度契約を更新している点を指摘。雇止めに客観的・合理的な理由がないとした。一方、労働者の無期転換については、専任講師には教員任期法の特例が適用されると評価し認めなかった。同法は大学教員の無期転換申込権が発生するまでの期間を10年超と定めている。

男性の育児休業取得推進 奨励金支給数を2倍に――東京都

東京都は来年度、男性の育児休業取得促進の取組みを強化する。男性労働者に育休を取得させた企業に最大320万円の奨励金を支給する「働くパパママ育休取得応援事業(働くパパコース)」について、支援数を前年度の400社から750社へと大幅に増やす方針だ。分割取得時も支給対象とし、通算して15日間を取得させた場合に25万円を支給、以降15日ごとに25万円を加算する。経済団体と連携し、経営者への意識啓発キャンペーンも展開していく。

一人親方も保護対象に――厚労省

厚生労働省は、事業者の各種措置義務を定めた労働安全衛生法第22条の規定を、労働者と同じ場所で働く労働者以外の者(一人親方など)も含めて保護対象とするため、同条に基づく11の省令を改正する。事業者の指揮命令関係にない一人親方など請負人の安全衛生の確保を狙ったもの。省令に定めた特定の作業方法の遵守や保護具の使用の必要性などについて、新たに周知義務などを設ける方針である。昨年5月の最高裁判所判決に沿った見直しとした。

処遇維持して65歳定年へ――TOTO

TOTO㈱(福岡県北九州市、清田徳明社長)は今年10月、国内のグループ会社10社を含めて65歳定年への段階的な移行を開始する。直前の9月末までに60歳を迎える世代を61歳定年とするのを皮切りに、今後5年間かけて毎年1歳ずつ定年年齢を伸ばす。一般社員層では60歳到達後も処遇水準を維持し、減額措置は採らない。管理職層については同時に人事制度を改め、新たにグループ共通の役割等級へ一本化する。ライン長などの職位に留まれるのは最長60歳までとし、役割等級に合わせて処遇していく。

育介法25条 制度の利用対象者に適用――東京高裁

子育てを理由に配転時期の配慮を申し出た労働者が、その後に行われた降格処分は育児介護休業法が禁止する相談を理由とした不利益取扱いに当たると訴えた裁判で、東京高等裁判所(中山孝雄裁判長)は同法第25条は育児休業などの制度の利用にかかる言動の相談が対象で、制度の取得要件を満たさない労働者は対象外と判断した。労働者は配慮を求めたところ、上司から「行く気がないんだな」と面談を打ち切られ、降格処分に遭ったと主張していたが、同高裁は、面談は相談に当たらず、上司の言動も同法に違反しないと退けている。労働者の控訴はすべて棄却となった。

労働契約更新上限 労使合意で設定を――厚労省検討会

厚生労働省は、労働契約法第18条の無期転換ルール適用を回避するための雇止めが労使紛争に発展するケースが少なくないとして、使用者に労働契約更新上限の有無など労働条件明示の義務付けを検討していることが分かった。とくに、契約更新時に更新上限を新たに設ける場合、労使双方が納得の上で合意することを促すとしている。無期転換申込権が発生した労働者に対して申込機会の発生通知とともに権利行使の意向確認を使用者の義務とすることも課題としている。

テレワ-ク新入社員への影響4割

就職情報サ-ビスの学情が企業の採用担当者に実施した調査によると、テレワ-クを実施している企業に入社1年目の社員の活躍について尋ねると、「影響がある」「どちらかと言えばある」が計43.7%あった。「影響がない」は4.8%、「どちらかと言えばない」は14.3%だった。

影響があると回答した人に具体的な影響(複数回答)を聞いたところ、「上司や先輩との人間関係が築けていない」が74.3%で最多だった。
次いで「同期間での人間関係が築けていない」が55.4%とテレワ-クが社内の人間関係の構築に響いていると考えている人が多いと言える。

一方で「スキルの習得や自己学習に取り組む社員が増えた」14.9%、「自分から質問するなど自走できる社員が増えた」6.9%など、テレワ-クで自ら行動できる社員が育ったと前向きに評価する声も上がった。

若手社員がテレワ-クをするときに課題となる点(複数回答)では、「モチベ-ションの状態をつかみにくい」が65.4%で最も多かった。
また、「作業の進捗状況や成果の把握が難しい」が55.2%などもあり、テレワ-ク時のコミュニケ-ションの充実が引き続き課題と言える。

以上

総合職・標準者賃金 大卒35歳で38.4万円――経団連・東京経協 21年6月度定期賃金調査

経団連と東京経営者協会が実施した「2021年6月度定期賃金調査」によると、総合職・大学卒のモデル賃金は22歳22.3万円、35歳38.4万円、45歳53.0万円などとなり、ピークを迎える55歳は61.1万円だった。50歳が3.4%増などとベテラン層では伸びた一方、若年層の伸び率は1%前後に留まっている。22歳に対するピーク時の倍率は2.74倍となった。役職者賃金は、部長が1.8%増の72.0万円、課長が0.5%増の54.4万円、係長が0.6%減の41.1万円などとなっている。

日数、時間数の合意を――厚労省

厚生労働省は、需要の繁閑へ対応したシフト制労働者が拡大しているとして、適切な雇用管理に向けた「留意事項」を明らかにした。シフト勤務開始前に提示するシフト表により労働日、労働時間などの変更を使用者または労働者が申し出る場合の期限・手続きや、一定のシフト勤務期間において労働する可能性がある最大の日数、時間数、時間帯を労働者と使用者で話し合い、あらかじめ合意することが望まれるとした。ほとんどの労働日などが使用者の都合により設定されており、労働紛争に発展することがあると指摘している。

船舶所有者 「健康検査」活用を徹底――国交省・船員法施行規則改正省令案

国土交通省は、船舶所有者による船員の健康確保対策を盛り込んだ船員法施行規則等改正省令案を明らかにした。昨年10月にまとめた省令案に修正を加えたもので、船員がおおむね1年に1回受けている「健康検査」を通じた健康管理制度を創設するとしている。船舶所有者に対し、常時使用する船員が同検査を受けた際、船員から医師の診断書を提出させるよう義務付ける。検査結果が有所見だった場合は医師から意見を聴取し、必要に応じて就業場所の変更などを行う。施行予定は令和5年4月1日。

14階層から5階層に簡素化――フラクタ

企業のブランド戦略のコンサルティング業務を行う㈱フラクタ(東京都渋谷区、河野貴伸代表取締役CEO)は、全社員を5階層に格付ける新人事制度を導入した。単線型・14階層としていた旧制度を廃止し、よりシンプルな体系を整備して再格付けしている。評価制度については業績貢献度、組織貢献度、行動面を採点する3つの仕組みを併用し、総合評価を昇格、昇給、賞与決定に反映することとした。6つの要素を採点する行動評価は、創設からの8年間で築いてきた企業文化を凝縮してつくり込んでいる。報酬面では、賞与に大きなメリハリを利かせ、最高評価を取れば標準額の2倍を支給する設計とした。

CAの無期転換認める――東京地裁

KLMオランダ航空で客室乗務員として働く有期契約労働者3人が、同社が無期転換を認めず雇止めにしたのは違法と訴えた裁判で、東京地方裁判所(三木素子裁判長)は3人の無期労働契約上の地位を確認する判決を下した。3人は約2カ月の訓練後、平成26年5月に有期労働契約を結び、1回の更新を経て令和元年1月に無期転換を申し込んだが、訓練は労働契約に当たらず、通算期間は5年を超えていないとして拒否、雇止めになっていた。同地裁は訓練には時間・場所的拘束や指揮監督下での労務提供があったと指摘。労働契約に該当するとして、無期転換を認めた。

企業白書提言 労働法制と行政の見直しを――同友会

経済同友会(櫻田謙悟代表幹事)は、「人間及び人間社会の本質的欲求と企業経営」をタイトルとした第18回企業白書をまとめ、価値創造人材の活躍を促すための労働法制の見直しを敢行すべきと提言した。自律的な働き方が可能となるように、旧来の画一的な働き方や所定の場所・時間に従事することを前提とする労働法制および労働行政を抜本的に見直す必要があると主張している。既存の「裁量労働制」「高度プロフェッショナル制度」も一定の労働時間管理を前提にしたものとして批判的である。

都内中小のモデル賃金 大卒35歳で30.0万円に――東京都 中小企業の賃金事情

東京都の「中小企業の賃金事情」調査によると、大学卒のモデル賃金は、22歳21.2万円から35歳30.0万円、45歳36.0万円と高まり、ピーク時60歳は41.9万円だった。前年比で改善したのは、22歳および25歳のみで、30歳以上はいずれもダウンしている。初任時に対するピーク時の倍率は、大学卒が1.98倍、高校卒が1.99倍で、ともに2倍を下回った。役付手当の支給状況も調べており、同一役職に同額を支給しているケースでは、部長が8.7万円、課長が5.6万円、係長が2.6万円となった。

非管理職への降格有効――東京地裁

㈱日立製作所(東京都千代田区、小島啓二代表執行役)で働く労働者が管理職から非管理職への降格などを不服と訴えた裁判で、東京地方裁判所(佐藤卓裁判官)は降格を有効と判断し、労働者の請求を全面的に棄却した。約2年間にわたって売上げをまったく上げておらず、管理職に期待される役割を果たしていないとして、降格には業務上の必要性があったと評価している。同社は平成26年10月に管理職の職能資格等級を廃止し、職務遂行能力の高さから、役割や職務の大きさに着目する制度への移行を図っていた。

10月に0・6%へ引上げ――厚労省

厚生労働省はこのほど、雇用保険料率の改定について方針を決定した。新型コロナウイルス感染症の経済への影響が残っているとして、失業等給付にかかわる保険料率は令和4年4~9月まで現行の1000分の2を維持するが、同年10月~5年3月までは1000分の6に引き上げる方向である。雇用調整助成金などの大規模支給により雇用保険財政が「過去に例を見ない危機的状況」にあるものの、労使の負担感も踏まえて激変緩和措置を採ったとしている。労働政策審議会の雇用保険部会(守島基博部会長)が、報告書をまとめた。

家族手当 5割が正社員にのみ支給――栃木労働局・同一労働同一賃金

栃木労働局(藤浪竜哉局長)は、昨年4月にパート・有期雇用労働法の同一労働同一賃金規定が中小企業にも適用されたことを受け、管内企業562社に対して実態調査を実施し、結果を取りまとめた。各種手当のうち、家族手当を正社員にのみ支給する企業が5割を超えることが明らかになったのに対し、「同じ業務と認められない限りは、手当の支給について助言することは難しい」とした。対応状況については6割が完了したとする一方、「内容が分かりづらい」との課題を挙げる企業が少なくないことを懸念している。今後は説明会の開催回数を増やし、個別支援を強化する。

無期転換特例 非常勤講師は対象外――東京地裁

科学技術・イノベーション活性化法が定める無期転換申込権の特例に関して、大学の非常勤講師が対象になるかが争われた裁判で、東京地方裁判所(伊藤由紀子裁判長)は特例の対象外と判断し、無期転換を認める判決を下した。裁判は専修大学で語学を担当する非常勤講師が起こしたもの。同法は大学と有期労働契約を結ぶ「研究者」の無期転換申込権が発生する期間を5年超から10年超に伸ばしている。同地裁はこの研究者の要件について「研究開発業務に従事していることを要する」と指摘。授業のみを担当する非常勤講師に特例は適用されないとした。

テレワーク 「週3日、7割以上」に奨励金――東京都

東京都は、職場におけるテレワーク推進の中心的な役割を担う「テレワーク推進リーダー」設置制度を創設した。同リーダーを選任した中小企業が「週3日・社員の7割以上」のテレワークを1カ月間実施した場合、最高25万円の奨励金を支給する。同リーダーは、オンライン研修を受講する必要がある。新型コロナウイルス感染症の拡大防止と経済活動の両立に向けてテレワークの普及・定着を図るのが狙い。

リモ-トワ-ク 人事評価に課題

ビズリ-チが運営するHARMOS WorkTech研究所の調査によると、リモ-トワ-クを実施する企業の47%が「人事評価における問題が発生・拡大した」と回答した。
そのうち23%が「新たな問題が発生・既存の問題が拡大」、12%が「新たな問題のみ発生」と「既存の問題のみ拡大」だった。

発生した新たな問題として「チ-ムでのコミュニケ-ション状況を把握・評価できない」が66%で首位だった。
次いで「意欲や感情といった業務外の面の把握ができない」が57%、「勤務態度を直接把握・評価できない」が51%だった。
自由回答では「評価対象がプロセスから成果に偏りつつある」との声が上がった。

既存の問題拡大としては「評価者によって人事評価にバラツキがある」が48%と最も多く、「評価基準が曖昧」が46%、「適切なフィ-ドバツクができない」が44%と続いた。

適切な人事評価を実現するには働き方だけでなく、いかに従業員の状況を把握し、適切な評価ができるか考えることが重要で、引き続きリモ-トワ-クを実施する企業には従業員を適切に評価する仕組みが必須となりそうだ。

以上

転勤拒否者の懲戒解雇有効――大阪地裁

NECの子会社で働く労働者が、転居を伴う転勤の拒否を理由に懲戒解雇されたのは違法と訴えた裁判で、大阪地方裁判所(中山誠一裁判長)は懲戒解雇を有効と判断した。労働者は持病を抱える子供がいて転居は難しいと主張したが、同地裁は子供の通院は1カ月に1回程度で、配転をしたとしても対応可能な範囲内と指摘。通常甘受すべき程度を著しく超える不利益はないとして、配転命令は権利濫用に当たらないと評価した。命令に応じない事態を放置すれば企業秩序維持に支障が出るとして、懲戒解雇も有効としている。

カスハラ 安全配慮義務違反を認めず――横浜地裁川崎支部

NHKのコールセンターで働いていた労働者が、視聴者のわいせつ発言や暴言により精神的苦痛を受けたことなどを不服とした裁判で、横浜地方裁判所川崎支部(飯塚宏裁判長)は安全配慮義務違反の成立を認めず、労働者の請求を全面的に棄却した。わいせつな電話があった場合、上司に転送して良いルールになっており、心身の安全を確保していたと評価している。労働者は継続雇用拒否も争ったが、同地裁は電話対応時のルール違反が多数あり、注意・指導を聞き入れる意思がなかったと指摘。継続雇用拒否も有効と判断した。

改正育介法対応でQ&A 意向確認後も申出拒めず――厚労省

厚生労働省は、来年4月から順次施行される改正育児介護休業法に関するQ&Aをまとめた。改正法に基づき労働者に育休取得の意向を尋ねた際に「取得意向はない」と回答されたとしても、その後労働者から申出があった場合、事業主は取得を拒めないとしている。分割取得が可能な出生時育児休業(産後パパ育休)については、労働者が初回申出時に2回分をまとめて申し出ることを原則とした。まとめて申し出ない場合、2回目の取得は拒むことができる。

100人以上の改定額 246円減り4694円――厚労省 賃金引上げ等の実態調査

厚生労働省の「令和3年賃金引上げ等の実態に関する調査」によると、規模100人以上の企業における賃金改定額は1人平均4694円となり、前年結果を246円下回った。3年連続して前年を割り込んだが、減少幅は406円縮小している。改定率は、0.1ポイント減の1.6%だった。定昇制度を有する企業のうちベアを実施した企業は2割に満たず、管理職では15.1%、一般職では17.7%となっている。

口外禁止条項 当事者の合意が重要に――全労委総会

第76回全国労働委員会連絡協議会総会が11月18~19日にオンラインで開かれ、集団調整事件などのあっせんや不当労働行為事件審査の和解における口外禁止条項の取扱いについて、各労委公労使委員が議論した。労働審判において労働者の意向に反して同条項を付けたことを違法とした昨年12月の長崎地裁判決を踏まえたもの。労委からは、解決金の支払いがある紛争を中心に同条項を付けていることが報告された。同条項の内容にも様ざまなパターンがあることから、あっせん条項などに加える場合の留意点として、「当事者の意向を聞きながら合意を得ること」との意見が出た。

出生時育児休業 1週間前に労務課へ申出――厚労省

厚生労働省は、改正育児・介護休業法で新設した「出生時育児休業(産後パパ育休)」の規定例を明らかにした。労使協定の締結により一定の労働者を同休業制度から除外したり、休業中の労働者の就業を可能とする規定などを示した。労使協定により除外できるのは、「入社1年未満」や「1週間の所定労働日数が2日以下」の労働者などとした。休業中の就業については、1週間前までに人事部労務課に申出するよう求めながらも、休業前日までは提出を受け付けるとしている。

新しい資本主義 フリーランス保護法制定へ――政府

政府の新しい資本主義実現会議(議長・岸田文雄内閣総理大臣)はこのほど、「緊急提言」をまとめ、新たなフリーランス保護法制の早期国会提出を明記した。事業者がフリーランスと契約する際の契約や禁止行為の明確化などを行うとしている。最低賃金については、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均1000円をめざす。賃上げに積極的な企業への税制措置は、非正規雇用を含めて全雇用者の給与総額の増加を対象とする。

労働費用総額40.8万円に――就労条件総合調査

厚生労働省の「令和3年就労条件総合調査」によると、常用労働者1人1カ月平均の労働費用総額は40.8万円で、そのうち現金給与額が33.5万円を占め、現金給与以外の労働費用は7.3万円だった。法定福利費は5万283円、法定外福利費は4882円で、5年前の前回調査と比較して順に5.4%増、25.2%減となっている。法定外福利費については、企業規模30~99人に限って増加しており、13.7%アップした。このうち、食事に関する費用は1.8倍増えている。

目標水準35歳28.9万円に――連合

連合は11月18日、中央執行委員会を開き、規模間格差是正に向けた目標水準を昨年より2~3千円高い35歳28・9万円、30歳25・9万円などとする2022春闘方針案を確認した。すべての組合が月例賃金の改善にこだわり、「2%程度」を目安に賃上げ(ベースアップ)に取り組む一方で、規模間・雇用形態間・男女間などの格差是正の流れを加速させるとしている。新たに企業内最低賃金の目安を50円アップの時給1150円以上としたことに伴い、各種の要求指標を引き上げた。

過重労働防止へ改善事例集――松本労基署

長野・松本労働基準監督署(中川賢一署長)は、管内の事業場から長時間労働の改善策を収集し、事例集を作成した。過重労働解消キャンペーンに合わせて取りまとめたもので、強化する監督指導のなかで活用する。夕方以降に業務が集中するため出勤時刻を繰り下げたケースや、固定残業制をやめて残業代との差額を賞与に組み入れたケースなどを盛り込んだ。中小企業にも取り組みやすい対策を示すことで、指導に留まらず改善につながるフォローをしていく。

偽装請負 直接雇用成立を認める――大阪高裁

住宅建材の製造販売を営む東リ㈱と業務請負契約を締結していた会社の労働者5人が、労働契約申込みみなし制度に基づき直接雇用成立の確認を求めた裁判で、大阪高等裁判所(清水響裁判長)は5人の直接雇用成立を認め、バックペイ支払いを命じた。みなし制の適用を認めた判決は全国初とみられる。5人は東リ伊丹工場で建材の製造に従事していた。同高裁は東リが実質的に作業指示などを行っており、偽装請負に当たると指摘。「日常的・継続的に偽装請負を続けており、偽装請負の目的があった」として、労働契約成立を認定した。

リカレントガイドライン作成――厚労省

厚生労働省は、自律的・主体的なキャリア形成に向け、労働者・企業が取り組むべき事項や人材開発施策に係る諸制度を体系的に示した「リカレントガイドライン」(仮称)の作成に向けて検討に入った。従来型の正社員に対するOJT中心の人材育成システムが十分に機能しなくなるとともに、企業による人材投資が減少傾向にあることから、日本の労働生産性が低位に置かれているのが実態。キャリアコンサルタントの積極的活用により労働者の自律的・主体的な学習とキャリア形成を促す必要があるとした。

コロナ行動制限緩和後の出社率

日経新聞「社長100人アンケ-ト」によると、行動緩和後の出社比率について
57.3%の企業が「引き上げる」と回答し、「同じ」と回答した41.9%を上回った。出社日については「週2日」が27.6%と最多で、「週1日」が13.8%だった。出社を促す理由として最も多かったのは「従業員間のコミュニケ-ションを円滑にするため」が87.7%で、次いで「対面が欠かせない業務がある」が71.6%あった。

同アンケ-トでは
・在宅勤務の利用拡大により働き方の選択肢が広がった一方、コミュニケ-ションや育成、労務管理における新たな課題が生じた
・新入社員や異動者に対するメンタル面でのサポ-トを意識的に推進する必要性が生じた
・新たな働き方の実効性や有用性の向上に向けた検討や試行が重要となる
・対面やオンラインによるメリットを生かすハイブリットな働き方が定着する
などの指摘があった。

以上

上限規制 複数月平均違反で初送検――上田労基署

長野・上田労働基準監督署(森孝行署長)は、製造部門で働く労働者8人に上限規制を超えて違法な時間外労働を行わせたうえ、虚偽の帳簿を提出して隠ぺいを図ったとして、鋼材・鉄筋加工販売業者を長野地検上田支部に書類送検した。立件した今年3~8月の時間外労働は毎月100時間を超えており、中小企業に上限規制が適用された令和2年4月以降、複数月平均80時間以内の規制(労働基準法第36条6項3号)違反での送検は全国でも初めてとなる。

医師の時間外上限 原則年960時間に――厚労省

厚生労働省は令和6年4月に施行となる医師の時間外・休日労働の上限に関する省令案をまとめた。一般的な医業に従事する医師の上限を1カ月100時間未満かつ年960時間以下とする一方、地域医療の確保や技能向上のために上限を超えざるを得ないケースが想定されるとして、特例水準を設けている。特例水準は年1860時間を限度とするが、地域医療確保にかかる特例水準については、17年度末の廃止に向け、3年ごとの見直しを行っていくとした。

経団連提言 職種・業務で労働法制選択

経団連は、先行き不透明感が強く、将来予測が困難な時代にあっては、職種・業務に適合した「労働法制」を選択できる仕組みが重要とする提言を明らかにした。先ごろ開催した内閣府の規制改革推進会議に提出した。近年、労働時間と成果が連動しない業務が拡大していると同時に、労働生産性向上が求められているためで、具体的には企画業務型裁量労働制の対象業務の早期拡大を主張している。「裁量的にPDCAを回す業務」「課題解決型開発提案業務」の2つを対象業務に加えるよう指摘した。

2労基署が別件で同時送検――甲府労基署・岡谷労基署

山梨・甲府労働基準監督署(篠原敦署長)と長野・岡谷労働基準監督署(柴崎正彦署長)は、同じ建設業者をそれぞれ異なる労働安全衛生法違反の疑いで10月25日に書類送検した。山梨では代表取締役が自ら無資格の労働者に不整地運搬車の運転を指示し、発注者から告発された。長野では116日間の休業を要する労働災害が発生したにもかかわらず、労働者死傷病報告の提出を怠っている。各労基署は異なる端緒から個別に捜査へ着手したが、捜査を進めるなかで互いに同社を対象としていることを知り、同時に送検している。

女性活躍 職場での意識改革を徹底――都審議会

都知事の諮問機関である東京都男女平等参画審議会は、「東京都男女平等参画推進総合計画の改定に当たっての基本的考え方(中間のまとめ)」を取りまとめた。令和4~8年度を対象とする計画に盛り込むべき取組みに、時間や場所にとらわれない多様な働き方のさらなる普及・定着の後押しのほか、女性の職域拡大・登用促進、出産・育児などと両立できる職場環境の整備を挙げた。男女間の所得格差や女性管理職比率の低さの背景には、固定的性別役割分担意識の存在があるとみて、企業における意識改革に向けた啓発に取り組むとした。

タクシーの拘束時間288時間に――厚労省・改善基準告示

厚生労働省は、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を大幅に見直す方針である。ハイヤー・タクシーの日勤の拘束時間は、現行1カ月299時間から288時間に11時間短縮、バスでは、現行4週平均で1週65時間を1カ月について年3300時間を超えない範囲で281時間などとする方向である。自動車運転業務については、時間外上限規制適用猶予後の上限時間を休日を含まず年最大960時間としているが、早期に一般則に移行できるよう協議を加速すべきとされている。

JOB型人事制度への期待

日経BP総合研究所の調査によると、JOB型人事制度にどんな期待をしているかで
最も多かったのは「専門性をより高めやすい」で62.7%あった。次いで「年功より
も能力やスキルに応じた登用が進みやすい」44.9%、「高度な専門能力を持つ人材の
厚遇につながる」44.5%だった。上位3大理由からは、ビジネスパ-ソンが専門性
を重視している様子が浮かび上がる。
その他では、「職務や成果に応じた人事評価制度の方が意欲を高めやすい」「テレワ
-クの普及に伴って求められる自律性をベ-スとする制度と適している」「年次(若さ)
などを理由に本業以外の雑務を任されることが減る」「自社の人材獲得力を高める上
で欠かせない職種別採用や職種別賃金と親和性がある」といったJOB型人事制度の
特性を期待としていることがわかった。

雇止めを不当労働行為認定――大阪労委

大阪府労働委員会(宮崎裕二会長)は、学童保育クラブで指導員として働く組合員らを雇止めし、撤回などを求める団体交渉にも応じなかったとして、㈱共立メンテナンス(東京都千代田区)を不当労働行為と認定した。組合員10人の職場復帰とバックペイの支払い、団交へ応じることを命じている。同社は大阪府守口市から学童保育の業務委託を受けた際、同市に雇用され指導員として3~36年間勤務してきた組合員らを同じ職務で有期雇用していた。雇用時の説明会では給与水準を保つ現給保障について説明するなど、市営時代の実績を引き継ぐ姿勢を示していた。

キャバクラ女性従業員 労働者性を認める――さいたま地裁

埼玉県内のキャバクラ店で働いていた女性従業員が残業代など1100万円の支払いを運営会社に求めた裁判で、さいたま地方裁判所による関与和解が成立していたことが分かった。女性従業員の代理人らがこのほど記者会見で明かした。和解は両者間の契約が労働契約であったと認め、運営会社が解決金を支払う内容。解決金の額は非公表となっている。代理人によると、今年4月頃に同地裁から労働者性について肯定的な心証が示され、和解に向けた協議が始まったという。

雇用保険制度 マルチ高年齢被保険者新設――厚労省

厚生労働省は、令和4年1月1日から65歳以上の高年齢労働者を対象とした「雇用保険マルチジョブホルダー制度」を新設する。複数の事業所で勤務する65歳以上の高年齢労働者が、2つの事業所での勤務を合計して一定の要件を満たす場合に特例的に雇用保険被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる。マルチ高年齢被保険者として雇用保険の適用を希望する者が加入要件に該当する場合、事業主は必ずこれに対応しなければならないとした。

建設技能労働者 4割で賃上げ2%以上――全建

地方のゼネコンを中心に1・9万社の会員を抱える全国建設業協会(奥村太加典会長)が実施した調査で、技能労働者の賃金を2%以上引き上げた(引き上げる)企業の割合は42・1%となった。回答企業の6割弱が下請との契約で労務単価の引上げを実施しており、うち41・2%では下請でも2%以上の賃上げがあったとしている。今年3月、国土交通省と建設4団体の間では、「概ね2%以上の賃金上昇をめざす」との申合せをしていた。同調査では3社に1社が、既に「取り組んでいる」としている。

公立校教員 残業代請求を全面棄却――さいたま地裁

埼玉県内の公立小学校で働く教員が、同県に240万円の残業代支払いなどを求めた裁判で、さいたま地方裁判所(石垣陽介裁判長)は教員の請求を全面的に棄却した。固定残業代として月給の4%を支払うと定めた給特法で、労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)の適用は明確に排除されていると判断している。一方、給特法は労基法第32条(労働時間)の適用は除外していないとして、長時間労働が常態化している場合は、国家賠償法上の違法が認められるとした。

雇用シェア 7カ月で7382人に――厚労省・届出状況まとめる

厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症対策として今年2月に創設した産業雇用安定助成金の利用状況を明らかにした。出向計画届出状況によると、約7カ月が経過した9月時点までに出向労働者数7382人に達した。出向元事業所数は689社、出向先事業所数は1156社だった。出向元事業所の約8割は、雇用調整助成金を受給中。厚労省では、休業と在籍型出向(雇用シェア)を併用し、雇用維持を図っている状態にあり、選択肢の一つとして取り組む事業主が増えているとした。

労災防止へ専門家無料派遣――神奈川産保センター

神奈川産業保健総合支援センター(渡辺哲所長)は、転倒・腰痛災害ゼロをめざす企業に専門家を無料で派遣するサービスを全国で初めて開始した。加齢に伴う身体機能の低下が災害発生要因の一つになっているとみて、各事業場に適した健康保持増進計画の作成を支援する。従業員の健康づくりを通じて加齢による災害発生を防ぐ考えだ。神奈川県内では転倒災害が多発しており、50歳以上の労働者が被災するケースがめだっている。

再教育でDX人材育成――内閣官房

政府の内閣官房は令和4年度、転職支援につながるリカレント教育やDX(デジタルトランスフォーメーション)投資促進事業を新たに立ち上げて、就職氷河期世代支援対策を強化する方針である。リカレント教育では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた就業者、失業者・非正規雇用労働者に加え、希望する就職ができない若者に対して、大学・専門学校を拠点とした就職・転職につながるプログラムを提供する。DX投資促進により1000人のデジタル人材を育成する狙い。

アジャイル型開発 派遣・請負の要件明確化――厚労省

厚生労働省はアジャイル型開発について、発注者と受注者が対等な関係の下で協働し、受注者側の開発関係者が自律的に判断して業務を遂行していれば、労働者派遣に当たらないとする考えを明らかにした。アジャイル型開発は、開発要件の全体を決めずに開発を始め、リリースと開発を繰り返しながら機能を追加していく手法。発注者と受注者がチームを作り、意思疎通を図りながら開発を進めていくが、意思疎通が指揮命令に当たると判断される法的リスクがあり、導入のネックになっていた。

JOB型雇用で下剋上狙う若手

日経BP総合研究所の調査によると、JOB型賛成派の割合は39歳以下で76.3%
と高く、40歳代で64.6%、50歳代では46.8%と低下し、ベテランほど人事
制度の刷新に消極的な様子が浮き彫りになった。
ゼネラリストで長年やってきたのに専門性と言われても、という戸惑いが
感じられる。

60代では、今の管理職の大半が職を失うとの回答があった。雇用のル-ルが
変わると、自身がお払い箱になってしまうのではないか、このように心配
するベテランの本音がにじむ。

若い頃は年功序列のル-ルに基づき耐えてきたのに、ベテランに
なってから実力主義に変わったら、今後どうしていいのか。
自身にとっての「制度改悪」に戸惑うケ-スも少なくないのでは
ないだろうか。

企業は若手の期待に応えつつ、ベテラン勢の不安を払しょくする舵取りも
求められる。

以上

アイドルに労働者性認めず――東京地裁

「農業アイドル」として活動していた女性の遺族が、報酬が最低賃金を下回っていると主張し、約8万円の支払いをマネジメント会社に求めた裁判で、東京地方裁判所(佐藤卓裁判官)は女性の労働者性を認めない判決を下した。女性はアイドル活動の一環として、地元の特産物を販売するイベントに参加し、店舗をPRする「販売応援」業務に従事していた。遺族は指揮命令下でマネキン業務に就いていたと主張したが、同地裁はイベントへの参加は任意であったと評価。労働基準法上の労働者に当たらないと判断した。

出向解除復職 不当労働行為に当たらず――中労委

中央労働委員会第3部会(畠山稔部会長)は、相鉄ホールディングス㈱(神奈川県横浜市)がバス子会社に在籍出向中の労働組合員に対して、労使合意がないまま親会社である同社への復職を命じた事案で、不当労働行為に当たるとして出向継続を命じた初審命令を取り消した。復職命令停止を神奈川労働委員会から勧告されたにもかかわらず復職を命じていたが、業務上の必要性に基づいたもので、支配介入に当たらないとしている。団体交渉などを重ね、子会社への転籍条件や出向延長を打診するなど、復職や転籍の合意に向けた努力も行っていたと判断した。

過労死認定 労働時間以外を総合評価――厚労省

厚生労働省は、脳・心臓疾患の労災認定基準を改正し、新たに「血管病変等を著しく増悪させる業務による脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」として、都道府県労働局長あてに通知した。長期間の過重業務の評価に当たり、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化したのが、大きな改正点。労働時間以外の負荷要因として、休日のない連続勤務、勤務間インターバルが短い勤務、出張の多い業務などを示した。また、短期間の過重業務や異常な出来事の業務と発症との関連性が強いと判断できるケースを明確化、「発症前おおむね1週間に継続して深夜時間帯に及ぶ時間外労働を行うなど過度の長時間労働が認められる場合」などを例示した。

労働審判件数が過去最高に――最高裁・2年度司法統計

最高裁判所事務総局は令和2年度の司法統計をまとめ、地方裁判所が新規に受け付けた労働審判の事件数が3907件と、制度創設以来過去最高になったと発表した。事件の内訳は地位確認(解雇等)が1853件で前年度比252件(15・7%)増となる一方、賃金手当等(解雇予告手当を含む)は1501件で33件(2・2%)減となった。労働関係の第一審通常訴訟も3960件で、平成4年以来過去最高の数字となっている。事件数増加の背景には、新型コロナウイルスの影響があるとみられる。

下請Gメンの調査強化――中企庁

中小企業庁は令和4年度、企業における賃金引上げが実現できるよう、取引環境の改善をはじめとする事業環境整備などに重点的に取り組む。取引実態を積極的に把握するため、下請Gメン(取引調査員)の体制をさらに強化したうえで、全国の下請中小企業へヒアリングを展開。消費税転嫁対策調査官による厳正な監査・検査も実施する。さらに、中小企業・小規模事業者が抱える様ざまな経営課題に対処する相談窓口「よろず支援拠点」による経営相談体制の強化を図るほか、オンライン相談を開始する。

DX人材育成推進員を全国配置――厚労省・4年度

厚生労働省は令和4年度、中小企業のデジタル化を促進するため、全国の生産性向上人材育成支援センターに新たに「DX人材育成推進員」(仮称)を配置する方針である。中小企業からの要望に応じて、デジタル分野の新たなスキル修得に向けた職業訓練などに関する相談支援に当たる。公的職業訓練においては、IT分野の資格取得をめざす訓練コースの拡大を目的とした訓練委託費の上乗せを行う。民間部門におけるDX加速により、生産性を「徹底的に引き上げる」とする政府方針に沿ったもの。

慰謝料30万円支払い命じる――東京地裁

人事システムの販売などを営む㈱シーエーシーで働いていた労働者が降格を不服とした裁判で、東京地方裁判所(上村考由裁判官)は降格を違法・無効と判断し、慰謝料30万円を含む計220万円の支払いを命じた。同社は平成28年1~2月にかけ、労働者を2度降格処分とし、役職手当を減額した。同地裁は労働者の能力不足を示す証拠はないと指摘。降格と手当減額は人事権濫用に当たり無効とした。2度目の降格については、判断する期間が短すぎるとして、不法行為に該当すると評価している。

最賃引上げ対応 取引公正化へ行動計画――公取委

公正取引委員会は、今年10月の地域別最低賃金の引上げによって中小企業に不当なしわ寄せが及ばないようにするため、相談対応の強化などを柱とした「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」をまとめた。下請企業向けの相談窓口を全国9カ所に設置するほか、オンラインによる相談会も実施する。最低賃金改定に伴うQ&Aを新たに作成し、最賃改定で労務費コストが上昇した下請事業者からの単価引上げ要請に、一方的に従来どおりの単価で発注することが下請法で禁止されている「買いたたき」に該当する恐れがある点を発注者側へ周知する。

カスハラ防止へ企業研修――厚労省・4年度

厚生労働省は、令和4年度にカスタマーハラスメント対策に着手する方針である。顧客や取引先企業雇用者などからの著しい迷惑行為に対処するため、企業向け対策マニュアルを作成し、担当者への研修を全国展開する考え。就職活動中の学生などへのセクシュアルハラスメント対策では、対策事例を収集・公表し注意喚起を図る。併せて、4年度から中小企業に義務化されるパワーハラスメント防止措置に関する実務的観点からの研修を進める予定である。

テレワ-ク定着の壁

読売新聞の主要企業へのアンケ-ト調査で、テレワ-クの課題や限界を指摘
する声が相次いだ。新型コロナウイルスの感染急拡大で、政府は改めてテレ
ワ-クの徹底を訴えているが、取り組みの定着へ向けては更なる環境整備が
欠かせない。

感染収束後にテレワ-クが縮小すると考えられる理由として、
□意思疎通について
・人材育成や組織運営、イノベ-シヨンの創出には対面コミュニケ-ション
も重要。
・テレワ-クでも業務効率に差はないが、より質の高いコミュニケ-ション
を求めることが予想され、出社率は自然と高まる。
・健康管理や業務指示、コミュニケ-ションの円滑化を目的として、テレ
ワ-クの一定の制限を設ける。

□効率について
・出勤した方が生産性が高いと思われる業務が存在する。
・テレワ-クに向かない業務が多い。
・対面の方が緊急時の迅速な判断や対応が可能である場面が多い。

□顧客対応について
・得意先の要請により、対面での打ち合わせが増えることが想定される。
・外部への提出書類が紙媒体である限り、出社を余儀なくされる。

などがあがった。

以上

特別条項超えて働かせ送検――兵庫労働局

兵庫労働局(荒木祥一局長)は、調理師1人に対して1日10時間、週6日勤務をさせていた飲食業者を労働基準法第32条違反の疑いで神戸地検に書類送検した。36協定の特別条項では上限を月75時間と定めていたが、毎月第3~4週目にはこれを超えることになり、最長で月90時間の時間外労働を行わせていた。労働者には採用の段階で、9~21時のシフト制勤務、休憩2時間、週休1日との労働条件を明示していた。

未払い残業代 400万円の支払い命じる――東京地裁

ヘッドスパサロンなどを営むRアイディア㈱(東京都渋谷区、竹澤陽代表取締役)で働いていた労働者が、新型コロナウイルスの影響で解雇された後に、未払い残業代の支払いなどを求めた裁判で、東京地方裁判所(佐藤卓裁判官)は同社に計400万円の支払いを命じた。営業開始45分前に始まっていた朝礼は労働時間に当たるとして、過去2年間分の残業代と付加金の請求を認めている。労働者は解雇直後に労働基準監督署に相談し、助言を受けていた。

最賃対応 助成金活用へ強化期間――東京労働局

東京労働局(土田浩史局長)は、今年10月1日に改定される最低賃金を周知して賃金引上げに関する助成金の活用を促進するため、9~10月を「最低賃金・支援策周知強化期間」に設定した。関東経済産業局と連携して助成金に関するワンストップ説明会を開催するほか、同労働局と管内労基署幹部が使用者団体などを直接訪問し、中小企業での助成金活用に向けた要請を行う。周知強化期間の設定は初めて。東京地方最低賃金審議会が改定後最賃を答申する際、中小企業における継続的な賃上げに向けて各種支援策の活用をさらに促進するよう同労働局に強く求めていた。

2021年春闘での労使交渉

読売新聞の調査によると、今春の労使交渉で決定した項目として最も多かったのは「初任給の引き上げ」で36.9%だった。「20~30代の定昇引き上げ」は27.7%あり、将来の競争力維持に優秀な人材の確保が欠かせない背景がみえる。

コロナ下では働き方改革についても労使双方で推進する流れが続き、今春では「労働時間の削減・有給休暇の推進」が31.7%、「テレワ-クや時差通勤の推進」が24.7%と、労働環境の改善を決めた企業が多かった。

業種別では、「労働時間の削減・有給取得の推進」を決めたのは製造業の26.7%に対し、非製造業は44.7%に達した。

コロナ禍は対面の営業活動や会議、満員電車での通勤などを刷新する機会になった。在宅やオンラインで仕事の効率化をどう実現していくか。新たな雇用形態や人事評価を含め、ニュ-ノ-マル(非常態)に向けた改革が求められている。

以上

団体交渉 他の組合同席は不当労働行為――千葉県労委

千葉県労働委員会(舩越豊会長)は、団体交渉の場に他の労働組合の組合員を同席させ、交渉を一任した使用者側の対応を、不当労働行為と認める命令書を出した。社会福祉法人千歳会の労働組合が懲戒解雇に関する団体交渉などをめぐり救済を求めた事件で、不誠実交渉に当たるとして、団交応諾やポストノーティスなどを命じている。交渉を一任されていたのは「首都圏青年ユニオン連合会」の組合員を名乗る男性で、千歳会労働組合によると、組合つぶしのために同法人が引き入れた労務コンサルタントだという。

女性活躍へ取組み強化――東京都

東京都は、今後強化していく施策を示した「『未来の東京』の実現に向けた重点政策方針2021」をまとめた。コロナ禍による経済情勢の悪化によってとくに女性の雇用に大きな影響があったことから、女性活躍推進に関する取組みをさらに強化するとした。短時間勤務制度やテレワークの導入など、多様で柔軟な働き方を推進し、仕事と家庭を両立しやすい環境づくりを加速する。具体的な内容は、年度内の策定をめざしている「『未来の東京』戦略 政策のバージョンアップ2022(仮称)」に盛り込む考え。

出生時育休制 就労は所定労働日数の半分――厚労省・改正育介法省令案

厚生労働省は、通常国会で成立した改正育児・介護休業法の運用に向けた省令事項(案)を明らかにした。新たに創設した男性労働者の「出生時育児休業制度」の施行日を令和4年10月1日とした。同休業中に認められた就業については、所定労働日数の半分以下とし、仮に使用者の意に反して労働者が同休業中の就業を希望しなかったとしても解雇その他の不利益取扱いをしてはならない。同休業開始予定日の前日までに就業可能日や就業時間帯を申し出る必要がある。

移籍前の勤務で期待生じない――東京地裁

東京都内のマンションで管理員として働いていた労働者が、雇止めは無効とビソー工業㈱を訴えた裁判で、東京地方裁判所(松浪聖一裁判官)は雇止めを有効と判断した。労働者は同社と有期労働契約を締結する前から、同マンションの管理員を務めていた。管理業務の受託先変更に伴い同社に移籍し、5年にわたって管理員として契約が更新され続けてきたと主張したが、同地裁は「移籍は契約更新まで保証したものとは認められない」と評価。契約更新に対する合理的期待はなかったとした。

建設現場集中監督 元請の安全管理不十分――東京労働局

東京労働局(土田浩史局長)は、建設業における死亡災害の急増を受けた緊急対策として実施した集中監督指導の結果を取りまとめた。法令違反が発覚した工事現場の8割で、下請への指導を行っていないなど元請の安全衛生管理面に不備がみつかっている。現場管理者への聞取りも行った結果、労働災害発生要因として実感する項目に「危険意識の低下」を挙げるケースが3割を超えた。このため、同労働局は、危険予知活動や職場巡視の徹底といった自主的な安全活動の実施を元請などに求めていく方針。

雇用仲介サービス業 法的位置付けを明確化――厚労省

厚生労働省は、事業内容の多様化と並行して利用が活発化している「雇用仲介サービス」の適正化に向けたルール作り、法的位置付けの明確化に取り組む方針である。労使双方が安心して利用するための環境整備に加え、雇用仲介サービス事業が労働市場に参画する際に依拠すべきルールを創設する考え。求人情報に関するトラブルでは、表記された労働条件と実態が異なるなどとするケースが全体の5割を占めている。

給与規程の変更は無効――東京高裁

栗田運輸㈱(東京都江戸川区、栗田浩一代表取締役)で働くトラックドライバー3人が、給与制度の変更を不服とした裁判で、東京高等裁判所(小野瀬厚裁判長)は変更を無効とした一審判決を維持し、同社に計143万円の支払いを命じた。同社は歩合給や家族手当をなくし、新たに固定残業代に相当する運行時間外手当を新設する給与規程の改定を実施した。同高裁は歩合給と家族手当の廃止により、通常の労働時間分の賃金が約3割減るのは不利益の程度が著しいと指摘。規程改定に合理性はないと判断した。

中小のDX推進加速を――商・中小施策要望

日本商工会議所(三村明夫会頭)は、中小企業・地域活性化施策に関する意見・要望を取りまとめた。コロナ禍からの再起をめざし、ビジネスモデルの転換やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を支援するよう求めた。各社に適したデジタルツールを活用できるよう、IT導入補助金における賃上げ要件の緩和や補助率引上げなど同助成金の推進・改善を盛り込んでいる。デジタル技術導入を目的とした専門家派遣の拡充も要望した。

雇調金特例 失業率2.6%押下げ――3年版・労働経済白書

雇用調整助成金などによる完全失業率抑制効果は2・6%ポイント程度――厚生労働省がまとめた令和3年版の労働経済の分析(労働経済白書、副題=新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響)で明らかになった。完全失業率は昨年10月に月に3・1%に上昇しており、雇調金などの特例措置がなければ、5%を大きく超えていた可能性がある。テレワークに関しては、オフィスで働く場合より生産性・効率化が低下する傾向にある。

柔軟な働き方コロナ後も

日本経済新聞とパ-ソナルキャリアの調査で、新型コロナウイルス禍を機に働く場所についての認識が変化している様子が浮き彫りになった。

回答企業の5割はコロナ収束後もテレワ-クを恒久措置として続けると回答。
個人は若い世代ほど柔軟な働き方を企業選びの際に重視すると答えた。

コロナ禍で企業が新たに導入・拡大した働く場所についての施策では「ウェブ会議システムの整備」が最も多く、回答企業の79.4%を占めた。
「テレワ-クの導入・拡大」も68.1%と高く、47.3%はコロナ禍の収束後も継続すると回答。
テレワ-クの導入を機に転勤や単身赴任の廃止や中止を決定・検討している企業も1割前後あった。

働く場所が柔軟になるとオフィス見直しが進む。
企業にオフィスの在り方で検討している項目を聞くと、本社の移転・縮小が全体の11.5%を占めた。
特に東京都の企業の場合は21.5%と割合が高かった。

働き手の意識も変わってきた。
個人に「転職時に柔軟な働き方の整備を重視するか」を聞いたところ「重視する」「まあまあ重視する」と答えた人は20代で76.8%に達した。
若い人ほど割合が高いが50代も62.2%あった。

以上

年休5日の時季指定怠り送検――津島労基署

愛知・津島労働基準監督署(戸嶌浩視署長)は、労働者6人に対して年次有給休暇取得の時季指定を怠ったとして、給食管理業の栄屋食品㈱(愛知県あま市)と各事業場の責任者である店長3人を、労働基準法第39条(年次有給休暇)違反の疑いで名古屋区検に書類送検した。平成31年4月以降、年5日の年休取得が義務化されたにもかかわらず、複数の労働者から取得できないとの相談が寄せられていた。取得調整が十分可能であったとして、10人以上の3事業場の店長のみ送検対象としている。取得義務についての送検は県内で初めて。

採用過程の期待権侵害認める――東京地裁

採用条件変更の一方的な通告は不法行為に当たるとして、求職者が仮想通貨交換業のフォビジャパン㈱を訴えた裁判で、東京地方裁判所(布施雄士裁判官)は期待権侵害を認め、同社に60万円の損害賠償を命じた。求職者は中途採用面接を受け、同社の取締役から月給39万円と提示をされたが、入社予定日の直前になって、月給30万円になると通告を受け、労働契約を締結しなかった。同地裁は求職者には前職を上回る待遇での採用が確実との認識があったと指摘。一方的な通告によって失職していた期間に受け取れていたはずの給与額を損害と認定した。

マルチジョブホルダー 高齢者に雇用保険適用――厚労省方針

厚生労働省は、令和4年1月1日からマルチジョブホルダーである65歳以上の高年齢労働者に対して、雇用保険の特例適用制度を試行する。1週間の所定労働時間が20時間未満である労働者は、雇用保険制度から適用除外されているが、2つの事業所の週所定労働時間を合算して20時間以上の高年齢労働者を新たに対象とする。事業主が労働時間を把握し、手続きを行うのは困難であるとし、労働者本人が申出る必要がある。

氷河期世代対策 正社員就職6000件超えに――大阪労働局

大阪労働局(木暮康二局長)は、昨年度からスタートした「就職氷河期世代活躍支援プラットフォーム」の取組み状況を公表した。ハローワークの職業紹介による正社員就職は6868件に上り、1年当たりの目標とする5600件を上回っている。若手の獲得が難しい企業や、氷河期世代に当たる年齢層が薄い企業で採用に至っているケースがめだつ。同労働局では昨年度の結果を踏まえ、今年度は面接会のさらなる充実をめざすとしている。

定年までの賃金支払命じる――東京地裁

㈱ディーエイチシーで働いていた労働者が、懲戒解雇処分を不服とした裁判で、東京地方裁判所(生田大輔裁判官)は処分を無効と判断し、同社に賃金計1200万円の支払いなどを命じた。労働者はタイムカードの改ざんなどを理由に平成30年7月に懲戒解雇となった。同地裁は「処分を正当化するほど企業秩序に重大な悪影響を生じさせるものとまでは認められない」と指摘。懲戒解雇を無効と判断し、定年となる令和元年11月までのバックペイ支払いを命令している。

天災対応 定期的に従業員訓練実施――東京都

東京都は、地震などの自然災害発生時における社員の帰宅抑制に積極的に取り組む企業の事例集を作成した。平成30年度に創設した「一斉帰宅抑制推進企業認定制度」の認定企業の取組みをまとめたもの。3日分の備蓄品を廊下やロッカーなどの空きスペースに分散して管理したり、緊急時に慌てずに行動できるよう定期的に訓練を実施したりしている企業がめだつ。災害時の初期行動などをまとめたカードを従業員に配布し、携帯させるケースも多い。

紛争解決援助制度 パワハラ関連が3割強――神奈川労働局・令和2年度集計

神奈川労働局(川口達三局長)が取りまとめた令和2年度の雇用均等関係法の施行状況で、労働局長による紛争解決援助件数計69件のうち、パワーハラスメントに関するものが3分の1の23件を占めていることが分かった。会社側が対策を講じたにもかかわらず、労働者から対応が不十分と申し立てられるケースがめだつとしている。仮に会社としての対応が十分だった場合、紛争解決に向けて再発防止策への指導、当時者が顔を合わせずに済む業務の振分けなどの助言を行っている。

元職場へ復職させる義務なし――東京地裁

福祉輸送専門のバス会社に勤める労働者が、休職明けに元の職場へ復職させなかったのは違法と訴えた裁判で、東京地方裁判所(三木素子裁判長)は元の職場に復職させる義務はないと判断した。労働者は精神疾患で休職に入り、休職中に降格処分を受け営業所から本社に配置転換となった。訴訟提起前に降格を不服とする労働審判を申し立て、降格前の賃金支払いを受ける地位のみを確認する審判が確定していた。同地裁は審判により配転は確定していると指摘。営業所でなく本社に復職させたとしても、復職配慮義務違反は認められないとしている。

労災保険特別加入 フードデリやIT人材も対象に――厚労省

厚生労働省は、労災保険の特別加入制度の対象範囲を急ピッチで拡大している。今年4月から芸能従事者、アニメーション制作従事者、柔道整復師など合計約30万人に対象を広げたのに続き、新たにフードデリバリーを含む自転車配達員やフリーランスの情報サービス事業者合計約30万人へ拡大する考えだ。働き方の多様化や社会経済の発展に向けてフリーランスを有効活用するのが狙い。就業保護を強めて安心して働ける基盤を整備する。

雇用のミスマッチ拡大、コロナ禍での円滑移動に壁

総務省が5月14日発表した労働力調査によると2021年1月~3月の失業者214万人のうち、
「希望する種類・内容の仕事がない」と答えた人は64万人と30%あった。

2019年の調査では20%台後半だったが、
新型コロナの感染拡大が雇用市場に影響を与えた2020年~2021年は3割台が続いている。
就職を希望するが求職活動をしていない人も全体の37%にあたる95万人が
「適当な仕事がありそうにない」と理由を答えている。

一方で、出産・育児や介護・看護のために求職活動をしていない人は大きく減った。
新型コロナウイルスの感染拡大が長期化する中で、
雇用吸収力が大きかった飲食や宿泊など一部のサ-ビス業では雇用が蒸発。
他方で医療・福祉などは直近の2021年3月も有効求人倍率が2~3倍とコロナ禍でも引き続き強い。

デジタル・トランスフォ-メ-ション(DX)に関連した職種も求人は堅調だが、
働き手の希望やスキルが一致せず、労働移動が進まない状況になっている。

2021年1月~3月期で失業が1年以上になった人は、前年同期比8万人増の65万人になった。
6カ月~1年未満の人も39万人と13万人増えており、
コロナ禍で職を失った人が再就職しづらい状況となっている。

以上

「管理監督者」で是正勧告受ける――熊本市

熊本市は、36協定を超えて時間外労働を行わせていたなど3つの法違反があり、熊本労働基準監督署から是正勧告を受けて改善を図ったと公表した。時間外手当の誤支給が発覚したほか、管理監督者に準ずる者として協定の適用外としていた人事職員について、同労基署から「除外対象に当たらない」と指摘を受け、月122時間に及んでいた時間外労働の改善を求められている。併せて同市職員が斜面から滑落した労働災害についても是正勧告を受けた。

建設業 賃金上昇率2%実現へ

国土交通省と建設業の業界団体は、建設技能労働者の賃金水準2%引上げに向けた取組みを本格化する。国交省はこのほど、総務省との連名で、ダンピング対策のさらなる強化などを地方公共団体に対して要請した。日本建設業連合会がおおむね2%以上の賃金上昇に向けた下請契約の締結に取り組むことを決議しているほか、全国建設業協会でも、下請会社への指導などを行うことを事業計画に盛り込んでいる。今年3月に開いた赤羽一嘉国交大臣と建設業4団体の意見交換会において、担い手の確保に向けておおむね2%以上の賃金上昇をめざすことを確認していた。

脳・心疾患労災認定基準 勤務時間の不規則性重視――厚労省

厚生労働省は、脳・心臓疾患の労災認定基準を20年振りに見直す方針を明らかにした。労働時間の長さ以外の負荷要因である「勤務時間の不規則性」を総合的に考慮して業務上外を判断するとした。具体的には、拘束時間の長い勤務、休日のない連続勤務、勤務間インターバルが短い勤務、不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務――を挙げている。出張の多い業務においては、とくに4時間以上の時差を伴うケースは、過重負荷判断に当たって重視すべきとした。

介護職確保策 週休3日制の本格導入開始――宮城県

介護人材確保の緊急アクションプランに取り組む宮城県では、今年度からモデル事業所5社で「週休3日制度」の本格導入を開始した。1日10時間勤務とし、賃金水準は保ったまま年間約50日の休日増を見込む。メリットとして連休取得の実現や、同時に働く人数が増えた結果、残業削減につながったケースがみられる。一方、身体的負担や欠員へのフォロー体制などの課題も挙がっている。来年にはノウハウや課題解決策をまとめたハンドブックを作成する予定で、さらなる改善と普及をめざす。

退職金 5割超える減額は無効――東京地裁

エイブル保証㈱で働いていた労働者が退職金の減額は違法と訴えた裁判で、東京地方裁判所(矢島優香裁判官)は5割を超える減額は無効として、165万円の支払いを命じた。労働者は元部下が経営する取引先から、クラブでの接待を繰返し受け、気に入った外国人ホステスのビザ更新のため、在職証明書の偽造を依頼したことで諭旨退職となった。同地裁は懲戒解雇事由があると認めたものの「勤続の功をすべて抹消するほどの著しい背信行為とまではいえない」と評価。5割を超える減額は無効とした。

契約不更新問題 業務委託講師も労働者――中労委

中央労働委員会第一部会(荒木尚志部会長)は、大手予備校の河合塾で業務委託契約に基づく講師として業務に従事していた労働組合書記長が出講契約を打ち切られたとして救済を求めた紛争で、学校法人河合塾(愛知県名古屋市)の対応を不当労働行為と認定した。委託契約講師の労働者性を認め、組合員であることなどを理由とした不利益扱いに該当するとして原職復帰とバックペイを命じた初審判断を維持している。講師は法人の事業遂行に不可欠な労働力として組織に組み入れられていたほか、委託契約を法人が一方的・定型的に決定していることなどを重視した。

労組の除名処分は違法――東京地裁

東京都内のタクシー会社に勤める労働者が、労働組合の除名処分を不服と訴えた裁判で、東京地方裁判所は除名を無効・違法と判断し、同労組に慰謝料33万円の支払いなどを命じた。紛争は同労組が第2組合を設立しようとした労働者を除名し、ユニオンショップ協定に基づき会社に解雇するよう求めたことで起きた。同地裁は除名の前提となる理由はなく、手続き的相当性も欠くと指摘。解雇要求についても、同労組は他の労組に所属する労働者をユシ協定によって解雇できないと認識しており、不法行為が成立するとしている。

建設業で死亡災害倍増――東京労働局

東京労働局(土田浩史局長)は、建設業における死亡労働災害が前年に比べて約2倍に増加していることから、今年7月末までを対象期間とする死亡災害撲滅に向けた緊急対策を展開する。同労働局と管内労働基準監督署が工事現場に対して集中的な指導を実施するほか、大手建設業者との連絡会議などを開き、労災防止への対応を求めていく。建設業関係団体に対しては、建設事業者の取組みとして、現場の集中的な安全点検の実施や統括管理の強化、墜落・転落防止対策の徹底などを要請している。

育・介法改正案成立 男性に最大4週の育休――通常国会

6月16日に閉幕した令和3年通常国会で、厚生労働省が提出していた育児・介護休業法改正案が原案通り成立した。男性の育児休業取得促進のために、子の出生直後の時期に柔軟な取得を可能とする制度の創設が柱である。子の出生後8週間以内に4週間まで休業取得することができ、2回まで分割できる。小規模事業の労働者でも利用できるよう、代替要員確保や雇用環境の整備などに対して支援を行い、事業主の負担に配慮した制度運営を行うとしている。

SNS「炎上」 経営上のリスクに

SNSへの書き込みによる「炎上」が企業経営上のリスクに――厚生労働省の「技術革新(AI等)が進展する中での労使コミュニケーションに関する検討会」(守島基博座長)は、SNS上で外部に不満を訴え、企業が損害を受ける可能性が高まっているとする報告書案をまとめた。社内で不満を表明しやすく、しかも表明しても不利にならない雰囲気と企業文化を醸成する必要があるとした。相談窓口を設け、実際に機能させることが重要である。社内でのSNS利用を制限するのも不信感につながる。

労災手続き問題 元請は使用者に当たらず――中労委

中央労働委員会第3部会(畠山稔会長)は、建設工事の2次下請に雇用されている労働者の労災手続き問題に関する団体交渉に元請が応じなかった事案で、元請の不当労働行為を認定した初審命令を取り消し、救済申立てを棄却した。労働保険徴収法や労災保険法には元請負人のみを数次の請負事業の事業主とするという規定はあるものの、下請の従業員の労働条件決定や労務管理上の指揮命令とは関係がないと指摘。徴収法などの規定を根拠として、元請が労働組合法上の使用者に当たるとはいえないとした。

労働時間認定 持帰り残業へ留意点――厚労省が質疑応答・事例集

厚生労働省は過労死等の労災請求事案の労働時間認定に係る質疑応答・事例集を作成し、都道府県労働局労災保険課長に通知した。14個の質疑応答と7つの参考事例を載せており、これらを活用しながら適切な労働時間認定に努めて欲しいと要請している。質疑応答では、いわゆる持帰り残業や出張先のホテルでの作業、自宅でのテレワークなど、具体的な事案ごとの基本的な考え方と調査上の留意点を指摘。事例集は実際の認定事例をもとに、労働時間を認定する際のポイントを示している。

大卒男性が22.7万円――厚労省令和2年 賃構・初任給調査

厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、通勤手当を含む男性の初任給は大卒が22.7万円、大学院卒が25.4万円、高卒が18.0万円だった。大卒の企業規模別の水準は大企業が23.0万円、中企業が22.8万円、小企業が21.1万円であり、大企業との差は順に1900円、1.9万円と小さくない。前年比を求めると、大企業は6200円(2.8%)増、中企業は5400円(2.4%)増、小企業は1500円(0.7%)減だった。都道府県ごとの平均額についてみると、男性では22万円台に14地域が、女性では21万円台に17地域が集中している。

公益通報者保護 不利益取扱い禁止規定を――消費者庁

消費者庁は改正公益通報者保護法の指針案を公表した。大企業の義務となる内部公益通報体制の整備について、通報者への不利益取扱いを禁止する規定などを設けなければならないとしている。不利益取扱いした行為者に対しては、被害の程度を考慮し、懲戒処分を含めた適切な措置の実施を求めた。改正法は昨年6月に成立したもので、労働者数が300人以上の大企業に内部通報体制の整備と、公益通報に対応する担当者の選任を義務付ける内容。施行は令和4年を予定している。

コーポレートガバナンス・コード 「労働環境への配慮」を明記――東証

東京証券取引所は、来年4月から適用するコーポレートガバナンス・コードの改定案を明らかにした。上場会社は、社会・環境のサスティナビリティ(持続可能性)向上に向けて、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮、公正・適切な処遇の実現へ「積極的・能動的」に取り組む必要があると規定している。コロナ禍を背景に従業員の働き方の見直しが進んでおり、ニーズに対応した社内環境整備が求められるとした。

新型コロナウイルスの影響で求人数、業種と職種で明暗

3月の有効求人数は全国で約201万人と前年同月比10%減少した。
このうち「販売の職業」は約19万人で前年同月比20%、
「サ-ビスの職業」は約47万人で前年同月比16%と大幅に減少した。

一方、医療や情報通信、建築などの「専門的・技術的職業」は約45万人と
前年同月比6%減にとどまった。

また、コロナ禍前から人手不足が深刻だった「建設・採掘の職業」は
約12万人で前年同月比で17%増えた。

総務省の労働力調査によれば、2020年の転職者数は319万人だった。
転職者は増加傾向で2019年は351万人と比較可能な2002年以降で過去最多だったが、
コロナ禍で労働移動が停滞した。

今後はニ-ズの高い分野に人材移動を促すことが必要となる。
医療分野や在宅ニ-ズで需要が見込まれる情報通信関連などが受け皿に挙がる。

さらに、カギになるのが職業訓練で、パ-ソナル総合研究所のアジア太平洋地域の
14カ国・地域を対象とした2019年の調査では、勤務外で学習や自己啓発を
行っていない就業者の割合を見ると日本は46%だった。
14カ国・地域の平均13%より大幅に高く、職業訓練の余地は大きい。

以上

大手の大卒実在者賃金 55歳56万円がピーク――中労委・令和2年 賃金事情調査

大手企業の賃金実態を調べている中央労働委員会の「賃金事情調査」によると、大卒の事務・技術(男性)の実在者平均所定内賃金は、22歳22.1万円、35歳39.1万円、45歳49.6万円、55歳56.1万円などとなった。22歳を除くすべての年齢階級で前年比で減少し、とくに45歳以上では1.6~4.5%ダウンしている。ピークを迎える55歳の水準は、初任時22歳と比べて2.54倍となり、0.05ポイント減少した。家族手当については、配偶者もしくは第1子を指す「第1順位」の支給額が1万6300円で、6年前の前回調査と比べて1100円(6.3%)減少した。

22年度大卒初任給 総合職で22万円超える――労働新聞社

2022年3月卒業見込みの大卒求人初任給を労働新聞社が調べたところ、総合職の平均は22万826円となった。原則として全国転勤型のサンプルを集計したもので、前年に比べて約1600円伸び、初めて22万円台に乗せている。引上げを実施した企業の割合は、全体の23%だった。伸び幅こそ低下したもののその他の職種も総じて上昇傾向を示しており、技術系は2400円増の22万3281円、一般職は900円増の19万1160円、営業職は1000円増の23万3822円となっている。

テレワーク 「週3日・7割以上」を認定――東京都

東京都は、感染症の拡大防止に有効なテレワークの定着を図るため、「週3日・社員の7割以上」のテレワークを3カ月間実施した中小企業を「テレワーク・マスター企業」として認定する制度を創設した。認定企業に対しては、東京都のホームページでPRするほか、通信費や機器・ソフト利用料などの経費に基づいて算定した最高80万円の定額の奨励金を支給する。認定を受けるには、テレワークの実施予定人数などを記載した計画エントリーシートを事前に提出する必要がある。

ジョブ型インターン 事前に職務・条件示す――文部科学省

文部科学省は、今年度後期からの試行を予定する大学院生向けのジョブ型研究インターンシップについて、参画する企業、大学、マッチング機関に向けたガイドライン案を取りまとめた。有給かつ2カ月以上の実施を前提に雇用契約を結ぶ仕組みと定義し、当面の間は理工農系の博士課程学生のみを対象とする。募集に際してはマッチング支援機関を介してジョブ・ディスクリプションを提示するなど、詳細な運用ルールを定めた。終了後は成果を評価して証明書を発行し、採用選考活動にもつなげる。

週休3日制推進を提言――自民党

自民党の一億総活躍推進本部(本部長・猪口邦子参議院議員)は、希望する労働者の休日日数を週3日とする、選択的週休3日制の推進を政府に提言した。休日を増やすことで、リカレント教育を受ける機会が増えると見込んでいる。政府は企業が自主的に導入できるよう、導入事例の横展開などを図るべきとした。選択的週休3日制については、政府の経済財政諮問会議でも有識者議員が導入推進を提案していた。今年の骨太の方針に盛り込むとみられる。

新規申立てが大幅増――都労委・令和2年不当労働行為審査

東京都労働委員会は、令和2年における不当労働行為審査事件の取扱い状況をまとめた。新規申立て件数が前年比2割増の116件に上り、全国の申立件数の4割超を占めた。一方、終結件数は和解事案の大幅な減少が響き、同20件減の79件に留まっている。新規申立て件数の増加と終結件数の減少について都労委事務局は、コロナ禍による経営状況と労働環境の悪化などが背景にあるとみている。

独自ガイド活用し厳正対処――千葉労働局

千葉労働局(友藤智朗局長)は、今年度の重点対策として長時間労働の抑制を掲げ、独自に作成した働き方改革関連法に関するガイドブックを用いた是正指導、定期監督を推進する。新型コロナウイルス感染症の影響を考慮しながらも、月80時間以上の時間外労働が疑われる事業場、長時間労働を理由とする労災請求があった事業場には、厳正に対処する方針だ。安全衛生対策にも力を入れ、前年度比で労災が10%増加した建設業に対し、現場ごとに重点対策の宣言を促す。

均衡料率が10%超える――健保連

主に大企業の労働者が加入する健康保険組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)は、今年度の予算編成状況をまとめ、単年度収支がつり合う均衡保険料率が10・06%と、初めて10%を超えたことを明らかにした。健保組合の収入の合計は8兆1181億円、支出は8兆6279億円で5098億円の赤字となっている。保険料収入が前年度から2・6%減少する一方、前期・後期高齢者の医療費などに対する拠出金が3・6%増加したのが主な原因で、赤字の組合は77・9%に上っている。平均保険料率は9・23%、料率が10%以上の組合の割合は22・3%となった。

障害者雇用促進 テレワーク実施を支援――東京都

東京都は、都内中小企業の障害者雇用を後押しするため、テレワークの取組みを支援するモデル事業を開始する。これから障害者に対してテレワークを実施するモデル企業に対し、障害者雇用の専門家である「ナビゲーター」が、テレワークの導入計画の策定から導入、障害者の採用、定着までを継続的に支援する。1社当たり110万円を限度に、テレワーク機器や就労支援機器の購入費用などの助成も行う。

パワハラ対策強化へ個別訪問――埼玉労働局

埼玉労働局(増田嗣郎局長)は今年度、中小企業のハラスメント対策強化に乗り出す。すでにパワハラの防止措置が義務化されている大企業への個別訪問に加えて、過去に同労働局管内の窓口に相談が寄せられた中小企業も対象とし、来年度の防止措置適用に向けて助言指導を行う。新型コロナウイルスの影響を考慮してオンライン・オフラインを組み合わせたセミナーを開催するほか、12月の集中対策月間には個別相談会を開くなどにより、周知徹底を図る。

国家公務員が65歳定年に――政府

政府は国家公務員の定年年齢を段階的に65歳へ引き上げることなどを盛り込んだ、国家公務員法改正案を通常国会に提出した。令和5年度から2年ごとに1歳ずつ引き上げ、13年度に65歳とする内容で、60歳以降の賃金は当分の間、60歳以前の70%に設定。同時に、管理監督職は60歳までとする役職定年を設けるとした。定年引上げ法案の提出は昨年に続き2度目となる。昨年は検察幹部の定年を、政府の判断で最長3年延長できる特例に批判が集まり、廃案となっていた。

最賃の水準維持を要望――日商など3団体連名で

最低賃金は現行水準維持を――日本商工会議所、全国中小企業団体中央会、全国商工会連合会の商工3団体は連名で、最低賃金に関する要望を取りまとめた。コロナ禍の収束が見通せないとして、今年度の最低賃金の審議について、現行水準の維持や、危機的な経済情勢を踏まえた新たな政府方針の決定などを求めている。賃金水準の向上を図るうえで「強制力のある最賃引上げを政策的に用いるべきではない」と主張している。

リモ-トワ-クでの顔出し要求を考察する

ある調査において、「あなたは、上司がテレワ-クの際に、会議で顔出しすることを強要することについてパワ-ハラスメントだと思いますか」と質問したところ、
「絶対に該当すると思う」「おそらく該当すると思う」と回答した20代が55.0%であったのに対して、50代では35.7%と世代間で19.3%のギャップがあった。

新型コロナ禍においてリモ-トワ-クが推奨されている中で、
「顔出しを要求することはパワハラ(リモハラ)に該当する」のだろうか。
この点については、職場では顔を隠しながら仕事をしている訳ではないことから、
そのことが直ちにパワハラに該当することにはならないのではないかと思われる。

特に、会議や打ち合わせの際であればコミュニケ-ションの円滑化という
必要性が認められる場合もあり、
リモ-トワ-ク中に顔出しをしなくてもよいという法的に保護される利益が
直ちに認められるとは考えにくく、
業務上何らの必要性がないにもかかわらず、
無用なプレッシャ-をかけてしまっているだけの
顔出し要求であると評価されるような場合でない限りは、
直ちにパワハラに該当するとは言えないのではないかと思われる。

以上

精神障害者雇用 半数が採用前に職場実習――愛知県

愛知県は、早期に離職する傾向が強い精神障害者の職場定着に向けて、定着度の高い同県内企業50社に対しヒアリング調査を実施した。半数近い企業が、採用前に職場実習を行っている。個別回答では、本人の特性に合った業務を切り出し、定期的な面談や声かけを実践している例がめだった。一方、精神障害者雇用が義務化された2018年以降に離職者のいた企業が7割に上るなど、厳しい現状にある。

未加入対策 法人登記簿を活用――年金機構

日本年金機構(水島藤一郎理事長)は令和3年度計画を決定し、厚生年金の加入逃れ対策として、新たに法人登記情報を活用する方針を明らかにした。これまで未加入企業の抽出のため、国税徴収データに加え、雇用保険の被保険者データを活用してきたが、洗い出しにさらに力を入れる。とくに、昨年度の計画策定段階で未加入が判明している事業所については、徹底した対応を実施し、今年度中の加入をめざすとした。コロナ禍への対応として、事業のオンライン化も進めるとしている。

中小のAI導入へ手引――経産省

経済産業省は、中小企業におけるAI(人工知能)導入を促進するため、製造業での部品外観検査と小売業・卸売業における需要予測の2領域を対象とした導入ガイドブックを作成した。中小企業が単独で導入できるよう、AI活用範囲の検討といった企画段階から導入・運用までの工程を明らかにしたうえで、各工程の留意事項を示している。外観検査の企画段階では、各製品の従来の検査時間などを洗い出して導入効果を比較し、AIを活用する製品を決定するとした。

フルタイム男性 ピークは42.0万円に――厚労省 令和3年賃構調査

厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査(概況)」によると、一般労働者・男性の所定内賃金は33.9万円で、前年から0.8%増加した。ピーク時の55~59歳の水準は42.0万円だった。全体的には1%以下の微増傾向を示したが、60~64歳では3.4%増とめだって伸びている。企業規模別にピーク時の水準をみると、大企業は48.5万円、中企業は42.0万円、小企業は34.9万円だった。大企業と小企業の格差は13.6万円と小さくない。

企業年金 死亡後受給権は子供に――最高裁

中小企業退職金共済などの企業年金の加入者の子供が、亡くなった加入者の退職金の支給は配偶者でなく自身が受けるべきと訴えた事件で、最高裁判所は子供の受給権を認める判決を下した。中小企業退職金共済法は加入者が死亡した際の相続順位について、配偶者を第1位と定めている。最高裁は同法の配偶者は、社会通念上夫婦として共同生活を現実に営んでいた者を指すと指摘。20年以上別居を続け、事実上の離婚状態にある配偶者には受給権が認められないと判断した。

令和3年度運営方針 経営事情踏まえ丁寧に対処――厚労省

厚生労働省は、「令和3年度地方労働行政運営方針」を作成した。新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業に対する適切な労務管理指導を柱に据えている。感染症の影響による大量整理解雇に関する情報収集と関係部局間での情報共有に努める一方、法違反が認められた場合には、事業主に是正の必要性を分かりやすく丁寧に説明し、自主的な改善を促すとした。とくに中小企業に対しては、人材確保の状況などを考慮するものの、重大・悪質な法違反に対しては、司法処分も含め厳正に対処する。

同一労働同一賃金への中小企業の対応状況

正規と非正規雇用社員の不合理な待遇差をなくす「同一労働同一賃金」が
4月から中小企業にも適用された。

多くの企業がコロナ禍で業績が悪化しており、
非正規の待遇改善に伴うコスト増が経営の重しとなる可能性がある。

中小企業では総務や経理、人事などを社員1名が担当することもあり、
限られた人員で新制度を作る余裕がない場合が多く、手探り状態のスタ-トとなっている。

□ 中小企業の対応状況 / エンジャパン2020年12月~2021年1月調査
(四捨五入のため合計100%にならない)

◇ 対応が完了                          28%
◇ 現在取り組み中、これから取り組む  23%
◇ 対応を検討中              16%
◇ 対応が必要だが何をすべきかわからない  7%
◇ 対応が必要かわからない         6%
◇ 非正規雇用がなく対応不要          18%
◇ その他                 3%

以上

総合職転換 「機会なし」は女性差別――横浜地裁

一般職から総合職への転換制度があるにもかかわらず、女性労働者2人に転換の機会を与えなかったのは男女雇用機会均等法が禁止する性別差別に当たるとして、横浜地方裁判所(新谷晋司裁判長)は巴機械サービス㈱に各100万円の支払いを命じた。労働者が繰返し差別と指摘したにもかかわらず、転換要件や基準を示さなかったのは違法と判断している。一方、総合職との賃金差額の請求については、機会があったとしても、実際に転換できたかは分からないとして、請求を棄却した。同社はこれまで計65人を採用してきたが、総合職はすべて男性、一般職はすべて女性だった。

ダイバーシティ経営――経産省

経済産業省は、多様な人材が能力を発揮できる環境を整えて価値創造につなげる「ダイバーシティ経営」を推進するため、中堅・中小企業の取組みに関する新しい診断ツールを作成した。ツールは、取組み状況を見える化する「診断シート」と、シート活用時の留意点などをまとめた「手引き」で構成。シートでは、経営者の取組みや人事管理制度の整備状況などを点数化して把握し、改善方法を記入する。企業支援に当たる社会保険労務士など専門家による活用を想定している。

「無期転換ルール」見直し――厚労省・検討会設置

厚生労働省は、改正労働契約法第18条の「無期転換ルール」改正に向け、学識経験者で構成する検討会をスタートさせた。無期転換前の雇止め対策、クーリング期間のあり方、無期転換後の労働条件確保などについて、さらにルールを整備する意向である。改正労契法施行後8年が経過し、ルール見直しの時期が来ている。調査によると、30%強の企業が無期転換申込みに応じているものの、8%強が労働契約期間通算5年を超えないよう運用しているのが実態である。併せて、多様な正社員制度も見直す。

試用期間途中の解雇は有効――東京地裁

東京都内の有料老人ホームで働いていた労働者が、試用期間途中での解雇の無効を訴えた事件で、東京地方裁判所(上村考由裁判官)は解雇を有効と認める判決を下した。労働者が同僚の胸ぐらをつかみ「お前やんのか」と暴言を吐いた行為を、介護職員としての適格性を欠くと指摘。試用期間中の勤務によって「採用前には知ることができなかった不適格性を知るに至った」として、試用期間中に認められる留保解約権の趣旨・目的に照らし、行使は正当と判断した。

はしご適正使用を徹底――東京労働局

東京労働局(土田浩史局長)は来年度、建設業における労働災害の減少に向けて、「はしご」や「脚立」の適切な使用を重点的に指導する方針だ。他産業では転倒災害が多いのに対し、建設業では低所からの転落災害が多発しているため、その要因となっているはしごなどの適切な使用を求めていく。個別指導のほか、業界団体を通じた集団指導を通じて、はしご・脚立使用時のチェックリストの活用を呼び掛けていく。

青少年雇用対策指針 早期離職でキャリア自律――厚労省

厚生労働省は、令和3年度から5年間適用する「青少年雇用対策基本方針」を作成し、入職後早期に離転職する若年者へのキャリア支援強化を打ち出した。企業の職場情報および職業情報の見える化を図ったうえで、入職後早期のキャリアコンサルティングの実施、早期離転職者を念頭に置いた新卒応援ハローワークでの職業相談対応などを具体策として挙げている。従来、職場定着対策を重視してきたが、早期離職がかえって若年者のキャリア自律を促すケースが少なくないとの見方に転換した。

通勤手当 派遣への不支給は適法――大阪地裁

㈱リクルートスタッフィングの登録型派遣で働いていた労働者が、派遣元正社員との間にある通勤手当の支給有無に関する差を不服として訴えた裁判で、大阪地方裁判所(中山誠一裁判長)は、不支給は旧労働契約法第20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)に違反しないと判断した。同社の通勤手当の趣旨を、時給額改定の経緯・歴史から、配転命令の対象となる従業員の不利益緩和と、求人への魅力的な労働条件提示と指摘。派遣労働者と正社員は職務内容や配転の範囲も大きく異なるため、不支給に不合理性はなかったとしている。

建設業 偽装一人親方の排除へ――国交省

国土交通省は、建設業の一人親方問題に関する検討会の中間取りまとめ案を明らかにした。社会保険加入などの規制逃れを目的とした「偽装一人親方化」を防止するため、下請指導ガイドラインを改正するとした。実態が雇用形態であることが明らかであるにもかかわらず、技能者を一人親方として働かせている企業を下請企業に選定しない取扱いとするほか、適正な一人親方の例を具体的に示す。現場入場時には、自己診断チェックリストを用いて働き方が適正かどうか確認する考え。

賃上げの流れ維持と評価――21年・春季労使交渉――

2021年の春季労使交渉の集中回答日となった3月17日、金属労協の髙倉明議長は、8年連続となった賃上げの流れを継続できたと述べるとともに、格差是正の取組みが定着してきていると評価した。ベースアップの平均回答額は、翌日18日時点で1138円と、前年同期に比べ78円高かった。一時金については、平均4・94カ月と前年より0・16カ月低いが、4組合が前年を上回ったとした。

テレワーク実態調査 6割が自己申告方式活用――品川労基署

東京・品川労働基準監督署(尾城雄二署長)は、テレワークにおける労働時間管理や長時間労働の対策状況を把握するため、情報通信業を中心に管内約150事業所の実態を調査した。労働者からの自己申告方式によって労働時間を把握している事業所が約6割と多数を占めている。同方式を併用する形も含め、勤怠システムなどを用いて客観的な方法で管理している事業所は5割強に留まった。長時間労働対策として、深夜・休日にシステムへのアクセス自体を制限している企業は1事業所のみだった。