行動評価に基づく減給無効――東京地裁

東京都内の投資ファンド会社で働く労働者が、能力・行動評価と情意・態度評価に基づく減給などを不服として訴えた裁判で、東京地方裁判所(中井裕美裁判官)は減給を無効と判断し、同社に差額賃金計450万円の支払いなどを命じた。
評価基準からは期待される水準が具体的に読み取れず、個人面談でも具体例を挙げて改善を促していなかったとして、人事権濫用に当たると評価している。
同社は平成26年度に人事評価を改正。新たに能力・行動評価と情意・態度評価の2つを導入した。労働者の減給は、2つの評価が低いことによるものだった。

同一労働同一賃金 遵守へ「報告徴収」積極化――厚労省・令和6年度運営方針

厚生労働省は令和6年度地方労働行政運営方針を策定した。
非正規雇用労働者の処遇を改善するため、同一労働同一賃金の遵守徹底に向けた取組みを強化する。
労働基準監督署の定期監督時に、パート・有期雇用労働者などの待遇の確認を引き続き実施したうえで、その結果を踏まえて都道府県労働局雇用環境・均等部門が実施する報告徴収(雇用管理の実態把握)の件数を増やす方向だ。
正社員との間で基本給・賞与の待遇差がある理由を説明できない企業に対しては、労基署が文書で点検・改善を要請する。

中企業男性 東京の所定内40.6万円――厚労省 令和5年都道府県別賃金

厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、企業規模100~999人の一般労働者・男性の所定内給与は、東京40.6万円、大阪36.4万円、愛知33.3万円だった。
東京の水準と比べると、大阪は10%、愛知は18%の差が付いている。
職種別では、営業用大型貨物自動車運転者が東京34.7万円、大阪36.5万円、愛知29.0万円、北海道24.5万円などとなっている。
介護職員・女性は、東京25.5万円を除く大半の地域が22万~24万円台で、他の職種と比べて規模間格差が小さい。

シニア人材活用へ管理職研修――東京都

東京都は、中小企業の人手不足対策のため、即戦力として50歳代以上のシニア人材の活用を支援する新事業を立ち上げた。企業に社会保険労務士などの専門家を派遣し、職場環境の整備に関する助言を行うほか、年上の社員を受け入れることになる管理職やリーダー職に対してマネジメントスキルを伝える社内研修を行う。企業が求める技術や経験を持つ人材と出会えるよう、転職や副業・兼業を希望するシニア人材の保有スキルの棚卸しを支援したうえで、シニア人材との交流会や合同就職面接会を開く。

特定技能外国人制度 自動車運送など4分野追加――閣議決定

政府は3月29日、人手不足が深刻な分野で外国人労働者を受け入れる特定技能制度の対象に、自動車運送業、鉄道、林業、木材産業の4分野を追加することを閣議決定した。すでに受け入れている分野と合わせ、全16分野に拡大する。2024年問題に直面している自動車運送業では、今後5年間で最大2・4万人の受入れを見込む。16分野での受入れ見込みは82万人で、制度を導入した平成31~令和5年度に設定した34・5万人から大幅に増やした。

フルタイム男性 ピーク時42.7万円に――令和5年賃構調査(概況)

厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査(概況)」によると、一般労働者・男性の所定内賃金は35.1万円となり、前年比2.6%増だった。年齢階級別では、55~59歳42.7万円でピークを迎え、大卒初任者を含む20~24歳22.9万円の1.9倍の水準となっている。対前年比では、20歳代や60歳以上で3%以上伸びた一方、中高年層の伸びはいずれも2%以下で、とくに35~39歳は0.6%増に留まった。役職者については、部長級60.4万円、課長級50.1万円、係長級38.2万円となり、0.8~1.9%増加している。

第323話「中小賃上げ32年ぶり高水準」

連合が4月4日に発表した賃上げの集計結果(2日午前10時時点)は、組合員が300人に満たない中小企業の賃上げ率が前年同期比1.27ポイント高い4.69%だった。

中小企業の春闘は通常、大手の労使交渉が妥結する3月中旬以降に本格化する。比較的規模が大きい企業から合意に至るため、集計の回数を重ねるごとに賃上げ率は低下する傾向がある。ただ、今回発表した3回目の集計は前回の水準を0.2ポイント程上回った。

高水準の背景には人手不足がある。連合の芳野友子会長は「中小規模の事業者は人手不足の問題が非常に大きい。人材流出を食い止めるために、賃上げが必要だという認識があるのではないか」と説明する。

しかしながら、中小企業を取り巻く環境は明るくなく、原材料や人件費の増加分を巡る取引先との協議が難航しているケ-スが多い。「中小の賃上げは取引先が値上げを受け入れてくれるかどうかにかかっている」「毎日コスト削減につながる方法を考えているが無い袖はふれない」との声も多い。

城南信用金庫(東京都品川区)は、3月中旬に東京都と神奈川県の顧客約800社を対象に賃上げの意向を調べたところ、「賃上げする」と答えたのは36%にとどまり、「予定なし」は3割を超えた。川本恭治理事長は「賃上げしたくても、ほとんどの会社が価格転嫁できておらず原資がなく、できないのが実態だ」と説明する。

以上

フリーランス新法 委託「6カ月以上」に配慮義務――厚労省検討会

厚生労働省の有識者検討会は、今秋に施行される予定のフリーランス新法に関連し、フリーランスの就業環境整備に関する報告書の骨子案を取りまとめた。育児・介護との両立に向けた発注者の配慮義務や、契約解除の予告義務などを定めたフリーランス新法の政省令・告示の内容を示したもの。育児・介護の配慮義務や解除の予告義務は、契約更新も含め、6カ月以上継続して行う業務委託を対象とすべきとした。

熟練技術者の「勘」を言語化――近畿経産局

近畿経済産業局は、人手不足に悩むものづくり現場に効果的なデジタル化・省力化を促すため、業務を可視化する手法についてのマニュアルを作成した。業務の手順ごとに、「その作業を行う意味・判断基準」や「参考にしている資料」など5点を書き出すことで、熟練技術者の勘に頼っている「勘所」を言語化できる。勘所を含めた業務の整理により、単純作業のみを切り出してパートタイム労働者などをスポット的に募集したり、機械を導入して自動化を図るなど、採るべき対策が明確になるとしている。

中小企業初任給 大卒・技術系で20.8万円――中央会・令和5年度 中小企業労働実態調査

全国中小企業団体中央会の「中小企業労働事情実態調査」によると、令和5年度に採用した大卒新卒者の初任給額は技術系20.8万円、事務系20.6万円で、前年結果と比べてともに1.7%増加した。技術系の水準は、東京22.7万円、愛知22.2万円、神奈川21.5万円、大阪21.1万円、北海道と福岡が20.5万円などとなっている。高校卒は、技術系が17.6万円、事務系が17.1万円で、それぞれ0.6%増、1.7%増と伸びている。

大学発学び直し 中部版ロールモデル創出へ――中経連

中部経済連合会(水野明久会長)は、大学が提供するリカレント・リスキリング教育に関するレポートをまとめ、企業が選ぶ際の参考となるよう3形態6種類に分類した。
既存の研究を活かしたレディメイド型は、オーダーメイド型よりも受講しやすい一方、講義要項が専門的で分かりにくいなどの短所を指摘した。
今後は中部版ロールモデルの創出をめざし、大学や企業らとモデル事業に取り組み、要項の表現見直しなどを行っていく。

人手不足対策 過去の内定辞退者に声掛け――ペンシル

ウェブコンサルティング業の㈱ペンシル(倉橋美佳代表取締役社長CEO)は、人手不足の時代に対応するため、過去の内定辞退者や退職者にアプローチできるコミュニティ作りに取り組むなど、採用チャネルを多様化させている。
社員の知人や友人を紹介してもらう「リファラル採用」はもちろんのこと、親や子供を紹介してもらう「ファミリー採用」も制度化。
カップルや夫婦が同じ職場で働くことも歓迎している。
会社をよく知ったうえで入社してもらえるので、広告媒体費用が抑えられるだけでなく、定着率向上にも効果を発揮している。
30%近かった離職率は、約10年で10%台まで低下した。

管理職層に5段階洗替え給――岩手銀行・新人事制度

㈱岩手銀行(岩手県盛岡市、岩山徹代表取締役頭取)は今年4月、全行員を役割基準で格付けし、基本給を役割給一本とする人事制度を開始した。
管理職の役割給には、5段階評価による洗替え方式を採用し、最高ランクと最低ランクの間で4万円の差を付ける。
併せてライン長向けに職位手当を設け、支店長には店格に応じて3.5万~10万円を支給する。
非管理職層の役割給は範囲給とし、リーダー層に限って標準評価未満で降給する仕組みを採り入れた。
新たに育児・介護などのために活用できるエリア選択制度も導入し、役割給を約15%抑えている。

第322話「物流業界の2024年問題」

2019年に施行された働き方改革関連法案の際に特例で適用されていた時間外労働の猶予が終わり、4月から年間960時間の上限が課せられる。
物流各社は人手不足が慢性化しており、十分な運転手を確保できず安定的な長距離輸送が困難になることが課題となっており、現状の物流システムや労働環境のまま輸送を維持するためには運転手の増員が必要になる。

全日本トラック協会の調査(2022年)によると、時間外労働が960時間を超える運転手がいると回答した企業は27.1%とおよそ4社に1社以上だった。

野村総合研究所は、このままの状態では2025年に全国の荷物の28%、30年には35%を運べなくなる可能性があるとの試算を公表している。 物流各社は、配送方法の見直しや荷下ろし作業の効率化、運転手の負担軽減などの対応は待ったなしとなっている。

以上