新しい資本主義 フリーランス保護法制定へ――政府

政府の新しい資本主義実現会議(議長・岸田文雄内閣総理大臣)はこのほど、「緊急提言」をまとめ、新たなフリーランス保護法制の早期国会提出を明記した。事業者がフリーランスと契約する際の契約や禁止行為の明確化などを行うとしている。最低賃金については、地域間格差にも配慮しながら、より早期に全国加重平均1000円をめざす。賃上げに積極的な企業への税制措置は、非正規雇用を含めて全雇用者の給与総額の増加を対象とする。

労働費用総額40.8万円に――就労条件総合調査

厚生労働省の「令和3年就労条件総合調査」によると、常用労働者1人1カ月平均の労働費用総額は40.8万円で、そのうち現金給与額が33.5万円を占め、現金給与以外の労働費用は7.3万円だった。法定福利費は5万283円、法定外福利費は4882円で、5年前の前回調査と比較して順に5.4%増、25.2%減となっている。法定外福利費については、企業規模30~99人に限って増加しており、13.7%アップした。このうち、食事に関する費用は1.8倍増えている。

目標水準35歳28.9万円に――連合

連合は11月18日、中央執行委員会を開き、規模間格差是正に向けた目標水準を昨年より2~3千円高い35歳28・9万円、30歳25・9万円などとする2022春闘方針案を確認した。すべての組合が月例賃金の改善にこだわり、「2%程度」を目安に賃上げ(ベースアップ)に取り組む一方で、規模間・雇用形態間・男女間などの格差是正の流れを加速させるとしている。新たに企業内最低賃金の目安を50円アップの時給1150円以上としたことに伴い、各種の要求指標を引き上げた。

過重労働防止へ改善事例集――松本労基署

長野・松本労働基準監督署(中川賢一署長)は、管内の事業場から長時間労働の改善策を収集し、事例集を作成した。過重労働解消キャンペーンに合わせて取りまとめたもので、強化する監督指導のなかで活用する。夕方以降に業務が集中するため出勤時刻を繰り下げたケースや、固定残業制をやめて残業代との差額を賞与に組み入れたケースなどを盛り込んだ。中小企業にも取り組みやすい対策を示すことで、指導に留まらず改善につながるフォローをしていく。

偽装請負 直接雇用成立を認める――大阪高裁

住宅建材の製造販売を営む東リ㈱と業務請負契約を締結していた会社の労働者5人が、労働契約申込みみなし制度に基づき直接雇用成立の確認を求めた裁判で、大阪高等裁判所(清水響裁判長)は5人の直接雇用成立を認め、バックペイ支払いを命じた。みなし制の適用を認めた判決は全国初とみられる。5人は東リ伊丹工場で建材の製造に従事していた。同高裁は東リが実質的に作業指示などを行っており、偽装請負に当たると指摘。「日常的・継続的に偽装請負を続けており、偽装請負の目的があった」として、労働契約成立を認定した。

リカレントガイドライン作成――厚労省

厚生労働省は、自律的・主体的なキャリア形成に向け、労働者・企業が取り組むべき事項や人材開発施策に係る諸制度を体系的に示した「リカレントガイドライン」(仮称)の作成に向けて検討に入った。従来型の正社員に対するOJT中心の人材育成システムが十分に機能しなくなるとともに、企業による人材投資が減少傾向にあることから、日本の労働生産性が低位に置かれているのが実態。キャリアコンサルタントの積極的活用により労働者の自律的・主体的な学習とキャリア形成を促す必要があるとした。

コロナ行動制限緩和後の出社率

日経新聞「社長100人アンケ-ト」によると、行動緩和後の出社比率について
57.3%の企業が「引き上げる」と回答し、「同じ」と回答した41.9%を上回った。出社日については「週2日」が27.6%と最多で、「週1日」が13.8%だった。出社を促す理由として最も多かったのは「従業員間のコミュニケ-ションを円滑にするため」が87.7%で、次いで「対面が欠かせない業務がある」が71.6%あった。

同アンケ-トでは
・在宅勤務の利用拡大により働き方の選択肢が広がった一方、コミュニケ-ションや育成、労務管理における新たな課題が生じた
・新入社員や異動者に対するメンタル面でのサポ-トを意識的に推進する必要性が生じた
・新たな働き方の実効性や有用性の向上に向けた検討や試行が重要となる
・対面やオンラインによるメリットを生かすハイブリットな働き方が定着する
などの指摘があった。

以上

上限規制 複数月平均違反で初送検――上田労基署

長野・上田労働基準監督署(森孝行署長)は、製造部門で働く労働者8人に上限規制を超えて違法な時間外労働を行わせたうえ、虚偽の帳簿を提出して隠ぺいを図ったとして、鋼材・鉄筋加工販売業者を長野地検上田支部に書類送検した。立件した今年3~8月の時間外労働は毎月100時間を超えており、中小企業に上限規制が適用された令和2年4月以降、複数月平均80時間以内の規制(労働基準法第36条6項3号)違反での送検は全国でも初めてとなる。

医師の時間外上限 原則年960時間に――厚労省

厚生労働省は令和6年4月に施行となる医師の時間外・休日労働の上限に関する省令案をまとめた。一般的な医業に従事する医師の上限を1カ月100時間未満かつ年960時間以下とする一方、地域医療の確保や技能向上のために上限を超えざるを得ないケースが想定されるとして、特例水準を設けている。特例水準は年1860時間を限度とするが、地域医療確保にかかる特例水準については、17年度末の廃止に向け、3年ごとの見直しを行っていくとした。

経団連提言 職種・業務で労働法制選択

経団連は、先行き不透明感が強く、将来予測が困難な時代にあっては、職種・業務に適合した「労働法制」を選択できる仕組みが重要とする提言を明らかにした。先ごろ開催した内閣府の規制改革推進会議に提出した。近年、労働時間と成果が連動しない業務が拡大していると同時に、労働生産性向上が求められているためで、具体的には企画業務型裁量労働制の対象業務の早期拡大を主張している。「裁量的にPDCAを回す業務」「課題解決型開発提案業務」の2つを対象業務に加えるよう指摘した。

2労基署が別件で同時送検――甲府労基署・岡谷労基署

山梨・甲府労働基準監督署(篠原敦署長)と長野・岡谷労働基準監督署(柴崎正彦署長)は、同じ建設業者をそれぞれ異なる労働安全衛生法違反の疑いで10月25日に書類送検した。山梨では代表取締役が自ら無資格の労働者に不整地運搬車の運転を指示し、発注者から告発された。長野では116日間の休業を要する労働災害が発生したにもかかわらず、労働者死傷病報告の提出を怠っている。各労基署は異なる端緒から個別に捜査へ着手したが、捜査を進めるなかで互いに同社を対象としていることを知り、同時に送検している。

女性活躍 職場での意識改革を徹底――都審議会

都知事の諮問機関である東京都男女平等参画審議会は、「東京都男女平等参画推進総合計画の改定に当たっての基本的考え方(中間のまとめ)」を取りまとめた。令和4~8年度を対象とする計画に盛り込むべき取組みに、時間や場所にとらわれない多様な働き方のさらなる普及・定着の後押しのほか、女性の職域拡大・登用促進、出産・育児などと両立できる職場環境の整備を挙げた。男女間の所得格差や女性管理職比率の低さの背景には、固定的性別役割分担意識の存在があるとみて、企業における意識改革に向けた啓発に取り組むとした。

タクシーの拘束時間288時間に――厚労省・改善基準告示

厚生労働省は、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」を大幅に見直す方針である。ハイヤー・タクシーの日勤の拘束時間は、現行1カ月299時間から288時間に11時間短縮、バスでは、現行4週平均で1週65時間を1カ月について年3300時間を超えない範囲で281時間などとする方向である。自動車運転業務については、時間外上限規制適用猶予後の上限時間を休日を含まず年最大960時間としているが、早期に一般則に移行できるよう協議を加速すべきとされている。

JOB型人事制度への期待

日経BP総合研究所の調査によると、JOB型人事制度にどんな期待をしているかで
最も多かったのは「専門性をより高めやすい」で62.7%あった。次いで「年功より
も能力やスキルに応じた登用が進みやすい」44.9%、「高度な専門能力を持つ人材の
厚遇につながる」44.5%だった。上位3大理由からは、ビジネスパ-ソンが専門性
を重視している様子が浮かび上がる。
その他では、「職務や成果に応じた人事評価制度の方が意欲を高めやすい」「テレワ
-クの普及に伴って求められる自律性をベ-スとする制度と適している」「年次(若さ)
などを理由に本業以外の雑務を任されることが減る」「自社の人材獲得力を高める上
で欠かせない職種別採用や職種別賃金と親和性がある」といったJOB型人事制度の
特性を期待としていることがわかった。

雇止めを不当労働行為認定――大阪労委

大阪府労働委員会(宮崎裕二会長)は、学童保育クラブで指導員として働く組合員らを雇止めし、撤回などを求める団体交渉にも応じなかったとして、㈱共立メンテナンス(東京都千代田区)を不当労働行為と認定した。組合員10人の職場復帰とバックペイの支払い、団交へ応じることを命じている。同社は大阪府守口市から学童保育の業務委託を受けた際、同市に雇用され指導員として3~36年間勤務してきた組合員らを同じ職務で有期雇用していた。雇用時の説明会では給与水準を保つ現給保障について説明するなど、市営時代の実績を引き継ぐ姿勢を示していた。

キャバクラ女性従業員 労働者性を認める――さいたま地裁

埼玉県内のキャバクラ店で働いていた女性従業員が残業代など1100万円の支払いを運営会社に求めた裁判で、さいたま地方裁判所による関与和解が成立していたことが分かった。女性従業員の代理人らがこのほど記者会見で明かした。和解は両者間の契約が労働契約であったと認め、運営会社が解決金を支払う内容。解決金の額は非公表となっている。代理人によると、今年4月頃に同地裁から労働者性について肯定的な心証が示され、和解に向けた協議が始まったという。

雇用保険制度 マルチ高年齢被保険者新設――厚労省

厚生労働省は、令和4年1月1日から65歳以上の高年齢労働者を対象とした「雇用保険マルチジョブホルダー制度」を新設する。複数の事業所で勤務する65歳以上の高年齢労働者が、2つの事業所での勤務を合計して一定の要件を満たす場合に特例的に雇用保険被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができる。マルチ高年齢被保険者として雇用保険の適用を希望する者が加入要件に該当する場合、事業主は必ずこれに対応しなければならないとした。