幹部候補に「自社株報酬」を――経産省・改訂版「企業統治システム指針」

経済産業省は、企業価値を高めるコーポレートガバナンス(企業統治)改革の実践に求められる取組みを示す「コーポレートガバナンスシステムに関する実務指針」を改訂した。新たに次世代の社長・CEOを支える幹部候補人材を育成し、エンゲージメントの向上を図る必要性を強調している。具体策として、中堅層から候補者を確保して早期育成を進めつつ、自社の株式を付与する「自社株報酬」の採用を提言した。企業価値や株価に対する意識を早い段階から高められ、優秀な人材の引留めにもつながるとしている。

新規採用以降は会社の「責」――東京高裁

都内を中心に飲食店を展開する㈲リバーサイドで働くアルバイト労働者が合意退職は無効と訴えた裁判で、東京高等裁判所(三角比呂裁判長)は労働契約上の地位確認のみ認めた一審判決を変更し、一部期間のバックペイ支払いを命じた。労働者が復職意思を明確にし、同社がアルバイトを新規に雇い入れた令和2年3月以降は同社の責めに帰すべき事由により就労できなかったと判断している。労働者は平成31年3月12日の勤務終了後、上司に「3月末か4月半ばには辞める」と告げ、以降のシフト希望を提出せず出勤もしなかった。同高裁は退職の時期があいまいなため、確定的な退職の意思表示といえないと指摘。合意退職成立を認めなかった。

裁量労働制見直し 本人同意を前提に適用――厚労省・検討会報告書

厚生労働省は、裁量労働制見直しの方向性などを示した「これからの労働時間制度に関する検討会報告書」を取りまとめた。労働者が自らの意思で自律的・主体的に働くことを選択できるよう、裁量労働制の適用に当たり、本人の同意を得るようにするのが適当と提言した。運用中に同意が撤回された場合には、制度の適用から外れることを明確化する。健康確保の徹底に向け、使用者に求める健康・福祉確保措置の強化も提起した。措置のメニューの追加や、複数措置の実施などの案を盛り込んでいる。

トップ人材育成へ独自研修――情報サービス産業協会

情報サービス産業協会(=JISA、原孝会長)は、数年後に社会のデジタル化をリードし得る「トップITアスリート」を育成するため、独自の研修プログラムを創設した。会員企業が送り出す入社10年目程度の15人を対象とし、7月から第1期の研修を開始した。約半年間、180時間以上にわたるプログラムでは、群馬県の協力のもと、実際に地方創生をテーマに課題探索から解決策立案に挑戦する体験型研修も行う。将来的には会員外からの参加も可能とし、500~1000人のトップITアスリート輩出をめざす。

新型コロナ 宿泊・自宅療養証明は不要――厚労省

厚生労働省は新型コロナウイルスの感染者に対する傷病手当金の支給に関するQ&Aを改訂した。支給申請に当たり、「宿泊・自宅療養証明書」の提出は必須ではなく、保険者が一律に添付を求めるのは適切ではないとしている。第7波に突入したなかで、医療機関や保健所の業務ひっ迫に配慮した形だ。何らかの証明書を求める場合には、HER―SYSの電子証明の活用が考えられるとした。やむを得ない理由により医療機関を受診していない場合は、事業主証明で労務不能かどうかを確認するとしている。

男女賃金差の公表義務化 正規、非正規など3区分で――厚労省・改正女性活躍関連省令施行

厚生労働省は7月8日、労働者301人以上の企業に対して男女の賃金の差異の公表を義務付ける女性活躍推進法の改正省令を施行した。情報の公表は、正規雇用労働者、非正規雇用労働者、全労働者の3区分で実施する。301人以上企業は毎年、雇用区分別に男女それぞれの平均年間賃金を算出したうえで、男性賃金に対する女性賃金の割合(%)を算出、公表しなければならない。事業年度の終了後、おおむね3カ月以内の公表が求められる。

第270話「テレワ-ク導入5割超す」

総務省の2021年「通信利用動向調査」によると、テレワ-クを導入済みと回答した企業の割合は前年比4.4ポイント増の51.9%となった。
5割を超えたのは、調査を始めた1999年以来初めて。コロナ禍前の2019年の調査からは2.5倍となった。
調査は、期間を定めずに雇用する従業員を100人以上抱える民間企業に対し、2021年8月末時点の導入状況を尋ね、2396社から回答を得た。

産業別のテレワ-ク導入割合は「情報通信業」が97.7%で最も高く、「金融・保険業」が82.4%で続いた。
テレワ-ク導入企業の割合は、2019年調査では20.2%だったが、コロナ禍が始まった2020年調査では47.5%と大幅に上昇していた。

以上

カスハラ対策 業界統一の定義・基準を――交運労協

交通運輸、観光サービス関係の産業別労働組合で構成する全日本交通運輸産業労働組合連合会(=交運労協、住野敏彦議長)は、カスタマーハラスメント防止ガイドラインをまとめた。厚生労働省の対策マニュアルに基づいて各種防止対策を示した一方、対策推進には業界として統一的なカスハラ定義、判断基準を共有しておくことが必須と訴えた。7月下旬以降、構成組織とともにトラック協会、ハイヤー・タクシー連合会などの各事業者団体との間で意見交換の場を持ち、業界別の基準作成につなげていきたいとしている。

デジタル人材育成を支援――愛知県

愛知県は7月から、業務のデジタル化などを推進する「デジタル人材」の育成を支援するため、中小企業約80社に対してITコンサルティングなどの経験が豊富な専門家を無料で派遣する事業を開始する。社員の意識改革やスキルマップ作成など各社の課題を抽出し、解決策の提案や情報提供を行う。さらに約15社に対し、個別の研修カリキュラムを作成し、実施を支援する。同県が昨年度行った調査によると、多くの企業が「自社の業務にも精通する人材」を求めていることから、社内での育成を後押しする。

固定残業代 一方的な減額認めず――東京高裁

医薬品開発業務の請負などを営む㈱インテリムで働いていた労働者が賃金減額などを違法として訴えた裁判で、東京高等裁判所(志田原信三裁判長)は固定残業代の減額を有効とした一審判決を変更し、一方的な減額は認められないと判断した。一審の東京地方裁判所は労働基準法所定の方法で算定した金額を下回らない限り、どのような方法で支払っても自由であると指摘。固定残業代を廃止し、実労働時間に応じた割増賃金を支払う扱いに変更するのに、労働者の同意は必要ないとしていた。

都内事業所 平均時給額1331円に――東京都 パートタイマー実態調査

東京都の「パートタイマーに関する実態調査」によると、都内事業所におけるパートの平均時給額は1331円だった。産業別では卸売業,小売業1202円、宿泊業,飲食サービス業1129円となり、4年前の前回調査と比べて46円増、15円減となっている。複数回答で賃金額の決定基準を尋ねると、「職務の内容」(66.3%)を選択した事業所の割合が最も高く、5割台で「能力・経験」(58.4%)と「最低賃金」(50.8%)が続いた。賞与を支給している事業所の平均年間支給額は、「1万円以上5万円未満」が32.6%、「5万円以上10万円未満」が24.6%を占め、6割弱が10万円未満としている。

派遣労働者 雇止めを不法行為と認めず――東京地裁

介護・看護の人材派遣を営む㈱グッドパートナーズで働く派遣労働者が、施設内の虐待の自治体への通報をきっかけに雇止めに遭ったのを不服とした裁判で、東京地方裁判所(林﨑由莉子裁判官)は雇止めを不法行為に当たらないと判断した。同社に事前に報告せず通報したことが理由と認定する一方、事前の報告を求める行為が違法性の高いものとはいえないと指摘。労働者の慰謝料請求を退けた。高齢者虐待防止法では、介護士は虐待が疑われる高齢者を発見した場合、速やかに自治体に通報しなければならないと定めている。通報を理由とした不利益取扱いは禁止されている。

副業容認など情報公開促進――厚労省

厚生労働省は、副業・兼業を行う際の労働時間管理のあり方などを示した副業・兼業の促進に関するガイドラインを改正する。ガイドラインにおける「企業の対応」事項として、副業などに関する情報公表の取組みを追加し、企業の方針に関する情報公開を推奨していく。労働者の職業選択の幅を広げ、多様なキャリア形成を促進するのが狙い。自社のホームページなどで、副業・兼業を許容しているか否かと、許容する際の条件を公開するよう促す。今年7月上旬に改定予定。

第269話「副業、転職時に重要視4割」

働く女性のうち、4割強が「転職先を決める際に、副業できるかどうかが重要な条件」と考えていることが、キャリアデザインセンタ-の調べでわかった。
2022年1~2月に、同社の女性向け転職サイトで、女性746人を対象に実施。
副業をしたことがあると答えたのは全体の34%あった。
副業経験がある人に月収を聞くと、「1~4万円」が53.8%と最も多かった。
平均すると6.2万円で、10万円以下の人が8割以上占めるものの、中には20万円以上の副業収入を得る人もいた。

一方、副業経験のない人の中で、今後副業を「機会があればやりたい」「ぜひやりたい」と考えている人は9割以上にのぼった。

また、副業OKかどうかが転職先を決める際に重要な条件になるか、という問いに対しては「非常に重要」「やや重要」の重要派が46.8%にのぼり、新型コロナウイルス下で働き方が変わる中、副業への期待は大きいと言える。

以上

常用者男性 専門・技術職30.6万円に――厚労省 中途採用時賃金(3年度下半期)

厚生労働省が集計した令和3年度下半期の「中途採用者採用時賃金情報」によると、常用者・男性の職業別平均賃金は、専門的・技術的職業30.6万円、生産工程・労務の職業22.6万円などとなった。前年下半期と比べて順に、0.3%、3.2%増加している。建設・採掘や運搬・清掃などの職業を含め、現業系では軒並み3%台の伸びを示した。都道府県別では、東京が34.0万円と突出して高く、神奈川が29.5万円、大阪が26.3万円、愛知が26.2万円、福岡が25.1万円などと続く。

育成活性化へ労使に補助金――中企庁・今後の政策方向性

人材育成の活性化へ労使双方にインセンティブを設ける――中小企業庁は、今後の中小企業政策の方向性を取りまとめた。企業の成長を妨げている要因として、経営者の高齢化による現状維持志向や人材の教育・経験不足を挙げている。経営層に対して人材育成の必要性の理解を促し、社員に研修プログラムなどを受講させる際には労使双方へ補助金を支給するなど、人的資本の投資を促す。経営スキルの強化を図るには大企業のOB人材の活用が有効として、マッチング機能を全国展開するとした。

休業手当支払いを命じる――東京高裁

東京都内にホテルを複数店舗展開するホテルステーショングループで働いていた労働者が、新型コロナウイルスの感染拡大により同意なく所定労働時間を減らされたと訴えた裁判で、東京高等裁判所(木納敏和裁判長)は減少した時間分の休業手当支払いなどを命じた一審を維持した。労働者は令和2年3~7月にかけ、1日の所定労働時間を2時間~3時間15分減らされた。同グループは赤字経営のなかで「従業員の生活に悪影響を及ぼさないように配慮した」と主張したが、同高裁は「所定労働時間を一方的に変更できる法律上の根拠にならない」と退けている。