時季変更権 夏休み期間中の行使は適法――東京高裁

都営バスの運転者を務める労働者が、年次有給休暇の取得を妨害されたことにより、持病が悪化したとして、東京都に200万円の損害賠償を求めた裁判で、東京高等裁判所(野山宏裁判長)は請求を棄却した一審判決を維持した。労働者は通院を理由に年休を申請したが、夏休み期間中はシフト確定後、個人で交代者を探すルールが長年の労使慣行になっているとして、都交通局は取得を拒否した。同高裁は定時運行が使命の業態で、代替要員確保が困難な期間中に原則時季変更権を行使する運用は、不合理といえないとしている。

労働者派遣 雇入れ時に訓練計画説明――厚労省

厚生労働省は、派遣元・先事業主向けの労働者派遣事業関係業務取扱要領の令和3年1月版と4月版を公表した。派遣法施行規則や派遣元・先指針の改正などを反映したもの。1月版では、派遣元に対して雇入れ時における教育訓練計画の明示と説明を求めたほか、派遣先は派遣先に課されている労働法令上の義務に関する派遣労働者からの苦情に誠実・主体的に対応しなければならないとした。4月版では、派遣労働者の雇用安定措置について、派遣元は本人から希望を聴取しなければならないと明記した。

M&A減税措置 給与引上げ額の25%控除――通常国会

政府は、令和3年度税制改正で、中小企業のM&Aや雇用確保促進に向けた減税措置を創設する方針である。経営資源集約化によって生産性向上をめざす事業計画の認定を受けた中小企業が、M&Aを実施した場合に、投資額の10%を税額控除する。M&Aに伴って行われる労働者の移動などの際に、給与などの総額を対前年比で2・5%以上引き上げると、その増加額の25%を税額控除する。M&A実施後のリスクに備えた準備金についても、投資額の最大70%を損金算入できるようにする予定だ。

5店舗12人に違法残業――大阪労働局

大阪労働局(木暮康二局長)の過重労働撲滅特別対策班(かとく)は、計5店舗でアルバイトを含む労働者12人に36協定を超える違法な長時間労働を行わせたとして、飲食店経営の㈱グルメ杵屋レストラン(大阪府大阪市)と実行行為者である5店舗の責任者1人を、労働基準法第32条(労働時間)違反などの疑いで大阪地検に書類送検した。時間外労働は最長の者で、月110時間に上っている。複数店舗で広範囲にわたって対策を怠っていたことを重くみて、かとくによる厳正対処となった。

緊急事態宣言発令 テレワーク強化期間に設定――東京都

東京都は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言の発令を受けて、緊急事態措置が終了する2月7日までを「テレワーク緊急強化月間」に設定した。事業主に対し、「週3日・社員の6割以上」のテレワーク実施や「出勤者数の7割削減」を要請するとともに、中小企業制度融資の拡充や、宿泊施設を活用する事業者への経費支援を実施する。たとえば、週3日・6割以上のテレワークに取り組む「東京ルール宣言企業」が制度融資を利用する際の保証料を全額補助する。

緊急事態宣言 雇用シェア出向に助成――厚労省

厚生労働省は、関東1都3県などを対象とする緊急事態宣言の発出に伴い各種経済支援策の拡充と新たな助成金制度を設けるとした。新設するのは産業雇用安定助成金(仮称)で、コロナ禍において事業が縮小し、労働者の雇用を在籍型出向により維持する事業主に対し、賃金や労務管理費用など最大10分の9を支援する。雇用調整助成金は、営業時間短縮に協力する大手飲食店などの助成率を最大100%に引き上げる。緊急小口資金・総合支援資金については、返済の開始時期を、最長で令和4年3月末まで延長するとした。

大卒・事務系 21.8万円で横ばい――経団連・東京経協 20年3月卒初任給調査

経団連と東京経営者協会が実施した2020年3月卒の決定初任給調査によると、大学卒・事務系は21万8472円、技術系は21万7864円だった。前年実績からの引上げ額はそれぞれ1531円、1185円で横ばいとなっている。初任給の引上げ改定をした企業は全体の42.6%で、前年調査と比較して14.6ポイント減少した。据置きとした企業が15.0ポイント伸び、57.4%となっている。決定に当たって最も重視した判断要因では、前回初めて2割に到達した「人材確保の観点」を挙げる割合が16.7%に低下した。

違法な引抜きと認めず――知財高裁

アパレル大手の㈱TOKYO BASEが、人事情報を不正に使用して従業員を引き抜いたとして、同社の元執行役員らを訴えた裁判で、知的財産高等裁判所(森義之裁判長)は請求を棄却した一審判決を維持した。元執行役員は退職後、同社の人材開発チームの元マネージャーと2人のデザイナーとともに、新たなブランドを立ち上げた。同社は違法な引抜きで損害が発生したとして160万円の支払いなどを求めたが、知財高裁は、勧誘は自由競争の範囲内であり、人事情報を使う必要性も認められないと判断している。

フリーランス保護 発注者の問題行為を明確化――政府

政府は、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(案)を作成した。独占禁止法、下請代金支払遅延等防止法および労働関係法令の適用を整理し、問題行為を明確にしている。事業を発注する業者が優越的地位を利用して、報酬を減額したり、著しく低い報酬で一方的に決定するなどの行為は独禁法違反などとされる。労働関係法令では、労働基準法と労働組合法のそれぞれの労働者性判断を説明している。併せて、同ガイドラインに基づく契約書の雛形も示した。

「テレワ-ク実施率」

民間調査会社のパ-ソナル総合研究所がコロナ第3波に入った昨年11月に

実施したテレワ-ク実施率の調査結果によると、実施率は全国平均で

24.7%となり昨年4月の緊急事態宣言時より3.2ポイント下がった。

同研究所によると「出勤者数の7割削減はかなり高い目標だ」と指摘。

テレワ-クの実施は職種や会社規模による差が大きい。職種では、

企画・マ-ケティングやコンサルタント64.6%、ウェブデザイナ-61.4%

などで6割を超える一方、現場作業員6.2%、ドライバ-2.5%などは低く

なっている。規模では、従業員1万人以上だと45%だが、100人未満では

13.1%で3.4倍の開きがあった。

様々な職種を抱える企業の中には、社内の不公平感が高まることを恐れ、

実施目標を決められず現場の裁量に委ねているケ-スがあると指摘。

経営陣や業界団体が目標を明確化しトップダウンで進め、その上で

テレワ-クが可能な職種は完全実施し、テレワ-クが難しい職種でも業務

を細分化して週に1、2回は出社させないといった対応を取り、出社せざる

を得ない人には手当を支払って不公平感を解消することも有効だとして

いる。

以上

コース制度一本化を図る――損保ジャパン

損害保険ジャパン㈱(東京都新宿区、西澤敬二取締役社長)は昨年10月、非管理職の役職階層を3段階に大括り化し、従来はグレードごとに定めていた在留年数や昇格目安の年数を撤廃した。併せて従来の勤務地の範囲によるコース制度を改め、一本化している。転居転勤の有無は処遇面でのみ反映するかたちとしたもので、最大で年収に2割程度の加算を行う。制度改定を通じて若手の昇格スピードを早め、年功的な人事制度からの脱却や多様な人材が活躍可能な環境づくりなどをめざす。

中小向けBCPモデル策定――愛知県

愛知県は、新型コロナウイルス感染症に対応したBCP(事業継続計画)作成を支援するため、中小・小規模企業向けに「あいちBCPモデル」を策定した。簡単に作成できるようチェック方式や選択式を多用した様式例を示し、無料ダウンロード可能としている。作成までの手順を解説したうえ、製造現場や販売店舗などの職場別に予防策や備蓄品に関するチェックリストを併せて掲載している。

賞与期待権侵害を認めず――東京地裁

日産自動車㈱(神奈川県横浜市、内田誠代表執行役社長兼最高経営責任者)で6カ月半働いた労働者が、賞与に関する期待権を侵害されたとして、140万円の支払いを求めた裁判で、東京地方裁判所(布施雄士裁判官)は請求を全面的に棄却した。労働者は採用通知書に記載された想定年収から、賞与を受給する期待権があると主張した。同地裁は、賞与は労使交渉を経て決定しており、示した年収額は「『想定』の域を出ず、一定の給与を確定的に表示したとはいえない」と退けている。