第319話「正社員の人手不足52.1%」

中堅・中小企業を中心に人手不足が深刻さを増している。
帝国デ-タバンクの調査によると、正社員が不足していると感じている企業は2023年10月時点で前年同月比1.0ポイント高い52.1%となった。
10月としては2018年に次いで過去2番目の高水準。

業種別では訪日客が回復している「旅館・ホテル」などで人員圧迫が目立つ。
旅館・ホテルは人手不足と回答した割合が前年比10.2ポイント高い75.6%で、日本政府観光局によると10月の訪日客数は251万6500人と2019年の同月を0.8%上回った。
観光需要は回復が目立つ一方、コロナ禍での離職者が多く人手の確保が追いつかない状況が続いている。

デジタル化による生産効率向上を図る企業が増えるなか、「情報サ-ビス」も人手不足との回答が3.8ポイント増えて72.9%だった。
エンジニアの採用競争は一段と激しくなっている。

今春の残業規制の厳格化による影響が懸念されている建設や物流もそれぞれ7割近くが不足感を訴えた。

人手不足は中堅・中小には事業継続に関わる問題。
帝国デ-タバンクの調査では、2023年1月~10月の人手不足による企業の倒産件数は前年同期比78%増の206件となり、集計値がある2014年以降の年間最多件数を上回った。

以上

主要大手の要求水準 平均で総額1万8千円超――自動車総連

自動車総連(金子晃浩会長)は2月14日、メーカー部会の大手12組合が同日提出した要求内容を明らかにした。
平均賃金要求については、うち10組合の単純平均で総額1万8320円(定昇分含む)に上り、率では5・51%に当たるとしている。
トヨタ労組は要求内容を非公開とし、ダイハツ労組は賃金改善分を要求しなかった。
多数の労組で前年を大幅に上回る水準の要求となっており、金子会長は「物価上昇を上回る原資を要求した」と評価した。

コンピテンシーで基本給洗替え――タムラ製作所

電子部品メーカーの㈱タムラ製作所(東京都練馬区、浅田昌弘代表取締役社長兼CEO)は、ライン長の基本給について役職別に標準額を定める一方、コンピテンシー評価の結果に応じて全役職で定額の加算・減算を行っている。
コンピテンシー評価には、部下に挑戦の機会を与えているか、今後成長を期待することを伝えて自信をつけさせているか――などの“心理的安全性”に関する4項目を盛り込み、評価全体の約25%に反映することで、積極的に挑戦する風土の醸成を促している。

候補者を半年間お試し登用――サイバー・バズ

企業のマーケティング支援などを行う㈱サイバー・バズ(髙村彰典代表取締役社長)は、次世代の管理職・経営者育成に取り組んでいる。
2022年にはマネージャー候補を社内公募・選考し、半年間「マネチャレ」としてマネージャーと同等の裁量権を与える制度を新設した。
現在までに6人のマネチャレが誕生し、1人は正式にマネージャーに昇進した。
23年には経営者育成を目的とした「髙村塾」を開講。役員候補の管理職などを対象に、社長と経営について議論する機会を与えている。

大卒・モデル賃金 非管理職35歳33.1万円に――関経連ほか 関西地域の標準者賃金

関経連など関西地域9つの経営者団体が共同で実施した「標準勤続者賃金」調査によると、大卒・非管理職のモデル賃金22歳が22.0万円、35歳が33.1万円などとなり、管理職は45歳が49.8万円、55歳が56.9万円だった。
前年結果に比べて、非管理職層の若年層では2.4~3.3%伸び、管理職の35歳、45歳でも3%台の伸びを示した。
一方で非管理職層の50歳代は1%程度落ち込んでいる。
初任時22歳における業種別の水準は、化学22.7万円、機器22.5万円、金属21.8万円などとなっている。

満70歳まで再雇用期間延長――東北電力

東北電力㈱(宮城県仙台市、樋口康二郎取締役社長)と東北電力ネットワーク㈱は、従来以上に多様な働き方を可能にするため、2024年度から人事・賃金制度の見直しを進める。
若年層の等級大括り化を図り、勤務地を県単位で限定できるコースを用意するほか、再雇用の上限年齢を段階的に70歳まで引き上げる。
雇用区分の幅を広げ、ライン長として働き続ける「EXスタッフ」、週3日勤務も選べる「Eスタッフ」を新設する。

人口減少社会 中小の人材確保で議論へ――厚労省・労政審労政基本部会

厚生労働省はこのほど、就業構造などの基本的課題について検討する労働政策審議会労働政策基本部会(部会長・守島基博学習院大学教授)を8カ月ぶりに開き、「人口減少社会における中小企業・地域を支える産業における労働者の能力発揮」を同部会(第4期)の検討テーマにすることを決定した。
中長期的な人手不足の課題や中小企業などの人手確保への対応、労働政策のあり方などを論点に、検討を進める。
令和6年度末をめどに報告書を取りまとめる方針だ。

事務課長ピーク 52~56歳未満で62.6万円――5年・民間給与の実態(確報)

人事院の職種別民間給与実態調査によると、課長級の所定内給与がピークを迎えるのは事務課長が52~56歳未満62.6万円、技術課長が56歳以上62.0万円だった。
新人クラスの係員20~24歳未満の水準と比べて、いずれも2.7倍となっている。
一方、配偶者手当を支給している企業の割合は56.2%だった。
このうち9割で配偶者の収入による制限を設けており、収入制限の額は「103万円」が42%、「130万円」が35%などとなっている。

小規模の9割で転嫁進まず――熊本県商工会連合会

熊本県商工会連合会(笠愛一郎会長)は、会員事業所の経営課題に関する調査結果を取りまとめた。
「価格転嫁ができていない」または「転嫁をしたものの不十分」と回答した事業所の割合は90%に上り、転嫁が進んでいない実態が明らかになった。
調査では、台湾の半導体メーカーTSMC進出の影響も尋ねており、わずかだがすでにマイナスの影響が出ているとの声が聞かれた。
そのうちの58%が、「採用困難などによる人手不足」を訴えている。
同連合会では今後、県や国に対して要望活動を進めていく。

男性育休取得支援 企業に最大410万円支給――東京都・来年度事業

東京都は来年度、育児休業の取得を推進する企業への支援策を強化する。
従業員が一定期間以上育休を取得した企業を対象とする「育業応援奨励金」のうち、「ママコース」と「パパコース」の支給上限額を引き上げる。
具体的には、育休を支える同僚への応援手当支給などに対する加算措置を新設し、ママコースで計165万円、パパコースで計410万円まで支給する。
両コースは併用できる。
新事業としては、「男性育業推進リーダー」制度を立ち上げる。社内研修の講師を担うリーダーとして男性の育休経験者を選任した企業に対し、奨励金100万円を給付する。

第318話「創業10年の日本企業の成長は遅い」

情報処理推進機構(IPA)が企業向けのソフトウエアを開発・販売する新興企業を対象にした調査(米国261社、日本135社から回答)によると、創業10年以上の米国ソフトウエア振興企業のうち、上場直前の「レイタ-期」(事業が拡大し持続的なキャッシュフロ-がある)まで成長した企業が7割に上ったことがわかった。

一方で日本は3割にとどまった。
米国企業は柔軟に事業モデルを変換するのに対し日本企業は消極的である点が成長スピ-ドの差につながっているようだ。
環境変化などに合わせた事業モデルの変換を行ったとする米国企業は、創業初期の「シード期」からレイタ-期の4期間の平均で94%を占めた。
対して、日本企業は同50%だった。
事業モデルを変換した理由(複数回答可)を聞くと、米国企業では「他社との競争激化」が52%で最多だった。
海外に比べ日本の起業家はリスクを避ける傾向にあるとする業界の声は多い。

だが、競争に対応するための大きな変革も受け入れなければ、その先の成長機会は望めない。
日本でもクラウド経由でソフト提供する「SaaS」企業が増えるなか、米国に見習うことは多くありそうだ。

以上

中小建設・新卒採用 徹底教育し誰でも現場監督に――牧野電設

牧野電設㈱(牧野長代表取締役、東京都練馬区、34人)は、2011年から新卒採用を開始し、約10年間で社員数の3倍増に成功した。
文系学部出身者や女性を積極的に採用し、入社後に2カ月間かけて行う新入社員研修では、社長自らが現場監督としての基本を徹底的に教えている。
内容は電気に関する基礎知識に留まらず、コストに関する考え方やマナーにまで及ぶ。
手作りの研修マニュアルは毎年、内容の改訂を重ね、今では300ページを超えた。
社内の研修施設には、100種類の資材や工具を用意する。
育児休業などが取得しやすい環境を整備するため、複数人で1つの物件を担当する制度も採り入れている。

管理職層の賞与は最大2.8倍――OKI

沖電気工業㈱(=OKI、東京都港区、森孝廣代表取締役社長執行役員兼最高経営責任者)は昨年4月、管理職層のグレード体系を複線化し、マネジメント職やプロフェッショナル職など3つの役割に区分した。
役職の高さや組織で求められる役割の違いを明確に定義したもので、基本給に関しては等級別定額制を採用している。
賞与は、50~278%のメリハリを利かせる。
ライン長のポストは6階層に格付けし、役割を定義する「役割プロファイル」を計10種類策定した。

フリーランス新法 1カ月以上に禁止規定適用――公取委

公正取引委員会の有識者検討会はフリーランス新法の政省令に関する報告書をまとめた。
契約始期から終期までの期間が1カ月以上の業務委託契約を、同法が定める7つの禁止行為の対象にすべきとしている。
6割の契約が規制対象になるとみられる。
同法は政令で定める期間以上行う業務委託契約において、委託事業者はフリーランスに対し、受領拒否や報酬減額など7つの行為を行ってはならないと規定している。
契約締結時の明示事項は、下請法の書面記載事項をベースに、報酬をデジタル払いにする場合に必要な事項など16項目を示した。
同法は今秋施行される予定。