退職者の「秘密管理性」を否定――東京地裁

食品の商品企画・開発・販売などを営むエイシン・フーズ㈱が、秘密保持契約に違反したとして退職労働者と転職先会社に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁(佐藤達文裁判長)は訴えを全面的に棄却した。同社は同労働者が製造規格書などの情報を転職先会社に漏えいしたと主張したが、情報は各従業員がアクセス可能なサーバに保管されており、従業員が秘密として認識できる形で管理されていなかった。秘密保持契約に定める「機密事項」に当たらないと判断した。

高齢者雇用推進へガイドライン――日本人材紹介事業協会

一般社団法人日本人材紹介事業協会(渡部昭彦会長)は、人材紹介業における高齢者雇用を推進するため、企業に求められる配慮・工夫や人事制度などを示したガイドラインを作成した。社会全体で高齢層の転職の増加が予想されるなか、高齢求職者の事情に共感できるシニアカウンセラーなどとして活用することで、より質の高いサービスの提供につなげるのが狙い。高齢人材の活躍を促すための工夫として、勤務の時間・場所など本人の事情に考慮した柔軟な勤務形態の設定などを挙げている。

大学卒・男性20.8万円に――厚労省・決定初任給調査

厚生労働省「賃金構造基本統計調査(初任給)の概況」によると、平成29年の大卒決定初任給は男性が0.9%増の20.8万円、女性は2.1%増の20.4万円だった。ともに26年からの上昇傾向が続き、伸び率でも前年結果を上回っている。男女計でも、過去4年間で最高となる1.3%増の伸び率を示した。100人未満規模が500円アップにとどまる一方、1,000人以上が4,100円アップと大きく伸び、全体平均を押し上げている。

9割が指導標など交付――3経協「働き方」調査

愛知、岐阜、三重の3経営者協会は、労働時間および働き方改革に関する実態調査結果を取りまとめた。昨年4月以降に労働基準監督署の臨検を受けた企業のうち、是正勧告書や指導票を交付された企業は9割に上っており、2年前の前回調査と比べて2割増加した。労働時間の適正な把握に向けたガイドラインについては4割の企業が未対応。労働時間の自己申告制を採る企業が、客観的な労働時間との乖離を指摘された例もあった。

最低でも物価上昇分確保を――UAゼンセン・18春闘

連合の傘下最大で、流通・製造・外食系などあらゆる産業の労働組合が集うUAゼンセン(松浦昭彦会長)は11月6日、東京都内で開催した政策フォーラムで18春闘方針の「素案」を傘下の単組に示した。17春闘と表向き同じ「ベア2%基準」としているが、今年は物価上昇が見込めそうな情勢にあり、実質賃金の引上げとなる交渉を強く要請した。労働力人口の減少で要員不足が続いていく趨勢も指摘し、求職者に自信をもって提示できる魅力ある労働条件づくりを経営者に説くよう求めた。

東京・4人世帯27.9万円――人事院「平成29年地域別標準生計費」

今年4月の4人世帯の標準生計費は、東京が27.9万円、大阪市21.4万円、名古屋市23.4万円などとなった。人事院による全国の水準22.0万円と比べると、大阪市、名古屋市にめだった差がみられない一方で、前年比4.2%伸びた東京との格差が約6万円に拡大している。47都道府県全体では、20万~25万円の範囲に6割弱の地域が集中しており、20万円に満たないのは約3割に当たる15地域となっている。

セルフ・キャリアドックの普及加速化へ――厚労省が東京・大阪に拠点

厚生労働省は平成30年度、企業内において節目ごとに定期的なキャリアコンサルティングを実施する「セルフ・キャリアドック」の普及拡大加速化事業に着手する方針である。すでに、モデル企業14社の選定を終え、実施結果に基づく導入マニュアル、モデル就業規則を今年度中に作成する予定となっている。30年度に、同マニュアルなどを用いた普及拡大に努める。東京と大阪に、キャリアコンサルタントを配置した拠点を設けて、企業を訪問支援するとした。

設業のICT活用で最先端5技術を試行へ――国交省

国土交通省は、ICT(情報通信技術)などを活用した建設現場の生産性向上施策である「i-construction」を推進するため、AI(人工知能)を活用した受発注業務の効率化を図る技術など5件の新技術を現場で試行する。このほど、行政・現場が求める技術ニーズと、IT企業などが開発をめざす最先端技術(シーズ)のマッチングを実施し、現場で試行する技術を決定している。スマートフォンなどを活用して作業員や重機の位置を検知して災害防止につなげる技術も試す。今年度末まで実施し、活用の可能性を評価する予定だ。

大卒初任給 事務・技術とも21.3万円に――経団連・東京経協「2017年3月卒初任給調査」

経団連と東京経協が共同実施した2017年3月卒の決定初任給調査によると、大卒初任給は事務系21万2,873円、技術系21万2,774円だった。16年実績からの増減額を調べた対前年引上げ額は1,377円、1,613円となり、前年並みにとどまった事務系に対し、技術系では約200円上回っている。改定の有無については、据え置いた企業が51.7%を占め、3年ぶりに、前年から引き上げた企業の割合を逆転した。「世間相場」を最重視する企業が3割弱を占める傾向に変化はみられないが、「在籍者とのバランスや新卒者の職務価値」、「人材確保の観点」を挙げる企業が微増している。

 

フリーランスに法的保護――厚労省が専門的検討を開始

厚生労働省は、フリーランスの法的保護に関する専門的検討を開始した。クラウドソーシングの普及、兼業・副業の拡大などにより、雇用関係によらない働き方が増加しているものの、法的保護制度が整備されておらず、様々なトラブルにつながっている。それぞれの働き方において、権利義務関係を明確化した上で、公正なルールの形成に力を入れる考え。検討結果は、労働政策審議会の労働政策基本部会に提出する。

ベトナム人実習生に100時間超の時間外で送検――所沢労基署

埼玉・所沢労働基準監督署(井出章署長)はベトナム人技能実習生5人に違法な時間外労働をさせたとして、㈲ラビット(埼玉県入間市、機械器具製造業)と同社の取締役社長を労働基準法第32条(労働時間)違反の疑いで書類送検した。同社は今年1月から4月1日までの間、ベトナム人技能実習生5人に対し、法定労働時間を超える労働をさせた。36協定の届出はあったが、別法人の従業員が過半数代表者にされており、有効ではなかった。

役職層に4種の職群制運用――ニチレイフーズ

㈱ニチレイフーズ(東京都中央区、大櫛顕也社長)は、管理職層の役割を明確にし、キャリア・ゴールや働き方を多様化した新職群制度を運用している。管理監督者の範囲を上位3グレードに絞り込んだうえ、非組合員層の役職レベルに対して職務限定・地域限定の3職群を設けたもの。総合職コースに当たる基幹職群を含め、相互転換を可能としている。給与レンジが大きく重複していた基本給体系は、グレードごとに21号俸を上限とするシンプルな設計へ改めた。昇降給・昇降格に用いるコンピテンシー評価も再設計し、グレード間の関係を明らかにしている。

「働き方改革の弊害」

日経ビジネス社がビジネスパ-ソン1036人を対象に「働き方改革の弊害と感じることは何か」について実施した調査を公表した。

1位 ~ 仕事がより過密になり疲労が増加した ・・・32.0%
2位 ~ 仕事をしたいのにできない      ・・・29.8%
3位 ~ 仕事を通じて学ぶ機会が減少した   ・・・22.7%
4位 ~ サ-ビス残業が増加した       ・・・14.9%
5位 ~ コミュニケ-ションが取りづらくなった・・・12.0%

が上位になった。
この調査でで、自身が勤める会社が働き方改革に取り組んでいるとした人の割合は62.7%あった。
取り組み始めた時期としては3割以上の企業が2年以内にスタ-トしていた。
急ピッチで進む働き方改革を現場はどのように受け止めているのか、との問いには“満足している”が12.1%だったのに対し、“不満がたまっている”が30.5%と大きく上回った。
一方で、働き方改革に対する経営の姿勢については“良い”が29.8%で“悪い”の22.4%を上回っていた。
経営サイドが打ち出す改革の方向性は評価するものの、現時点では現場の負荷や弊害が大きいと感じている実態が鮮明になった。

以上

下請Gメンが監視へ――厚労省と中企庁が働き方改革推進

生労働省と中小企業庁は来年度、中小企業に狙いを絞った働き方改革支援に総額2100億円を投入する方針である。取組みが遅れがちの中小企業においても、働き方改革の必要性を広報し、商工会・商工会議所などと連携しながら支援を進める考えである。労務管理や人手不足に関する相談体制を強化する一方、取引条件改善や生産性向上を後押しする助成を充実させる。大手企業の働き方改革が中小・下請けへのしわ寄せにならないよう下請Gメンが実態把握に回る。

改正品確法の影響 適正な工期設定進む――全建調査

全国建設業協会(近藤晴貞会長)は会員企業を対象に、建設業における担い手の中長期的な育成・確保を目的に適正な工期設定などを公共工事発注者の責務として定めた改正品確法について、運用指針の施行から2年経過後の影響を調査した。工期設定の状況が「改善された」とした割合は、発注者が国交省と都道府県のケースで4割を超える。市区町村では、指針施行後も未改善の割合が高い。週休2日(4週8休など)を実施している企業は1割に満たず、適正工期を通じた休日拡大は道半ばの状況だ。

地域限定型設け全員総合職へ――東邦銀行

㈱東邦銀行(福島県福島市、北村清士頭取)は今年10月、3コース複線型だった体系を改め、全員を総合職とする新制度に移行した。地域限定のエリア総合職を新設して3回までの相互転換を可能とする一方、役職への任用や昇格面では運用に差を設けない。ポストや職務役割の高さを反映する定額制の職務給についても、勤務地限定の有無にかかわらず同額を支給する。早期抜擢を推進するため、各役職に登用できる資格等級の範囲も引き下げた。併せて若年層の等級を細分化して昇格回数を増やしたほか、55歳以降の減額措置を緩和し、よりフラットな賃金カーブに見直している。