精神障害者雇用 半数が採用前に職場実習――愛知県

愛知県は、早期に離職する傾向が強い精神障害者の職場定着に向けて、定着度の高い同県内企業50社に対しヒアリング調査を実施した。半数近い企業が、採用前に職場実習を行っている。個別回答では、本人の特性に合った業務を切り出し、定期的な面談や声かけを実践している例がめだった。一方、精神障害者雇用が義務化された2018年以降に離職者のいた企業が7割に上るなど、厳しい現状にある。

未加入対策 法人登記簿を活用――年金機構

日本年金機構(水島藤一郎理事長)は令和3年度計画を決定し、厚生年金の加入逃れ対策として、新たに法人登記情報を活用する方針を明らかにした。これまで未加入企業の抽出のため、国税徴収データに加え、雇用保険の被保険者データを活用してきたが、洗い出しにさらに力を入れる。とくに、昨年度の計画策定段階で未加入が判明している事業所については、徹底した対応を実施し、今年度中の加入をめざすとした。コロナ禍への対応として、事業のオンライン化も進めるとしている。

中小のAI導入へ手引――経産省

経済産業省は、中小企業におけるAI(人工知能)導入を促進するため、製造業での部品外観検査と小売業・卸売業における需要予測の2領域を対象とした導入ガイドブックを作成した。中小企業が単独で導入できるよう、AI活用範囲の検討といった企画段階から導入・運用までの工程を明らかにしたうえで、各工程の留意事項を示している。外観検査の企画段階では、各製品の従来の検査時間などを洗い出して導入効果を比較し、AIを活用する製品を決定するとした。

フルタイム男性 ピークは42.0万円に――厚労省 令和3年賃構調査

厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査(概況)」によると、一般労働者・男性の所定内賃金は33.9万円で、前年から0.8%増加した。ピーク時の55~59歳の水準は42.0万円だった。全体的には1%以下の微増傾向を示したが、60~64歳では3.4%増とめだって伸びている。企業規模別にピーク時の水準をみると、大企業は48.5万円、中企業は42.0万円、小企業は34.9万円だった。大企業と小企業の格差は13.6万円と小さくない。

企業年金 死亡後受給権は子供に――最高裁

中小企業退職金共済などの企業年金の加入者の子供が、亡くなった加入者の退職金の支給は配偶者でなく自身が受けるべきと訴えた事件で、最高裁判所は子供の受給権を認める判決を下した。中小企業退職金共済法は加入者が死亡した際の相続順位について、配偶者を第1位と定めている。最高裁は同法の配偶者は、社会通念上夫婦として共同生活を現実に営んでいた者を指すと指摘。20年以上別居を続け、事実上の離婚状態にある配偶者には受給権が認められないと判断した。

令和3年度運営方針 経営事情踏まえ丁寧に対処――厚労省

厚生労働省は、「令和3年度地方労働行政運営方針」を作成した。新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた企業に対する適切な労務管理指導を柱に据えている。感染症の影響による大量整理解雇に関する情報収集と関係部局間での情報共有に努める一方、法違反が認められた場合には、事業主に是正の必要性を分かりやすく丁寧に説明し、自主的な改善を促すとした。とくに中小企業に対しては、人材確保の状況などを考慮するものの、重大・悪質な法違反に対しては、司法処分も含め厳正に対処する。

同一労働同一賃金への中小企業の対応状況

正規と非正規雇用社員の不合理な待遇差をなくす「同一労働同一賃金」が
4月から中小企業にも適用された。

多くの企業がコロナ禍で業績が悪化しており、
非正規の待遇改善に伴うコスト増が経営の重しとなる可能性がある。

中小企業では総務や経理、人事などを社員1名が担当することもあり、
限られた人員で新制度を作る余裕がない場合が多く、手探り状態のスタ-トとなっている。

□ 中小企業の対応状況 / エンジャパン2020年12月~2021年1月調査
(四捨五入のため合計100%にならない)

◇ 対応が完了                          28%
◇ 現在取り組み中、これから取り組む  23%
◇ 対応を検討中              16%
◇ 対応が必要だが何をすべきかわからない  7%
◇ 対応が必要かわからない         6%
◇ 非正規雇用がなく対応不要          18%
◇ その他                 3%

以上

総合職転換 「機会なし」は女性差別――横浜地裁

一般職から総合職への転換制度があるにもかかわらず、女性労働者2人に転換の機会を与えなかったのは男女雇用機会均等法が禁止する性別差別に当たるとして、横浜地方裁判所(新谷晋司裁判長)は巴機械サービス㈱に各100万円の支払いを命じた。労働者が繰返し差別と指摘したにもかかわらず、転換要件や基準を示さなかったのは違法と判断している。一方、総合職との賃金差額の請求については、機会があったとしても、実際に転換できたかは分からないとして、請求を棄却した。同社はこれまで計65人を採用してきたが、総合職はすべて男性、一般職はすべて女性だった。

ダイバーシティ経営――経産省

経済産業省は、多様な人材が能力を発揮できる環境を整えて価値創造につなげる「ダイバーシティ経営」を推進するため、中堅・中小企業の取組みに関する新しい診断ツールを作成した。ツールは、取組み状況を見える化する「診断シート」と、シート活用時の留意点などをまとめた「手引き」で構成。シートでは、経営者の取組みや人事管理制度の整備状況などを点数化して把握し、改善方法を記入する。企業支援に当たる社会保険労務士など専門家による活用を想定している。

「無期転換ルール」見直し――厚労省・検討会設置

厚生労働省は、改正労働契約法第18条の「無期転換ルール」改正に向け、学識経験者で構成する検討会をスタートさせた。無期転換前の雇止め対策、クーリング期間のあり方、無期転換後の労働条件確保などについて、さらにルールを整備する意向である。改正労契法施行後8年が経過し、ルール見直しの時期が来ている。調査によると、30%強の企業が無期転換申込みに応じているものの、8%強が労働契約期間通算5年を超えないよう運用しているのが実態である。併せて、多様な正社員制度も見直す。

試用期間途中の解雇は有効――東京地裁

東京都内の有料老人ホームで働いていた労働者が、試用期間途中での解雇の無効を訴えた事件で、東京地方裁判所(上村考由裁判官)は解雇を有効と認める判決を下した。労働者が同僚の胸ぐらをつかみ「お前やんのか」と暴言を吐いた行為を、介護職員としての適格性を欠くと指摘。試用期間中の勤務によって「採用前には知ることができなかった不適格性を知るに至った」として、試用期間中に認められる留保解約権の趣旨・目的に照らし、行使は正当と判断した。

はしご適正使用を徹底――東京労働局

東京労働局(土田浩史局長)は来年度、建設業における労働災害の減少に向けて、「はしご」や「脚立」の適切な使用を重点的に指導する方針だ。他産業では転倒災害が多いのに対し、建設業では低所からの転落災害が多発しているため、その要因となっているはしごなどの適切な使用を求めていく。個別指導のほか、業界団体を通じた集団指導を通じて、はしご・脚立使用時のチェックリストの活用を呼び掛けていく。

青少年雇用対策指針 早期離職でキャリア自律――厚労省

厚生労働省は、令和3年度から5年間適用する「青少年雇用対策基本方針」を作成し、入職後早期に離転職する若年者へのキャリア支援強化を打ち出した。企業の職場情報および職業情報の見える化を図ったうえで、入職後早期のキャリアコンサルティングの実施、早期離転職者を念頭に置いた新卒応援ハローワークでの職業相談対応などを具体策として挙げている。従来、職場定着対策を重視してきたが、早期離職がかえって若年者のキャリア自律を促すケースが少なくないとの見方に転換した。

通勤手当 派遣への不支給は適法――大阪地裁

㈱リクルートスタッフィングの登録型派遣で働いていた労働者が、派遣元正社員との間にある通勤手当の支給有無に関する差を不服として訴えた裁判で、大阪地方裁判所(中山誠一裁判長)は、不支給は旧労働契約法第20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)に違反しないと判断した。同社の通勤手当の趣旨を、時給額改定の経緯・歴史から、配転命令の対象となる従業員の不利益緩和と、求人への魅力的な労働条件提示と指摘。派遣労働者と正社員は職務内容や配転の範囲も大きく異なるため、不支給に不合理性はなかったとしている。

建設業 偽装一人親方の排除へ――国交省

国土交通省は、建設業の一人親方問題に関する検討会の中間取りまとめ案を明らかにした。社会保険加入などの規制逃れを目的とした「偽装一人親方化」を防止するため、下請指導ガイドラインを改正するとした。実態が雇用形態であることが明らかであるにもかかわらず、技能者を一人親方として働かせている企業を下請企業に選定しない取扱いとするほか、適正な一人親方の例を具体的に示す。現場入場時には、自己診断チェックリストを用いて働き方が適正かどうか確認する考え。

賃上げの流れ維持と評価――21年・春季労使交渉――

2021年の春季労使交渉の集中回答日となった3月17日、金属労協の髙倉明議長は、8年連続となった賃上げの流れを継続できたと述べるとともに、格差是正の取組みが定着してきていると評価した。ベースアップの平均回答額は、翌日18日時点で1138円と、前年同期に比べ78円高かった。一時金については、平均4・94カ月と前年より0・16カ月低いが、4組合が前年を上回ったとした。