大手モデル退職金 定年2564万円に――中労委 令和3年退職金・定年制調査

1000人以上の大手企業を対象とする中央労働委員会の「退職金、年金および定年制事情調査」によると、定年モデル退職金は大卒・総合職で2564万円、高卒・生産労働者は1840万円だった。2年前の前回調査と比べるとそれぞれ2.1%増、13.0%減となり、高卒・生産労働者で大きく落ち込んでいる。確定拠出年金(企業型)を採用する企業のうち、マッチング拠出を導入しているのは50.9%で、集計開始後初めて5割に達した。再雇用者の基本給設定については、「定年前の50%以上80%未満」が62.5%を占めている。

停職6カ月 裁量権の範囲逸脱せず――最高裁

富山県氷見市が元消防職員に対して下した2回の停職処分のうち、2度目の処分の違法性が争点となった裁判で、最高裁判所第三小法廷(長嶺安政裁判長)は「重きに失する」とした二審判決を破棄し、高裁に差し戻した。同職員は複数人への暴行などを理由に停職2カ月の懲戒処分を受けたが、処分を不服として同市公平委員会に審査請求をした。審査請求手続きで自身に有利な証言をさせようと同僚らに働き掛けたところ「反社会的な違法行為」であるとしてさらに停職6カ月となった。最高裁は同僚らへの働き掛けは報復を示唆した威迫行為で、明確な非行に当たると指摘。処分の種類・長さともに裁量権の範囲の逸脱はないと判断した。

改善基準見直し議論 労基署が荷主に配慮要請へ――労政審トラック作業部会

労働政策審議会の作業部会で進めているトラックドライバーに関する労働時間等改善基準告示の見直しに向けた検討において、労使間の意見集約が難航している。荷主都合による荷待ち時間が発生していることを理由に、使用者側が拘束時間の上限引下げや休息時間の拡大などに難色を示しており、労使見解に大きな隔たりが生じている状況だ。使用者側が荷主対策の強化を求めたため、厚生労働省が新たな荷主対策案を部会に提示した。把握した情報に基づき、全国の労働基準監督署が荷主に対し、改善基準への対応などについて個別に配慮要請を行っていくとしている。

ジョブ型採入れは自社流で――愛知経協

愛知県経営者協会(大島卓会長)は、メンバーシップ型の雇用システムの行き詰まりに対し、解決手段としてジョブ型の要素を加味した人事制度の検討は現実的などとする報告書をまとめた。共通理解がないままジョブ型という言葉が使われる現状への懸念から、改めて関連用語・概念の定義を試み、完全なジョブ型への移行は社会基盤の違いから困難と指摘した。多くの企業が直面するパフォーマンスと処遇の不一致などの課題を掘り下げ、その企業にふさわしい人事制度はその企業にしか考えられないなどと訴えている。

“中核人材”を副業で確保――関東経産局

関東経済産業局(濱野幸一局長)は、関東地域のサービス系企業の労働生産性向上を図るため、支援の方向性を示す報告書を取りまとめた。経営課題などを解決する“中核人材”の確保が重要と強調し、東京圏の専門人材が関東地域の企業を直接訪れる形態での副業・兼業の活用が有効と提言している。関東地域ぐるみで自治体、地元金融機関、商工会議所らによるネットワークを構築し、ニーズの掘り起こしや中核人材とのマッチングにつなげるとしている。

雇保制度のあり方検討――厚労省

厚生労働省は、学識経験者をメンバーとする「雇用保険制度研究会」(座長・山川隆一東大大学院教授)を設置し、雇用保険制度の中長期的な設計・運用の方向性について検討を開始した。財政安定化に向けた機動的な国庫負担の導入などを盛り込んだ雇用保険法改正法案の国会審議などにおいて、同制度をめぐる多くの課題が指摘されたため、制度の理念も含めて幅広く議論する。具体的には、基本手当や教育訓練給付・求職支援制度の効果検証を通じて適切な制度設計をめざす。支給総額の増加が見込まれる育児休業給付の財源や、非正規労働者に対する支援策も論点とする。

第268話「中小66%が影響懸念」

日本商工会議所と東京商工会議所は中小企業6,000社に実施した最低賃金引上げの影響に関する調査結果を取りまとめた。
今年の引き上げが30円となった場合、「経営に影響がある」と回答した企業が65.7%となった。
仮に、30円引き上げられた際の対策としては、「設備投資の抑制など人件費以外のコスト削減」が45.9%で最も多かった。
一方、「正社員の残業時間の削減」は37.7%、「一時金・福利厚生費の削減」は31.4%、「非正規社員の残業時間・シフトの削減」は30.3%と、労務面での対応を挙げた企業も少なくなかった。

政府は2016年に、「最賃の全国の加重平均額を1,000円になることを目指す」方針を示している。
引上げが1円だった20年を除き、16年から毎年3%台(25~28円)の大幅な引き上げが行われていることに対して、「現在の最賃額が負担になっている」と回答した企業は65.4%にのぼった。

以上

通勤手当 割増基礎に含めず送検――刈谷労基署

愛知・刈谷労働基準監督署(橋本圭一署長)は、割増賃金の基礎となる賃金に「通勤手当」と称した手当を含めなかったとして、タクシー業の安城交通㈱(愛知県安城市)と同社取締役総務部長を労働基準法第37条違反の疑いで名古屋地検岡崎支部に書類送検した。同社が通勤手当の名目で支給していた金額は、実際の通勤距離や費用と相関性がなく、基礎に算入する必要があったと判断している。同社は昨年1月、手当を基礎に含めないことで、労働者1人に対し、時間外・深夜労働に対する割増賃金の一部を支払わなかった疑い。

委託作業者の労働者性認定――中労委

中央労働委員会第1部会(荒木尚志部会長)は、電気メーターの取替え工事業者が個人請負契約を締結した作業者ら5人が所属する組合から求められた団体交渉に応じなかった事案について、団交拒否を不当労働行為と認定し、同社の再審査申立てを棄却した。作業者の労働者性を認めている。同社は作業者ごとに年間の工事計画件数を割り当てていたが、施工件数が月間計画の92%を下回った場合にリカバリープランを提出させるなど、毎月の進捗を管理していた。最終的に年間92%を下回ると、翌年度の割当てを減らしている。

停職の違法性めぐり弁論――最高裁

富山県氷見市の消防職員だった労働者が2度の停職処分を違法と訴えた裁判で、最高裁判所は2度目の停職処分の軽重を争点に弁論を開いた。二審の名古屋高裁金沢支部は複数人への暴言・暴行を理由に停職2カ月とした1度目の処分を適法と認める一方、被害者に不利な証言をしないよう圧力をかけたことを理由とした停職6カ月の処分は「重きに失する」として違法と判断していた。弁論で労働者は「不当な圧力を掛ける意図はなかった」、同市は「被害者に謝罪をするどころかさらなる圧力を与えており反省がみられない」とそれぞれ主張した。判決言渡しは6月14日。

第267話「7割が10年以内に退職」

日本経済新聞社が実施した女子学生への調査では多様なキャリア意識が浮かんだ。
新卒入社の会社で定年まで働き続けるとの回答は11.5%。10年以内の退職見込み
は68.9%に上った。

退職理由は転職や学び直し、起業など自身の意志に基づくキャリアシフトが48.7%。
結婚が20.3%、出産・育児が22.7%と一定数あった。
理想の働き方が多様化しているとみられ、女性の人材確保や就労意欲を高めるには、
企業が採用時から画一的なロ-ルモデルでなく柔軟なキャリアパスを示す必要があ
る、としている。

以上