男性育休2人以上で奨励金――東京都・5年度予算要求

東京都は、来年度の予算要求に「適正な労働環境を確保する事業」として前年比26億円増となる116億円を盛り込んだ。育児休業の取得を進める企業への奨励金制度について、従来の3コースから4コースに拡充する。複数人の男性社員に育休を取得させた企業を対象とする新コースを加え、男性育休をより促進する狙い。新事業としてはほかにも、働く女性の健康問題についての啓発や、若手人材の定着を目的とし、社員満足度の向上に取り組む企業に対する経費の補助を予定している。

セクハラ・パワハラ 行為者と会社に賠償命じる――東京地裁

㈱データサービス(東京都新宿区、坂本哲也代表取締役社長)で働く労働者が2人の上司によるセクハラ・パワハラは違法と訴えた裁判で、東京地方裁判所(西澤健太郎裁判官)は同社と上司らに対し、慰謝料など計103万円の支払いを命じた。自身の誤りが原因のミスにもかかわらず、労働者の責任として不必要に叱責して謝罪を求め、ミスにより生じた費用を負担させた行為や、飲み会で労働者に3度抱きついた行為などを不法行為と指摘(表)。セクハラに関する相談に対し、同社が対応しなかったのも債務不履行に当たるとした。

産業雇用安定助成金 能力向上支援など3コース――厚労省

厚生労働省は、在籍型出向により雇用維持を促進する産業雇用安定助成金(産雇金)制度を見直し、2つの新コースを加えて3コース体制とする方針だ。新たなスキル習得のために在籍型出向を行い、復帰後に賃金を引き上げた事業主を対象とする「スキルアップ支援コース」(仮称)と、業態転換などのために必要な人材を雇い入れた事業主向けの「事業再構築支援コース」(仮称)を創設する。スキルアップ支援コースの新設は今年度第2次補正予算案に盛り込まれており、年度内の開始を見込む。今後、雇用調整助成金の受給企業を対象に個別に周知し、産雇金の活用を促していく。

総合職モデル 大卒35歳で32.4万円――22年度版 愛知のモデル賃金

愛知県経営者協会が実施した「愛知のモデル賃金調査」によると、総合職・大卒のモデル賃金は22歳20.9万円、35歳32.4万円、50歳46.1万円などとなり、ピークは60歳47.5万円だった。前年結果に比べて全体的に微減傾向を示している。管理職の実在者賃金は、部長級が56.2万円、課長級が45.0万円で、それぞれ1.1%増、0.2%増とわずかに伸びた。60歳・会社都合のモデル退職金は平均支給額が1328万円、支給月数が28カ月となっている。

運送業者 安全委員会開かず送検――上田労基署

長野・上田労働基準監督署(森孝行署長)は、安全管理者に作業場の巡視などを行わせず、安全委員会も月1回以上開催していなかったとして、一般貨物自動車運送業のアート梱包運輸㈱(長野県東御市、従業員310人)を労働安全衛生法第11条(安全管理者)および第17条(安全委員会)違反などの疑いで、長野地検上田支部に書類送検した。令和4年7月、同社の倉庫内で労働者がコンテナを積み重ねて運搬していた際、コンテナが倒壊して下敷きとなり、腰椎椎体骨折の重傷を負う労働災害が発生している。同労基署によると、作業方法や設備に違反はみられなかったという。

前期高齢者納付金 「総報酬割」導入へ――厚労省

厚生労働省は医療保険者が拠出する前期高齢者納付金について、保険者ごとの報酬水準に応じて負担額を決める「総報酬割」を導入する方向での検討に入った。社会保障審議会の部会で見直し案を提示した。収入の高い大企業の従業員が多く加入する健康保険組合(健保組合)の負担は増加する一方、中小企業が中心の全国健康保険協会(協会けんぽ)の負担は減少するとみられる。厚労省は年内に医療保険制度改革の具体策をまとめ、改正法案を来年の通常国会に提出する予定だ。

第279話「教育訓練投資/若い企業ほど効果大」

IT関連の学習や専門的な資格取得など、企業が従業員に行う教育投資の効果が社歴別に違うことが内閣府の調査でわかった。
創業から27年前後の「若年グル-プ」の企業で教育訓練投資を1%増やすと労働生産性が0.028%高まった。
創業から50年前後の「中齢グル-プ」は0.01%、70年前後の「高齢グル-プ」では0.007%の上昇にとどまった。

ソフトウエアの投資についても、1%の投資増に対する生産性の上昇率は若年が0.019%で高齢は半分以下の0.008%で若年グル-プが高かった。

企業で教育訓練を受けた従業員の割合は経済協力機構(OECD)各国と比べると日本は低く、訓練の普及が欠かせない。
人材投資とともにソフトウエアへの投資も増やせばより生産性を押し上げるため、ソフトとハ-ド両面への投資が重要であるとも指摘している。

従業員自らの自主的な啓発活動は年収増加につながっている。
内閣府が過去1年間に語学や業務改善につながる学習、資格取得をした人の年収を調べたところ学習をしなかった人に比べ30万~40万円ほど高かった。
正規雇用で44万円、非正規雇用で29万円の差があった。

以上

基本給の決定要素 「仕事の内容」活用が8割――厚労省 就労条件総合調査

厚生労働省の「令和4年就労条件総合調査」によると、基本給の決定要素として最も用いられているのは「仕事の内容」で、管理職では79.3%、管理職以外では76.4%の企業が活用していた。次いで多かった「職務遂行能力」はともに66%台となり、10ポイント以上の差が付いている。賞与制度を持つ企業は87.9%で、このうち令和3年に賞与を支給した割合は92.8%だった。賞与制度がない企業は11.8%で、前回調査した5年前から2ポイント増加している。

課長代理からの降格有効――東京地裁

日産自動車㈱で働く労働者が、課長代理からの降格は違法として、課長代理の地位確認と差額賃金支払いなどを求めた裁判で、東京地方裁判所(小川理津子裁判長)は降格と賃金減額をともに有効と判断した。マネジメントを期待していると何度も指導されていたにもかかわらず、労働者は役割の重要性を理解できなかったと指摘。降格は役割等級制度に沿った運用で、人事権濫用はなかったと評価している。同社は賃金規程などで、役割定義(表)に照らして不相応な場合は降格とし、降格先の等級の賃金を適用すると定めていた。

厚生労働省 人材活性化で賃上げ促進

厚生労働省は、賃上げ支援や人材活性化を通じた賃上げ促進などを柱とする雇用・労働総合政策パッケージを策定した。コロナ禍での雇用維持支援や休業支援を中心とする緊急的・短期的政策から、賃金上昇と多様な働き方の実現を目的とする政策への転換を図る。施策メニューとして、賃金の底上げを図る業務改善助成金の拡充や、労働者のリスキリングを支援する企業が対象となる人材開発支援助成金の助成率引上げなどを挙げている。各施策は今年度補正予算などに盛り込む。

第278話「日本の女性管理職の割合実態」

世界経済フォ-ラムによると、2022年の日本の「ジェンダ-ギャップ指数」は146カ国中116位で中国、韓国よりも下位で、経済協力開発機構(OECD)の統計では日本の男女間賃金格差は加盟44カ国中ワ-スト4位となっている。
男女共同参画の現状は依然として諸外国に比べ立ち遅れており、女性にとって厳しい社会と言わざるを得ない。
なかでも女性管理職の少なさが男女間賃金格差の最大要因と言われ、政府は女性管理職の割合を2020年代の可能な限り早期に30%程度になることを目指している。

帝国デ-タバンクが7月に実施した女性登用に対する見解調査(有効回答企業数1万1503社)によると、管理職(課長相当職以上)に占める女性の割合の平均は9.4%に留まっており、ゼロ(全員男性)が45%を占めたほか、政府が目指す「30%」以上の企業は9.5%と1割にも達していない現状が浮き彫りとなった。

また「女性社長」という視点からは、全国の社長に占める女性社長の構成比は8.4%だった。女性社長の構成比が高い都道府県は、沖縄県11.3%、徳島県11.2%、青森県10.5%と続き、平均を下回ったのは栃木県8.1%、群馬県7.7%だった。

女性経営者と女性管理職の増加と活躍は労働人口の減少対策としても不可欠であり、今後ますますクロ-ズアップされていくと思われる。

以上

増員が不当労働行為に――大阪府労委

大阪府労働委員会(小林正啓会長)は、労働組合と協議せず、短期間に正規従業員・出向社員の計12人を補充したことは、組合の弱体化を企図したものであるとして、大阪市食肉市場㈱(大阪府大阪市)の不当労働行為を認定した。同社と組合が、経営状況に関して共通認識を持ったうえで人員補充について協議を行うことを定めた確認書の内容を踏まえて判断している。業務量や経営状況からみても「著しく不自然な増員」とした。同社の従業員に占める組合員数の割合は、人員補充後に過半数を割っている。

准看護学校教員の解雇有効――東京高裁

准看護学校で教員を務めていた労働者が、解雇を不服として労働契約上の地位確認などを求めた裁判で、東京高等裁判所(相澤哲裁判長)は解雇を有効とした一審判決を維持した。労働者は新人育成経験を買われ即戦力として採用されたが、入職当初から教育姿勢に関して生徒から苦情が寄せられ、年度末には多数の生徒から解雇を求める嘆願書が出された。上司はクレームが出るたびに改善指導をしたが、労働者は応じる姿勢がなく解雇には合理性があったとしている。労働者は適切な指導を受けていないと主張したが、同高裁は「およそ採用の限りでない」と退けた。

労災認定 事業主の「不服」表明可能に――厚労省

厚生労働省は、自社の労働災害の発生状況に応じて労災保険率が増減する労災保険のメリット制について、事業主が労働保険料の引上げ決定後に「労災認定は違法」として保険料決定に関する不服を申し立てられるよう、行政解釈の変更を行う考えだ。不服が認められ、労災給付の支給要件に該当しないと改めて判断された場合、保険料の増額は行わない。一方で、労働者に対する労災給付の支給決定自体は取り消さない扱いとする。近年、保険料決定処分の取消し訴訟において、保険給付支給の違法性の主張が認められるケースが現れていた。