千葉県労働委員会(舩越豊会長)は、団体交渉の場に他の労働組合の組合員を同席させ、交渉を一任した使用者側の対応を、不当労働行為と認める命令書を出した。社会福祉法人千歳会の労働組合が懲戒解雇に関する団体交渉などをめぐり救済を求めた事件で、不誠実交渉に当たるとして、団交応諾やポストノーティスなどを命じている。交渉を一任されていたのは「首都圏青年ユニオン連合会」の組合員を名乗る男性で、千歳会労働組合によると、組合つぶしのために同法人が引き入れた労務コンサルタントだという。
月別アーカイブ: 2021年8月
女性活躍へ取組み強化――東京都
東京都は、今後強化していく施策を示した「『未来の東京』の実現に向けた重点政策方針2021」をまとめた。コロナ禍による経済情勢の悪化によってとくに女性の雇用に大きな影響があったことから、女性活躍推進に関する取組みをさらに強化するとした。短時間勤務制度やテレワークの導入など、多様で柔軟な働き方を推進し、仕事と家庭を両立しやすい環境づくりを加速する。具体的な内容は、年度内の策定をめざしている「『未来の東京』戦略 政策のバージョンアップ2022(仮称)」に盛り込む考え。
出生時育休制 就労は所定労働日数の半分――厚労省・改正育介法省令案
厚生労働省は、通常国会で成立した改正育児・介護休業法の運用に向けた省令事項(案)を明らかにした。新たに創設した男性労働者の「出生時育児休業制度」の施行日を令和4年10月1日とした。同休業中に認められた就業については、所定労働日数の半分以下とし、仮に使用者の意に反して労働者が同休業中の就業を希望しなかったとしても解雇その他の不利益取扱いをしてはならない。同休業開始予定日の前日までに就業可能日や就業時間帯を申し出る必要がある。
移籍前の勤務で期待生じない――東京地裁
東京都内のマンションで管理員として働いていた労働者が、雇止めは無効とビソー工業㈱を訴えた裁判で、東京地方裁判所(松浪聖一裁判官)は雇止めを有効と判断した。労働者は同社と有期労働契約を締結する前から、同マンションの管理員を務めていた。管理業務の受託先変更に伴い同社に移籍し、5年にわたって管理員として契約が更新され続けてきたと主張したが、同地裁は「移籍は契約更新まで保証したものとは認められない」と評価。契約更新に対する合理的期待はなかったとした。
建設現場集中監督 元請の安全管理不十分――東京労働局
東京労働局(土田浩史局長)は、建設業における死亡災害の急増を受けた緊急対策として実施した集中監督指導の結果を取りまとめた。法令違反が発覚した工事現場の8割で、下請への指導を行っていないなど元請の安全衛生管理面に不備がみつかっている。現場管理者への聞取りも行った結果、労働災害発生要因として実感する項目に「危険意識の低下」を挙げるケースが3割を超えた。このため、同労働局は、危険予知活動や職場巡視の徹底といった自主的な安全活動の実施を元請などに求めていく方針。
雇用仲介サービス業 法的位置付けを明確化――厚労省
厚生労働省は、事業内容の多様化と並行して利用が活発化している「雇用仲介サービス」の適正化に向けたルール作り、法的位置付けの明確化に取り組む方針である。労使双方が安心して利用するための環境整備に加え、雇用仲介サービス事業が労働市場に参画する際に依拠すべきルールを創設する考え。求人情報に関するトラブルでは、表記された労働条件と実態が異なるなどとするケースが全体の5割を占めている。
給与規程の変更は無効――東京高裁
栗田運輸㈱(東京都江戸川区、栗田浩一代表取締役)で働くトラックドライバー3人が、給与制度の変更を不服とした裁判で、東京高等裁判所(小野瀬厚裁判長)は変更を無効とした一審判決を維持し、同社に計143万円の支払いを命じた。同社は歩合給や家族手当をなくし、新たに固定残業代に相当する運行時間外手当を新設する給与規程の改定を実施した。同高裁は歩合給と家族手当の廃止により、通常の労働時間分の賃金が約3割減るのは不利益の程度が著しいと指摘。規程改定に合理性はないと判断した。
中小のDX推進加速を――商・中小施策要望
日本商工会議所(三村明夫会頭)は、中小企業・地域活性化施策に関する意見・要望を取りまとめた。コロナ禍からの再起をめざし、ビジネスモデルの転換やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を支援するよう求めた。各社に適したデジタルツールを活用できるよう、IT導入補助金における賃上げ要件の緩和や補助率引上げなど同助成金の推進・改善を盛り込んでいる。デジタル技術導入を目的とした専門家派遣の拡充も要望した。
雇調金特例 失業率2.6%押下げ――3年版・労働経済白書
雇用調整助成金などによる完全失業率抑制効果は2・6%ポイント程度――厚生労働省がまとめた令和3年版の労働経済の分析(労働経済白書、副題=新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響)で明らかになった。完全失業率は昨年10月に月に3・1%に上昇しており、雇調金などの特例措置がなければ、5%を大きく超えていた可能性がある。テレワークに関しては、オフィスで働く場合より生産性・効率化が低下する傾向にある。
柔軟な働き方コロナ後も
日本経済新聞とパ-ソナルキャリアの調査で、新型コロナウイルス禍を機に働く場所についての認識が変化している様子が浮き彫りになった。
回答企業の5割はコロナ収束後もテレワ-クを恒久措置として続けると回答。
個人は若い世代ほど柔軟な働き方を企業選びの際に重視すると答えた。
コロナ禍で企業が新たに導入・拡大した働く場所についての施策では「ウェブ会議システムの整備」が最も多く、回答企業の79.4%を占めた。
「テレワ-クの導入・拡大」も68.1%と高く、47.3%はコロナ禍の収束後も継続すると回答。
テレワ-クの導入を機に転勤や単身赴任の廃止や中止を決定・検討している企業も1割前後あった。
働く場所が柔軟になるとオフィス見直しが進む。
企業にオフィスの在り方で検討している項目を聞くと、本社の移転・縮小が全体の11.5%を占めた。
特に東京都の企業の場合は21.5%と割合が高かった。
働き手の意識も変わってきた。
個人に「転職時に柔軟な働き方の整備を重視するか」を聞いたところ「重視する」「まあまあ重視する」と答えた人は20代で76.8%に達した。
若い人ほど割合が高いが50代も62.2%あった。
以上
年休5日の時季指定怠り送検――津島労基署
愛知・津島労働基準監督署(戸嶌浩視署長)は、労働者6人に対して年次有給休暇取得の時季指定を怠ったとして、給食管理業の栄屋食品㈱(愛知県あま市)と各事業場の責任者である店長3人を、労働基準法第39条(年次有給休暇)違反の疑いで名古屋区検に書類送検した。平成31年4月以降、年5日の年休取得が義務化されたにもかかわらず、複数の労働者から取得できないとの相談が寄せられていた。取得調整が十分可能であったとして、10人以上の3事業場の店長のみ送検対象としている。取得義務についての送検は県内で初めて。
採用過程の期待権侵害認める――東京地裁
採用条件変更の一方的な通告は不法行為に当たるとして、求職者が仮想通貨交換業のフォビジャパン㈱を訴えた裁判で、東京地方裁判所(布施雄士裁判官)は期待権侵害を認め、同社に60万円の損害賠償を命じた。求職者は中途採用面接を受け、同社の取締役から月給39万円と提示をされたが、入社予定日の直前になって、月給30万円になると通告を受け、労働契約を締結しなかった。同地裁は求職者には前職を上回る待遇での採用が確実との認識があったと指摘。一方的な通告によって失職していた期間に受け取れていたはずの給与額を損害と認定した。
マルチジョブホルダー 高齢者に雇用保険適用――厚労省方針
厚生労働省は、令和4年1月1日からマルチジョブホルダーである65歳以上の高年齢労働者に対して、雇用保険の特例適用制度を試行する。1週間の所定労働時間が20時間未満である労働者は、雇用保険制度から適用除外されているが、2つの事業所の週所定労働時間を合算して20時間以上の高年齢労働者を新たに対象とする。事業主が労働時間を把握し、手続きを行うのは困難であるとし、労働者本人が申出る必要がある。