改善基準 拘束時間超過で違法残業――新潟労基署

新潟労働基準監督署(佐藤一成署長)は、運転者1人に対し36協定の延長時間を超える時間外労働を行わせたとして、貨物自動車運送業の富士興業㈱(新潟県新潟市)と同社の新潟営業所長および運行管理者を労働基準法第32条(労働時間)違反の疑いで、新潟地検に書類送検した。「改善基準告示における拘束時間の上限を時間外労働の限度とする」としていた36協定の記載に基づき、拘束時間の上限を超えた労働を違法な時間外労働とした。

10月以降開始した育休に適用――厚労省

厚生労働省は10月1日に施行となる育児休業中の社会保険料免除の要件改正に関するQ&Aをまとめ、地方厚生局などに通知した。改正後の要件は10月1日以降に開始した育休に適用し、施行日をまたぐ育休には改正前の要件を適用するとしている。たとえば9月15日~10月10日に1度目の育休、10月11日~10月31日に2度目の育休を取得したケースでは、1度目の育休には改正前、2度目の育休には改正後の要件を適用する。9月に賞与を支給した場合は免除の対象になるが、10月に支給した場合は対象にならないとした。

解雇無効時の金銭救済制度 権利行使は労働者に限定――厚労省

厚生労働省の有識者会議「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」(座長=山川隆一東京大学大学院教授)は、解雇が無効の際に企業からの金銭支払いによって雇用が終了する救済制度について、「権利行使は労働者に限定する」、「個別の法律で禁止されている解雇も対象とする」といった内容の報告書を取りまとめた。企業が支払う金銭額を算定する際の考慮要素として、退職前の給与額や年齢、勤続年数などを挙げている。同制度を導入するか否かは、今後労働政策審議会で議論する。

最低賃金法違反 高齢者の時給650円に引下げ――津島労基署

愛知・津島労働基準監督署(鈴木基義署長)は、労働者3人を最低賃金額未満の時給で働かせたとして、織物修正加工業の㈱アイ・アール・ジェイのほか、同社取締役会長や顧問社会保険労務士事務所の社労士など計5人を最低賃金法第4条(最低賃金の効力)違反の疑いで津島区検に書類送検した。同労基署によると、同会長は高齢を理由に時給を引き下げており、変更額は人によって異なる。最も低い者で時給650円。同社は3年前に技能実習生に関する同法違反で送検されている。

大学教授 講義に就労請求権認める――東京地裁

東京福祉大学で教授の地位にあった労働者が、平成28年の秋以降、同大学が講義を一切担当させなかったのを不服とした裁判で、東京地方裁判所(布施雄士裁判長)は労働者の就労請求権を認め、債務不履行による慰謝料など計106万円の支払いを命じた。雇用契約書に「最低でも週4コマ」という時間数の明記があり、同大学には講義を担当させる義務があったと判断している。一般に、労働は義務であり権利ではないとの考えから、就労請求権は認められない傾向にある。さらに使用者の就労を受領する具体的義務に踏み込み、債務不履行責任を認めた判決は初めてとみられる。

改正育介法対応 権利侵害行為を是正指導――厚労省・令和4年度行政運営方針

厚生労働省は令和4年度地方労働行政運営方針を作成した。多様な人材の活躍を促進するため、4月から段階的に施行されている改正育児介護休業法の周知と履行確保に重点的に取り組むとした。男性の育休取得促進を目的とした出生時育休(産後パパ育休)を労働者に取得させないなどの権利侵害行為や、育休取得を理由とした不利益取扱いが疑われる事案を把握した場合、事業主に対して報告徴収と是正指導を積極的に実施する。改正法に沿った企業の取組み事例集の活用も事業主に呼び掛けていく。

私立高校 教員8人に残業代払わず――大阪南労基署・送検

大阪南労働基準監督署(千葉卓克署長)は、私立高校の教員8人が行った部活指導などの時間外労働に対し、割増賃金の一部を支払わなかったとして、学校法人浪速学院と同法人役員を労働基準法第37条(割増賃金)違反の疑いで大阪地検に書類送検した。同法人は是正勧告を受けたことを契機に、それまでシステムで管理していた勤怠確認に自己申告制を導入し、部活の指導を「業務外」と扱うなどして、教員からの残業申請を却下していた。

コロナ理由の団交拒否認めず――中労委

中央労働委員会第3部会(畠山稔部会長)は、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言を理由に団体交渉を拒み、書面による回答を続けた㈱小西生コン(愛知県名古屋市)の対応について、初審命令に続き不当労働行為に当たると認定した。義務的団交事項にかかる団交は労使が同席、相対峙して協議、交渉を行うことが原則とし、組合側が感染対策に配慮した開催時期・方法を提案していたことも踏まえ、直接話し合う方式を採ることが困難な特段の事情はなかったと判断している。

意思表示の錯誤無効認める――東京地裁

警備業大手のテイケイ㈱で働いていた労働者が退職強要を受けたと訴えた裁判で、東京地方裁判所(戸室壮太郎裁判官)は退職の意思表示の錯誤無効を認め、労働契約上の地位確認とバックペイ支払いを命じた。判決によると、同社は令和元年5月9日の終業後に労働者をホテルに連れて行き、遅刻を申告せずその分の賃金を受け取っていたのは詐欺罪に当たるとの虚偽説明をし、「去る者追わずっていうのはある」などと告げた。同地裁は、労働者は退職届を書かなければ警察に連れて行かれると誤信していたと指摘。意思表示は錯誤に基づくものとして、無効と判断した。

23年度から720時間以内に――日建連

大手ゼネコンらで構成する日本建設業連合会(宮本洋一会長)は、2024年4月から建設業にも適用される時間外労働の上限規制に向け、「時間外労働削減ガイドライン」を策定し、17年に掲げていた自主規制目標の計画を前倒しした。全会員企業に対して、23年度から年720時間以内などの法令に適応するよう求める。実態調査では労働時間の削減状況が伸び悩んでおり、20年度調査では従業員の約11%、1万3363人が年720時間を超えていた。現場で監督業務に当たっている者がめだち、会社へ戻ってから行う事務作業が労働時間増加の原因とみている。

企業規模要件 1年のうち6カ月で判断――厚労省・社保適用拡大の取扱い

厚生労働省は、今年10月に施行される短時間労働者への健康保険・厚生年金保険の適用拡大について、日本年金機構に事務の取扱い上の留意点を通知するとともに、取扱いに関するQ&Aを明らかにした。今回の適用拡大では、短時間労働者の社会保険加入の企業規模要件を「常時100人超」に引き下げる。同通知などでは「常時100人超」について、同一法人事業所における厚生年金保険被保険者の総数が、1年間のうち6カ月以上100人を超えることが見込まれる場合を指すとした。

産保センターと連携推進――協会けんぽ

主に中小企業が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)は令和4年度の事業計画を決定した。メンタルヘルス予防対策を強化するため、都道府県支部が産業保健総合支援センターと連携して、企業の健康経営を後押しする取組みを新たに始める。背景には精神疾患による傷病手当金の支給増加がある。2年度に支給した傷病手当金は約3分の1が精神疾患を理由としていた。都道府県ごとの特性を踏まえた保健事業も実施する。埼玉では企業の福利厚生の担当者を対象としたセミナーを開く。

第265話「20から30代、夫のキャリア優先」

「自分のキャリアより夫のキャリアを優先する」2000年以降に成人したミレニアム世代において、子供をもつ女性の過半数がそう考えていることが、21世紀職業財団の調査で分かった。

調査は、本人・配偶者とも26歳から40歳の正社員で子供がいる男性1912人、女性2194人の回答を分析。 

夫婦の目指すキャリアタイプを聞いたところ、女性は「配偶者のキャリアを優先する」が55.2%と最も多く、「夫婦でお互いキャリアアップを目指す」が28.1%と続いた。
一方、男性は「お互い」が41.4%と最多で、「自分のキャリアを優先する」は28.3%で2番目だった。

女性では、自分の状況が「マミ-トラック」(仕事の難易度や責任の度合いが低くキャリアの展望もない)に該当する、とした人も46.6%に及んだ。
この点から、夫婦共にキャリアアップするためには、マミ-トラックに陥らせない仕組みや、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)に関する研修などが有効としている。

以上

事務課長ピークは61万円――人事院 民間給与の実態(令和3年確報)

人事院の令和3年職種別民間給与実態調査によると、課長クラスの所定内給与のピークは、事務系で52~56歳61.2万円、技術系では同59.7万円だった。大卒新卒者を含む係員20~24歳の水準と比較すると、それぞれ2.75倍、2.71倍となっている。定年後再雇用者の所定内給与は、係員で26.1万円だった。役職者については課長43.7万円、部長54.1万円などとなっており、定年前人材のピークの水準とは25%程度の差が付いている。昨年のベースアップの実施率は、係員で23.5%、課長で19.2%だった。

時間外労働 8人が月120時間超に――金沢労基署

石川・金沢労働基準監督署(野田宏署長)は、労働者8人に対して特別条項付きの36協定の限度時間を超える時間外労働を行わせたとして、道路貨物運送業の㈱アペックス(同県金沢市)と同社代表取締役ら3人を労働基準法第32条(労働時間)違反の疑いで金沢地検に書類送検した。確認した時間外労働は1カ月で1人120~185時間。同労基署によると、同社では長時間労働が常態化しており、1年以上指導を続けたが是正されなかった。

休息時間 11時間以上を努力義務に――労政審バス・ハイタク作業部会報告

厚生労働省・労働政策審議会のバスおよびハイヤー・タクシー作業部会はそれぞれ、自動車運転者の労働時間等改善基準の見直しに関する報告をまとめた。バス運転者とタクシー運転者(日勤)ともに、現行基準において継続8時間以上と定めている1日の休息時間について、9時間を下限に設定するとともに、11時間以上を努力義務にするのが適当とした。原則13時間以内・最大16時間としていた1日の拘束時間は、原則13時間以内・最大15時間に見直すとした。