派遣労働・賃金引下げも可能――厚労省が同一労働同一賃金で回答

厚生労働省はこのほど、派遣社員の「同一労働同一賃金」の運用に関連し、経団連からの疑義に応えた回答集を明らかにした。 派遣先均等・均衡方式において賃金を決定した派遣社員が賃金に見合った能力が発揮されていない状況となった場合、どのように賃金の見直しを図るべきか、また東京都内で派遣先が変わり業務内容や責任の程度が変更された場合、 その都度賃金も変更しなければならないか――など制度運用上の実務的な疑義に答えている。

介護士に月額8.2万円加算――セントケア

介護業界で処遇改善が進んでいる。セントケア・ホールディング㈱は介護福祉士を対象に、経験年数と役割などに応じた手当を支給する。経験10年以上で最上位の役割の場合、支給額は月額8.2万円以上になる。 経験年数は前職を通算して算出する。㈱ベネッセスタイルケアは、10年目超の介護福祉士に最大4.5万円の手当増額を行うほか、専門資格を新設して最大月額3万円を支給する。 非常勤の夜勤専任介護職員に対する処遇も見直している。

スキル発揮と月例給を連動――㈱medibaの新人事制度

㈱mediba(東京都港区、江幡智広社長)は今年10月、スキル評価を基準とし、行動指針に基づく360度の評価を加味して処遇する新人事制度を導入した。職種に相当する「職能」18種類を新たに定義し、専門性・スキルの発揮度をダイレクトに資格等級、基本給の改定へ結び付けていく。個人業績偏重型だった旧制度の課題を踏まえ、年間賞与の一部にプロジェクトの業績に基づく賞与も追加した。組織体制の変革に向けて管理職の役割の多様化を進め、人財育成を担うV職、個々のプロジェクトを率いるP職など4系統に分けている。

配偶者転勤時に「帯同制度」――東邦銀行

㈱東邦銀行(福島県福島市、北村清士頭取)は、行員の配偶者が転居転勤になった際、同居可能な通勤圏の勤務地に転勤できる制度を導入した。配偶者が同行の行員でなくても構わない。 今後は、配偶者が宮城県や東京都といった福島県外に転居転勤になっても働き続けられる。「若い世代を念頭に置いて導入した」(同行広報)としており、片方の親に育児の負担が掛かる単身赴任を回避できるようになる。

過重労働・疾病未発症でも不法行為に――長崎地裁・慰謝料支払い命令

食品加工業を営む㈱狩野ジャパンで働いていた労働者が、長期間に渡る過重労働は不法行為に当たると訴えた裁判で、長崎地方裁判所(宮川広臣裁判官)は同社に慰謝料30万円を含む計480万円の支払いを命じた。 労働者の退職前2年間の時間外労働は2カ月を除き月100時間を超え、最長で160時間を超える月もあった。疾病は発症していなかったが、同地裁は心身の不調を来す危険のある長時間労働に従事させたのは「人格的利益の侵害」と判断、不法行為を構成するとした。

総合職・大卒35歳32.4万円――愛知のモデル賃金

愛知県経営者教会と名古屋商工会議所が実施した「愛知のモデル賃金」調査によると、総合職・大卒のモデル賃金は22歳20.7万円、35歳32.4万円、40歳37.7万円、50歳46.1万円、ピークの60歳46.8万円などとなった。 30歳までの若年層では微増傾向を示したのに対し、中高年層では0.4~1.7%減と落ち込んでいる。初任時に対するピーク時の倍率は、前年並みの2.26倍だった。管理職の実在者賃金は、部長相当職で55.0万円、課長相当職で44.3万円となっている。

求人不受理と保留が544件――厚労省・労働時間違反めだつ

厚生労働省の集計によると、若者雇用促進法に基づき、ハローワークにおいて企業からの求人申込みを不受理扱い(職業紹介の一時保留含む)とした件数が、今年6月末までに544件に達していたことが分かった。 同法では、労働基準法違反など一定の労働関係法令違反が判明した企業に新卒者を紹介しない求人申込み不受理条項を設けている。不受理件数が多かったのは、週40時間制違反だった。 来年3月には不受理条項の適用が全ての一般求人に拡大することが決まっている。

正規・男性の年間給与560万円に――国税庁・民間給与実態

国税庁の民間給与実態統計によると、昨年1年間を通して勤務した正規従業員・男性の平均年間給与は560万円だった。 前年比では2.3%増となり、めだった伸び率を示している。女性についても堅調で、正規は2.5%増の386万円、非正規は2.2%増の154万円だった。 一方、役員も含めた全体平均では、年間給与が2.0%増の441万円、そのうち賞与が2.5%増の70万円となった。ともに改善傾向は維持しているが、伸び率は順に0.5ポイント、2.9ポイント鈍化している。

利用は月間就業日の半分まで――バンテック/テレワーク

総合物流企業の㈱バンテック(神奈川県横浜市、児玉幸信代表取締役社長、460人)は2018年10月から、事務職など約200人を対象にテレワークを導入した。 目的は、社員の納得感を高めて定着率向上をめざすなどとしている。全社での導入をスムーズに進めるために、16年から対象の社員や部署を特定し、トライアルを繰り返した。 過程や結果を検証し、改善を重ねた。現在は、「実施日ごとに上司の承認を得る」、「利用回数は月の就労日の半分まで」、「始業・終業時には上司へメールを送る」など、細かくルールを決めて運用している。

帰省費用3~5万円支給――マネックス・介護両立対策

マネックスグループ㈱(東京都港区、松本大取締役会長)は、遠距離で暮らす親などを帰省して介護しやすくする目的で長距離移動費の支給を開始した。 1カ月当たり国内では3万円まで、海外では5万円までを付与する。介護休業制度も見直し、通算180日に拡大した。介護当事者に差し掛かる50歳代の社員が多く、先手を打って対応した。

ブラック企業対策を強化――JAM・運動方針

中小企業の機械・金属産業で構成するJAM(安河内賢弘会長)は、2020・21年度の運動方針で、ブラック企業対策の強化を決めた。 JAM本部と地方JAM・地域協議会の物心両面の支援体制を構築するとしており、具体的には地域の商工会議所などの場で適正な労使関係を経営者に訴えかけていく。 ブラック企業の背後には一部の悪質な社会保険労務士がいるとして連合、地方連合と連携を強め撲滅に向けた取組みを推進する。

役職継続し65歳定年――飛島建設㈱

飛島建設㈱(東京都港区、乘京正弘社長)は今年7月、60歳以降も現場所長などの役職や資格等級が変わらずに働ける65歳定年制へ移行した。 標準モデルでは60歳到達時の年収の約70%を確保し、全社共通の評価制度を適用する。原則として昇格は対象外となるが、基本給と年間賞与はそれぞれ能力・職責評価と業績評価で変動させる。 資格手当や子女手当などの諸手当については、継続的に同額を支給することとした。業界全体で人材不足が続くなか、経験豊富かつ技術・スキルの高いベテラン層に従来どおりの役割を担ってもらい、若手の成長を促し、後任の育成を急ぐ。

求人企業にマイページ――厚労省・来年に紹介システム刷新

厚生労働省は、2020年1月からハローワークの職業紹介システムを全面刷新する。自宅や会社のパソコンなどによる求職・求人申込みが可能となり、ハローワークに出向く必要がなくなる。 求人企業がマイページを開設すれば、過去の募集履歴の閲覧・利用ができるようになる。求人情報提供において、事業所の画像やメッセージなど充実した企業PR情報も公開可能となる予定。20年度以降は、求人・求職情報の検索機能を強化する。現在、システムのテスト運用や職員研修を実施している。

後継者の試行雇用に補助金――事業承継支援で中企庁

中小企業庁は来年度、中小企業の円滑な事業承継に向けて、新たに事業承継・世代交代集中支援事業を開始する。後継者不在の企業における後継者確保・育成を促すため、外部から候補者を試行的に雇用する際の費用を対象とした「承継トライアル補助金」を新設。経営者交代後の設備投資などを支援する「事業承継補助金」も見直し、新規事業への参入などを伴う場合の補助率を手厚くする。このほか、企業に対する事業承継計画策定の支援や専門家派遣を強化する方針だ。

専門人材に年収も3,000万円も――NTTコム

NTTコミュニケーションズ㈱(東京都千代田区、庄司哲也社長)は今年7月、データサイエンティストなどの高度専門人材を処遇する「アドバンスド・スペシャリスト制度」を整備した。従来は会社とスペシャリスト本人が個別に契約を結んでいたところ、新たに4階層の格付け体系を整備し、それぞれに給与レンジを設定した。CTOや技術顧問に適用する最上位のロール1では、年俸1,500万~3,000万円を想定する。市場価値の変化に対応するため、レンジ上限を超えて手当を加算できる仕組みも採り入れた。既存の人材約170人に適用した一方、今後はデータマネジメント領域のエンジニア採用を強化する。