育児期の在宅勤務 努力義務化に慎重論も――労政審雇用環境・均等分科会

厚生労働省は、出産・育児を機に離職せずに就業を継続できる環境を整備するため、労働政策審議会雇用環境・均等分科会(分科会長・奥宮京子弁護士)で育児・介護休業法の改正を視野に入れた議論を開始した。
両立支援策の拡充に向けた論点には、子どもが3歳になるまでテレワークを認めることを事業主の努力義務にすることなどが挙がっている。
使用者委員からは、「業種・職種によってテレワークに向き・不向きがあり、努力義務化には慎重であるべき」として、一律の努力義務化に反対する意見が出た。

育休奨励金 基本給の120%支給――野村證券

野村證券㈱(東京都中央区、奥田健太郎代表取締役社長)は、男女を問わず育児休業を1カ月以上取得した社員に対し、基本給の1・2カ月分相当を支給する奨励金を新設した。
昨年度の男性育休取得率が87%に上る一方、5日を超えて取得する比率が12%に留まっていることから、長期間の取得を促す。
職場環境の整備に向けて、マネージャー層の人事評価に「育休を取りやすい環境を整えているか」などを問う項目も盛り込んだ。
併せて育休取得者の業務をカバーするなどの“支援業務”を、新たに評価の対象に含める。

13観点から役割を定義――パシフィックネット

IT関連業の㈱パシフィックネット(東京都港区、上田雄太代表取締役社長)は今年8月、“期待される役割”に基づいて全8階層を設ける新人事制度を導入した。
役割については多面的に捉えており、業務執行責任、チームワーク推進、メンバー育成など「期待役割」8つの観点と、達成へのこだわりやリーダーシップなど「意識と行動」5つの観点から定義している。
「役割給」は、目標管理をはじめ行動評価、スキル評価を実施して総合評価を求め、改定する。
制度移行と同時に役割に基づく再格付けを進めた結果、全社員の15%に当たる約30人の若手~中堅層が昇格を果たした。

第308話「社長の平均年齢、平均59.8歳」

帝国デ-タバンクがまとめた「東京都社長年齢分析調査」(2022年時点)によると東京都内企業の社長の平均年齢は59.8歳だった。
全国平均の60.4歳より低かったものの、過去最高だった前年を0.1歳上回った。健康寿命の延びに伴う社長の高齢化が進み、後継者不足による倒産リスクも高まっている。
22年中に社長交代した割合は4.62%で前年から0.25ポイント下落した。
社長引退時の平均年齢は66.0歳で、社長交代による若返り効果は平均12.8歳だった。
年代別では50歳以上が約8割を占め、40歳未満の社長の割合は17年から1.1ポイント減少の4.4%だった。
産業別では「製造」が62.9歳で最も高かった。
一方で参入障壁が低い「サ-ビス」は56.9歳と最も低かった。
「新型コロナウイルス禍で企業が守りに入り、新規参入企業も少なかったため若い社長の割合が減少した」のではないかと分析している。

以上

非正規向け職業訓練を試行――厚労省・来年度のリスキリング推進施策

厚生労働省は来年度、リスキリングによる能力向上支援策として、在職中の非正規労働者が学びやすい職業訓練制度を試行する。
訓練を受講する労働者のための長期休暇制度を整備する企業向けの賃金助成制度も拡充する方針だ。
来年度予算概算要求で関連経費を計上した。
試行事業では、正社員に比べて訓練機会が乏しい非正規労働者720人を対象に、場所・時間を問わず受講できるオンライン形式と通学形式を組み合わせた訓練を実施する。
休暇制度整備への対応では、人材開発支援助成金を拡充し、中小企業に対する1日・1人当たりの賃金助成額を2000円程度引き上げる。

最低賃金 伸び率1位受け支援開始――佐賀県

佐賀県は、今年10月の最低賃金改定における引上げ率が全国で最も大きい5・51%に達することを受け、中小企業の賃金アップに向けた事業に乗り出す。
事業場内最賃を3%以上引き上げた事業者を支援する補助金を新設し、設備投資などに要した経費の3分の2を補助する。
労働者1人でも賃上げを実施した場合、最大120万円を交付する。
中小企業からの相談を受けるため、県内の士業団体などで構成した支援チームも設置する。
補助金の申請サポートや、専門家派遣による支援を予定している。

一般事業者・男性大型運転者 平均賃金は36.1万円に――全ト協 トラック運送事業の賃金

全日本トラック協会の「2022年度版トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態」調査によると、一般貨物自動車運送事業者における男性運転者の職種別平均賃金(1カ月平均)は、けん引が40.3万円、大型が36.1万円、中型が30.6万円だった。
前年結果と比べると、けん引と大型が2%弱伸びた一方、中型は1.5%減少した。
運転者全体の平均賃金は34.4万円となり、そのうち運行手当や時間外手当を含む変動給の総額は15.9万円、給与全体の46.1%を占めている。
時間外手当は7万400円に上り、前年結果から6.2%(4100円)増加した。

月給者・所定内賃金 介護職員23.5万円に――介護労働安定センター 令和4年度介護労働実態調査

介護労働安定センターの「令和4年度 介護労働実態調査」によると、介護従事者の職種別所定内賃金は、月給制で働く介護職員が23.5万円、訪問介護員が23.7万円、看護職員が28.8万円だった。
調査対象の8職種すべてで改善し、全職種平均では前年結果から4.5%伸びている。
時間給者は、介護職員1074円、訪問介護員1407円、看護職員1517円だった。
処遇改善加算に関する対応(複数回答)では、「基本給の引上げ」を選択した事業者の割合が37.6%となっている。

手当を労使慣行と認めず――東京地裁

日刊紙を発行する新聞社で働く労働者が、60年以上続いた手当の一方的な廃止を不服として訴えた裁判で、東京地方裁判所(猪股直子裁判官)は手当支給を労使慣行と認めず、廃止に労働者の合意は必要ないと判断した。
手当は就業規則に規定がなく、長期間反復継続して支給され、労使双方から特段の異論は出ていなかったものの、会社は支給手続きにおいて、一貫して給与とは別に取り扱うなど、労使双方の規範意識によって支えられていたとまではいえないと指摘。
法的効力を有するとは認められないとした。

両立支援助成金拡充 “応援手当”支給を後押し――厚労省

厚生労働省は令和6年度、両立支援等助成金を拡充し、育児休業取得者の業務を代替する労働者に“応援手当”を支給する中小事業主向けの新コースを設定する考えだ。
業務引継ぎの体制を整備して手当を支給した場合に、育休取得者1人につき最大125万円を助成。
代替要員の新規雇用に対しても最大67・5万円を支給する。
短時間勤務など、育児期の柔軟な働き方に関する制度を複数導入した企業を支援するコースも創設する。

第307話「女性が感じる職場でのギャップ」

求人検索サイトのインディ-ドジャパンが15歳以上の働く男女5000人に聞いたところ、直近3年で「ジェンダ-ギャップを感じる職場の慣習や暗黙のル-ルがある」と答えた割合が59.8%に達した。
「男性の方が昇進しやすい」(15.8%)、「男性の方が責任ある仕事を任される」(16.5%)、「男性は長期(1カ月以上)の休暇を取得しずらい空気がある」(16.4%)といった声が挙がった(複数回答可)。
「女性が生理で休むとは言いづらい雰囲気がある」は女性に限れば20.3%。男性は5.0%で、その差は15ポイント超と最も大きかった。
こうしたギャップを感じながら指摘できなかったと答えた人に理由を尋ねると、「どうせ変えられないと思った」(45.9%)、「波風を立てたくなかった」(39.7%)が上位を占めた。
この結果から、一社員の行動だけで組織は変わらないという諦めや、同調圧力が声を出せなくさせているのてはないかと分析している。

以上

賃金引上げ後の申請可能に――厚労省

厚生労働省は8月31日、今年10月の地域別最低賃金の改定を前に、企業における賃金引上げを支援する業務改善助成金を拡充した。
一定規模の事業者については賃金引上げ計画の提出を不要とし、引上げ後の事後申請を認める。
事業場内最低賃金(事業場内で最も低い時間給)と最賃の差額が30円以内の事業場に限定していた対象事業場の範囲も拡大し、差額が50円以内の事業場を対象とした。
さらに、引上げ前の事業場内最賃額に応じて設定されている助成率の適用区分を見直し、最大の助成率10分の9が適用される範囲を従来の870円未満から900円未満に引き上げた。

傷病手当金 支給件数が2倍に増える――協会けんぽ・4年度給付状況

令和4年度の全国健康保険協会(協会けんぽ)の傷病手当金の支給件数は31・1万件で、前年度の15・4万件から倍増していることが分かった。
傷病別では半数近くを新型コロナウイルスが占め、精神疾患も前年度比で1割以上増えている。
新型コロナについては、4年8月9日~5年5月7日までの間、医療機関のひっ迫を回避するため、医師の意見書がなくても保険者の判断で支給するよう厚生労働省が通知していた。
支給総額は2割以上増加し、329億円となっている。

役職手当設け“役割”でメリハリ――サーラグループ

エネルギー事業などを展開するサーラグループ(愛知県豊橋市、神野吾郎グループ代表・CEO)は昨年から今年にかけて、基幹会社を中心に統一されていた人事制度をグループ約40社に拡大し、一本化を図った。
管理監督者層の賃金は、旧・基本給の一部を切り出し、新たにライン長のみに支給する「役職手当」を設け、待遇にメリハリを付けている。
今春からは65歳定年制へ移行し、報酬体系は定年まで一貫した制度とした。
基本給を構成する「付加給」などを調整して、60歳以降の水準を60歳時点の8割に引き上げている。
グループ共通の「期待人材像」も策定し、等級定義=6観点の期待役割を明らかにしたうえで、全社員を6段階の資格等級に格付けた。

第306話「今年4%賃上げ企業、来年も3%以上が5割」

外資系コンサル会社のWTW(ウイルス・タワ-ズワトソン)の調査によると、2023年に一般社員の賃金を前年に比べ4%以上引き上げた主要企業のうち、24年も3%以上の実施を見込む割合は約5割となった。
一方、23年に賃上げ率の小さかった企業は24年も賃上げに消極的で、企業間で賃上げの格差が広がりそうだ。
WTWが主要大手169社を対象に調査したところ、23年の賃上げ実績(中央値)は一般社員が3.2%、管理職が2.8%だった。
23年の賃上げ率別に24年の賃上げ目標を聞いたところ、23年に一般社員で「4%以上」の賃上げを実施した企業で24年も「3%以上~4%未満」の賃上げを見込むと答えた割合は39%、「4%以上」は13%だった。
一方、23年の賃上げ率が「2%未満」だった企業は9割近くが24年も同程度の賃上げを見込んでおり、「各社の報酬水準の格差が広がれば、優秀な人材確保を通じて成長が持続する企業と低成長に甘んじる企業の優勝劣敗が広がる可能性がある」と指摘している。

以上

職階別の所定内給与 事務課長61.1万円に――職種別民間給与実態調査

職階別の賃金実態を把握している人事院の「職種別民間給与実態調査」によると、事務課長の平均所定内給与額は61.1万円、技術課長は59.4万円だった。
非役職者である係員クラスと比べて、それぞれ2.02倍、1.93倍の水準となっている。
前年比では事務系の主任以下で1.9~2.5%増と堅調に伸びている。医療関連職種は、医師が100.4万円、薬剤師が33.6万円、看護師が33.4万円だった。
今春の係員に対するベースアップの実施率は47.3%に上っている。

「ジョブ型」移行状況 4割強が慎重に検討中――能率協会

日本能率協会(中村正己会長)が4000社の人事部門責任者に実施した調査によると、人事・評価・処遇制度を抜本的に見直し済み、あるいは1~2年以内に予定している割合が7割に上った。
「ジョブ型」を一部でも採り入れている企業は2割強に留まり、4割強が「慎重に検討中」としている。
未導入企業に理由を尋ねた設問では、人材配置や賃金決定の難しさを指摘する声がめだち、約半数が「やや柔軟に運用できる役割等級制度が妥当と考えた」と答えている。

外国人労働者 雇用適正化へネットワーク――群馬県

群馬県は、群馬労働局や群馬県警本部、駐日ベトナム大使館などで構成する「ぐんま外国人雇用適正化推進プラットフォーム」を立ち上げた。
情報交換会や、企業・監理団体向けの勉強会を通じて、技能実習生を含む外国人労働者の雇用管理面の問題解決をめざす。
駐日ベトナム大使館が外国人雇用に関するネットワークに参画するのは、全国で初めて。
共有した課題は大使館を通じて本国へ伝達し、送出国側のルール整備を促していく。